トランプ政権の対イラン政策とエネルギー価格

トランプ米大統領の関税政策によって世界経済見通しが悪化する中、国際エネルギー機関(IEA)は4月15日、今年の世界の石油需要の伸びを3月時点の日量103万バレル増から73万バレル増に下方修正した。
その中、注目される石油生産動向について、4月24日付ロイター通信が、OPECプラスの中心メンバー国関係者の話として、OPECプラスは5月の日量41万1000万バレル増産に続き、6月も増産を予定していると報じた。
そこで、以下では、トランプ政権の政策と国際社会のエネルギーをめぐる動向について、
対イラン政策を中心に考察する。
トランプ政権が推進する米国産LNG輸出の拡大
国際社会は、ウクライナ戦争により、液化天然ガス(LNG)や石油が地政学的な戦略商品であり、エネルギーの確保は物価に影響を与えるなど国民経済にとって非常に重要であることを、改めて認識させられた。
また、とりわけ先進国では、産業の発展、AI利用の増加などによるエネルギー需要が着実に高まっており、安定供給は最重要の政策といってもよいだろう。
トランプ政権が貿易赤字削減を図る政策のひとつとして掲げている米国産LNGの輸出拡大政策は、エネルギーを輸入にたよるEU諸国や日本にとって、安定供給の面からは歓迎すべきかもしれない。
しかし、エネルギー安全保障上、輸入先が偏り過ぎないようにすることが求められるという観点から見れば、トランプ政権の政策は新たなジレンマをもたらす可能性が高いと考えられる。
なぜならば、米国へのエネルギー依存度を高めることは、長期的には米国のエネルギー市場での影響が、今以上に強まることを意味するからだ。さらには、地球温暖化のリスクもないがしろにはできない。
各国は、トランプ政権との貿易交渉では、こうした長期的エネルギー政策を考慮に入れておく必要があるだろう。
トランプ政権のイランの石油取引への制裁強化の意図
トランプ政権の石油・天然ガス市場における米国のシェア拡大政策は、対イラン政策にも影響する。
米国はこれまでもイランに対する経済制裁を科してきたが、トランプ政権の対イラン制裁の目的はイランの弱体化のみではないと考えられる。
同政権のもうひとつの目的は、石油・天然ガスの大きな取引先となる中国、インドなどにイラン産の石油が供給されるのを妨げることだと推察できる。
その米国とイランの関係には、3月7日にトランプ大統領がイランと核問題で直接協議することに言及し、同月12日に、同大統領のイランのハーメネイ最高指導者への交渉を求める書簡が届けられたことで、大きな変化が見られている。
4月12日にオマーンで間接交渉が行われた後、同月19日にはローマで、26日には再びオマーンでと短期間に3回の協議が開かれている。
第3回のオマーンの協議後の米政府高官の話では、「合意に向けてさらなる進展があった」とされており、今後も協議は継続するとみられる。
その一方で、米国はイランの石油取引に関連して新たな制裁を科している。3月20日には、イラン産原油輸出に関係する中国の石油関連企業、タンカー運営業者、パナマ船籍の石油タンカーを含む20以上の団体、個人に制裁を科した。この制裁について、米国務省は「中国はイランの最大に輸入国だ」と指摘している。
さらに、第1回目の米国・イラン間接交渉直前の4月10日にも、中国浙江省舟山市の島にある石油製品のターミナルを運営する中国企業「ティーポット」とイランの石油取引への制裁を発表した。
同時に、イランの石油輸送に関与しているアラブ首長国連邦(UAE)やインドの船舶運航会社も制裁対象に指定した。この際の発表にあたり、ベッセント米財務長官は、「米国はイランの石油輸出のあらゆる取引から利益を得ようとする動きを阻止することに引き続き注力している」と述べている。
イランの石油輸出量は、2024年10月時点で日量170万バレル(生産量は日量320万バレル)である。トランプ政権は、石油市場から、このイラン産原油を激減させようとしている。同様のことがイラン産天然ガス(LPG)輸出についても見られている。
例えば、4月22日、米財務省は、イラン産LPGをとりあつかう実業家エマムジョメ氏の企業グループに制裁を科している。
トランプ政権の対イラン経済圧力の効果
このようなトランプ政権の対イラン政策――核開発交渉の一方でエネルギー取引への制裁を強化する――は、果たして成果を上げられるのだろうか。
・・・
全文を読みたい方は「イーグルフライ」をご覧ください。
メルマガ&掲示板「イーグルフライ」より一部抜粋しています。
(この記事は2025年4月29日に書かれたものです)
関連記事
https://real-int.jp/articles/2827/
https://real-int.jp/articles/2822/