米国景況の陰りを無視する市場
執拗な米国債売りの動き
今度は予想外にドルが買い戻されている。
3月8日に146円48銭を付けたドル円も同15日には149円17銭まで円下落。ドルの主要通貨に対する実効指数(DXY)も、102.76から103.44へと上昇した。
その最大の背景は米国金利の上昇で、2年物米国債が25bp、5年債28bp、10年債23bp幅と短期間で率にして5~7%も跳ね上がった。
材料としては、
(1)NY連銀発表の3年~5年先の期待インフレ率が上昇(11日)、
(2)米2月CPIがインフレのしつこさを印象づけた(12日)、
(3)米2月のPPIが前月比、前年比で上昇した(14日)、
(4)米2月の鉱工業・製造業生産指数が前月比で上昇した
が挙げられている。
ようするにFRBは利下げ開始を先延ばしするとの見通しを市場が強めたという構図だ。
しかし、こうした見方が長続きするかどうかは定かでない。
まず、12日に発表された米2月CPIについて記しておこう。
確かに全体としてはインフレの執拗性を印象付けたものの、インフレ退治が最終段階にあることも示したと言える。
ごく一部に利上げ再開の可能性に言及する向きもあるが、現在のFF金利水準である5.5%(誘導目標レンジ上限値)が、ターミナルレート(利上げの最終着地水準)になった可能性は極めて高い。
これまでの景気の粘り強さを見る限り、5~6月の利下げ開始はデータ的には、微妙なところかもしれないが、中立金利(景気を刺激も後退もさせない政策金利水準)が、2.5%程度とされ、現在の水準が明らかが引き締めゾーンにあると解釈しているFRBとしては、2月CPIで動揺することはあるまい。
総合CPIは前月比+0.4%(1月+0.3%)、前年比+3.2%(1月+3.1%)エコノミスト予想+3.1%。
エネルギーは前月比+2.3%(1月▼0.9%)と、上昇に転じ前年比も▼1.9%と下落幅縮小。
ただ、食品は前月比0%(1月+0.4%)前年比+2.2%と落ち着きがみられ、コロナ期直前と同程度の伸び率にあり、この点は消費者の体感物価の低下に貢献すると期待される。
エネルギー・食品を除くコアCPIは前月比+0.358%(1月+0.392%)、前年比+3.8%(1月+3.9%)と上昇鈍化。
ただし前月比伸び率の年換算は+4.4%、3ヵ月前比年率では+4.2%、その3ヵ月平均値は+3.8%と加速感が認められる。
とはいえ、やや長目でみればコアCPIのトレンドを決める労働コスト(平均時給)の伸びが、低下基調にあることから、賃金由来のインフレ圧力は後退が見込まれる。
コアCPIを「財」と「サービス」に分解すると、コア財は前月比+0.1%と9ヵ月ぶりにプラスに転じた。
中古車価格の落ち着き等を背景に前年比では▼0.3%とマイナス圏にあるが、財価格の下落は一服しつつあるようにみえる。
コアサービスは前月比+0.5%(1月+0.7%)と小幅に減速も、前年比では+5.2%と高止まりした。
CPI全体のうち3割程度の比重を有し、消費者全体を最も強く押し上げている家賃は前月比+0.4%(1月+0.6%)と減速し、前年比でも+6.0%に伸び率が縮小した。
リアルタイムの家賃を捕捉するケース・シラー住宅価格や、Zillow指数が明確にピークアウトしていることを踏まえれば、今後しばらくはCPI家賃も鈍化する公算が大きい。
この間、家賃を除いたコアCPIは前年比+2.2%(22年3月は+7%)まで減速している。
ここで労働コスト増加を起点とするインフレの帰趨を見極めるために、13日発表されたNFIB(全米自営業者連盟)の2月中小企業調査に注目すると、雇用計画(+14→+12)が3ヵ月連続で低下したほか、人件費計画(+26→+19)が急激な低下を示した。
人件費計画については、23年11月に30を記録するなど「ぶり返し」の症状がみられていたが、一気にコロナ期前の水準に回帰し、中小企業が人件費増加に寛容でなくなりつつある様子が示された。
自発的離職率の低下(転職しても賃金アップが期待できなくなると離職しなくなる)や、失業者一人当たりに対する求人件数の割合の低下など、労働需給の逼迫度合いが和らいでいることを示す他のデータと整合的である。
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2024/3/18の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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