円独歩安は7月までかも
米日3ヵ月物利回り差に注目
日銀がどう動こうが、どう発言しようが、円の独歩安基調は微動だもしない。米国金利が多少の低下をしても円が買われることはない。
円安を評価すべきなのか、円高であるべきなのかは各々の位置する立場によって様々であるし、どちらに軍配を上げるかを論じることは、あまり意味がない。
ただ、円キャリートレードが恒常的に続いている現状からの環境の変化がなければ、大きなトレンド転換は期待できないだろう。
以前に指摘したことでもあるが、このキャリートレードに絡んだデータから、米日3ヵ月物銀行間取引金利の利回り差が5%を切らない限りドル円のトレンド転換は難しい、という市場関係者のセオリーがある。
このセオリーを三井住友DSアセットマネジメントの白木氏(チーフグローバルストラテジスト)が、解説しているので転記しておこう(同社・マーケットの視点6月7日号)。
当レポートの展開につながる重要な視点ゆえ必読である。
1995年12月末以降、約28年間のデータをみると米日の短期金利差(3ヵ月物の銀行間取引金利)が、5%超の時期に、ドル円の3ヵ月(60営業日)の騰落率は平均約1.48%のドル高となっています。
また、より細かいレンジで見ると、金利差が拡大するほどドル高の傾向が強まります。
しかし、同金利差が5%を下回り、4.5%以上5%未満のレンジに切り下がると、ドル円の騰落率は同約0.53%のドル安となっています。
こうした「金利差5%」を閾値(しきいち)としたドル円の方向感の違いには、為替市場のボラティリティ(市場の変動率)が関係しているのかもしれません。
というのも、金利差が縮小してくると、為替市場の変動により生じる損失を金利差では、カバーし切れないケースが増えてくるからです。
具体的な数字で見ると、米日短期金利さが4.5%~5%の期間、ドル円の過去1ヵ月間(20営業日)の変動率(ヒストリカル・ボラティリティ)が、6%未満の局面を見ると、金利差に素直に反応したドル高傾向が見られ、同局面のドル円の3ヵ月(60営業日)の平均騰落率は1.02%のドル高となっています。
一方、ボラティリティが6%以上の期間では同0.79%のドル安となります。こうした傾向はボラティリティの上昇とともに顕著になります。
同ボラティリティが7%以上の期間は平均0.98%、8%超で同1.35%のドル安、9%超=1.82%、10%超=2.58%のドル安と、為替の変動率はボラティリティの上昇につれてグイグイとドル安方向へと傾いていきます。
因みに米日3ヵ月物短期金利差が5%の場合、金利差から得られるリターン(取引コスト等控除前)は、1.25%になります(5%×90日÷360日)。
一方、米日金利差が4.5%未満の次期における3ヵ月間の為替騰落率は、ボラティリティが8%を超えると平均1.35%の円安になります。
このため、低金利の円で賃金を調達して高金利のドルで運用する、いわゆる「キャリートレード」の収益はマイナスに転じる可能性があります。
こうしてみると、一つの大まかな目安として、米日の短期金利差が5%を下回り、更にドル円の1ヵ月のヒストリカル・ボラティリティが8%を超えてくると、「行きすぎた円安」が大きく巻き戻すきっかけとなる可能性が出てきそうです。
FRBは年内利下げ予想を1回とした
12日、FOMCでは政策金利を5.25~5.5%の誘導目標に据え置いた。
FOMC参加者のドットプロット(金利予測分布図)では、年内の利下げが0.25ポイント1回だけとの想定が示された。
この日発表された5月のCPIはインフレの改善を示したものの、ほとんどの当局者が利下げを急いでいないことが示唆された。
FRBは政策声明で、最近のインフレの進展を「緩やかだ」と表現。前月より状況が若干ながら改善したことをうかがわせた。
新たな金利見通しでは、当局者が19人中11人が年内の利下げは1回までと予想。このうち4人は利下げがないと予測した。他の8人は年内2回の利下げを見込んでいる。FOMCは年内に7月、9月、11月、12月とあと4回開催される。
パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で、インフレ統計は年初にこそ高水準だったものの、最近は改善を示していると指摘。
「インフレに関してかなりの進展があった」との認識を示しつつ、5月のCPIについては、「正しい方向への一歩だが、一つのデータに過度に突き動かされるのはよくない」と、クギを刺した。
その上で、利下げに踏み切るには、「良好なデータをさらに多く確認する必要がある」と、結論付けた。
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続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2024/6/20の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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