執拗な円安を封印するには…
なぜ、米経済の堅調が続くのか
昨年10月23日を底にNYダウ平均株価は今年3月21日の5ヵ月間に21%も上昇、SP500指数は25%、NASDAQ指数はAI関連銘柄中心に27%も上昇してきた。
ドルの強さも基本的には、こうした米上場企業の業績向上と強気の見通しに起因している。
FRBが22年3月に利上げを開始して以来丸2年が経過し、FFレートは0.125%から5.375%まで大幅に引き上げられた。
5.375%という政策金利水準は期待インフレ率(2.2%)を勘案すると、実質ベースで3%強となり、これは米国経済の潜在成長率(2%弱)を1%ポイント以上上回り、かなり強力な引き締め効果を持つはずだった。
確かに銀行の貸し出し態度は大幅に厳格化し、雇用も逼迫度合いが低下している。
しかし、これまでのところ、米国景気は予想外に堅調な展開を示している。
2023年中の実質経済成長率は2.5%と潜在成長率を上回っている。過去を振り返ると、大幅な利上げの後には景気後退となる例が多かった。
今次局面については、これから累積的な金融引き締めの効果が出てくる、との見方が依然としてある一方、米国景気は減速しても景気後退は結局回避できそうだとの見方が増えつつある。
実際、FOMC(3月)の経済見通しでは今年の実質GDP見通しを2.1%(従来は1.6%)に引き上げている。
では一体、何故米国経済の堅調が続いているのか。
筆者は、これまで何回か、原因を推測してきたが時を重ねるごとに、修正を余儀なくされてきた。しかし、ここに来て、ようやく以下の4点に絞られてきたように思われるので、記しておきた。
(1)賃金と物価の好循環
勤労所得の伸び率が低下する中で、インフレ率がそれを上回るペースで低下し、その結果、実質勤労所得の伸びがプラスを維持していることが実質消費の伸びを支えている。
ここで重要な点は、総合CPいが急速に低下している点だ。
足下ではサービスのインフレ率の低下ペースがやや鈍化している一方、財のインフレ率はほぼゼロとなっている。
財のインフレ率はエネルギーを含む商品市況と密接な関係にあるが、商品市況は中国や欧州の景気低迷(とくに中国の景気低迷)を反映して軟調に推移している。
大きな括りとして、中国の景気低迷が商品市況を下押しし、それが米国の財インフレを抑制していることで、米国での好循環を生み出しているということにつながっている構図だ。
なお、実質個人消費と実質勤労所得の関係をみると、2021年初から23年初にかけては実質個人消費の伸びは実質勤労所得の伸びを上回っていた。
これは、財政からの種々の補助金が支給され、これが消費に回ったと推測できる。この関係が崩れたのが23年4月以降だ。
実質個人消費の伸びと実質勤労所得の伸びが概ね一致している。このことは、間接的ながら財政資金の消費者への所得補償効果(過剰貯蓄取り崩しの消費押上効果)が2023年所に出尽したことを示唆している。
今後の消費動向を見通すためには、雇用者数・労働時間・1人当たり賃金で決まる名目勤労所得の伸びとインフレ率の関係を見ていくことが重要だ。
ただし、消費者ローン金利の上昇と銀行の消費者向け貸し出し態度厳格化で、両者の関係が崩れる可能性もある。
(2)サービス産業が景気を下支え
従来、製造業が景気敏感産業とされ、製造業の景況感が景気の先行きを予測するうえで重要視された。
というのも、製造業は在庫を保有することから、景気の先行きに楽観的になると在庫を増やすことで製造業全体の業況を改善してきた(逆も同じ)。
その結果、景気全体の振幅を拡大する傾向があった。一方、サービス業の多くでは、在庫という概念自体が存在しない。サービスは瞬間消費であるからだ。
このため、エコノミストは、これまで製造業の業況をメインにして景気判断を行ってきた。今次局面でも、2023年以降は製造業の業況はサービス業に比べ明確に悪化している。
PMIをみても23年初以降、製造業がサービス業を大きく下回っている。製造業に金融引き締め効果が表れているものの、サービス業には金融引き締めの効果が及びにくいという仮説も成り立つ。
実際、雇用の大半はサービス業で占められているが、個人消費が底堅い下では、サービス業の労働需要は減衰せず、それが勤労所得増となって消費を下支えするという、好循環がみられるのが今回の景気循環の特徴だ。
なお、歴史的にも珍しいサービス業が重要な役割を演じる景気循環は、コロナ禍後にみられた一時的な現象なのか、あるいは今後も頻繁に起きる構造変化とみるべきかは、現時点では不明だ。
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2024/4/2の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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