円相場のダイバーエージェンスはいつか
SFr/円のクロスレートに注目、と
文藝春秋6月号で「投資家必読!円安が続かない理由」と題して、経済評論家・岩本まゆみ氏(元外為ディーラー)が、興味深い視点を記している。
この数年、対ドル、対フランでも円はひたすら売られてきました。長らく続いたこの相関関係が2024年明けから崩れ出した(対SFrでの円上昇)わけですが、こうした変化は「ダイバーエージェンス」(相違・逸脱)と言われます。
ダーバーエージェンスは相場の潮目が変化する際に現れやすいものです。最近、米資産運用会社がキャリー調達通過を円からフラン(SFr)へと変更させている、との海外報道がありました。
主要国がコロナ禍以降、インフレ対応のため政策金利を軒並み引き上げる中、唯一マイナス金利が慢性化していた日本の円はキャリートレードの調達通貨として、君臨していました。
しかしながら、ここにきて円キャリーは止めて、フランのキャリーへと乗り換える=円を買い戻してフランを売るのが得策、との判断を海外勢は開始したというわけです。スイス中銀の利下げでフランの先安観が出てきた、追加利下げの可能性もある。
一方、日銀は金融政策の正常化に向け動き出した。為替市場では投機筋の巨額な円の売り持ちが積み上がっていて、日銀による円買い介入の可能性もある-などがその理由として挙げられています。
国内からの景色では、今後も円安に弾みがつきそうに見えますが、「海外勢の円キャリー解消」の動きが加速すれば、一段の円安は進みにくくなる可能性があるでしょう。
さらに、米国の利下げとなれば円安に歯止めをかけたい政府・日銀にとっては、
追い風となるはずです(133ページより)
ようするに、円キャリートレードを中核とした投機筋が日銀スタンスと、スイス中銀(SNB)のスタンスの明確な違いから、SFrキャリートレードへとシフトし始めたゆえ、少なくとも全面安となってきた円の環境に変化が出てくるということなのでしょう。
スイス中銀(SNB)のスタンス
2022年終盤から対ドルで堅調地合いを保っていたSFrだが、今年に入ると一転、弱さが目立ち始めている。
主要通貨の対ドルでのパフォーマンスを比較すると、過去1年間ではポンドに次いで強く、特に22年11月から23年末の約1年間は15%程度も上昇するなど、多くの通貨が対ドルで伸び悩む中で、SFrは買いが優勢となっていた。
しかし、24年に入ると一転、円に次ぐ弱さとなっている。その他の通貨の過去1年と年初来の順位がそれほど変化していないことからも、SFrが急速に弱含んだ様子が見て取れる。
SFr相場に大きな影響を与えたのは、SNBの通貨に対するスタンスの変化だ。輸出立国であるスイスは伝統的にSFr高を嫌っており、SNBはSFr高を抑制する方向で金融政策を決定していた。
SNBは他中銀と比較しても為替に関する姿勢が明確で、中銀のホームページにも金融政策の一手段として為替介入が記載されている。
歴史的に見ても、SFrは購買力平価以上に高く評価される傾向にあり、通貨高圧力と戦う中銀、というのがこれまでのSNBの姿だった。
これが一転したのがコロナ禍以降だ。世界的にインフレ圧力が強まる中、他国と比較すれば緩やかとはいえ、スイスにもインフレの波が押し寄せた。
SNBはインフレ目標を「2%未満でデフレではない水準(0~2%)」とFRBやECB、BOJなどと比較して保守的に置いており、インフレ率が2%を超えた段階で機敏に反応し、利上げを実施した。
SFr高は輸出にとっては不利な一方、輸入インフレの抑制には有利だ。このため、SNBは、利上げ実施後、SFr高を容認し、2023年には大規模なSFr買い介入も実施した。
そのSNBが、再び通貨高抑制に戻り、遂に主要中銀で初の利下げに踏み切ったことが最近のSFr安の要因だ。
もともと、SFrは「リスク回避」通貨ゆえ、22年2月のロシアによるウクライナ侵攻以来、SFrに上昇圧力が高まった。
しかし、23年12月のSNB金融政策決定会合ではインフレ率の収束を背景に、突如、SFr買いの抑制に転じたのである。
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続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2024/5/15の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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