ナゼ、こんなに米経済は強いのか
FRBと市場の擦れ違いのナゾ
ドルの実効指数(DXY)は9日現在、104.07ポイントと月初比で1ポイントも高い。これは一重に好調な米経済と株高、そして堅調な企業業績によるものだ。
確かに米経済は予想をはるかに越えて堅調推移している。23年4Q(10-12月)の実質GDP成長率は前期比年率+3.3%と、6Q連続のプラス成長。Q3の力強い成長の後、Q4にやや減速したものの、24年に入ってから回復ペースを持ち直している。
実際、12月FOMC声明文では「経済活動はQ3の力強いペースから減速している」から、1月には「堅調なペースで拡大している」へと基調判断が情報修正された。
経済指標を見ても、例えば、1月の雇用統計で、統計改定など特殊要因が合ったものの、雇用者数が予想以上に増加したこともあり、市場の早期利下げ観測もさすがにやや冷やされている。
1月のISM(供給管理協会)サービス業景気指数(PMI)も、市場予想を大きく上回った。
このところ発表される経済指標は、おおむね米経済が底堅く推移していることを示唆しており、ソフトランディング期待を一層強めている。
ただ、懸念材料も少なくない。
FRBが1月24日に23年3月の地銀経営危機(3行)時に導入した銀行ターム・ファンディング・プログラム(BTPP)を予定通り3月11日に終了することを発表した後、NYコミュニティ・バンコープ(NYCB=地銀大手行)の経営懸念が昨年3月に続いて浮上した。
これまで、利下げの効果は住宅ローン金利上昇などを通じて不動産市場に表れてきた。コロナ禍後の生活変容でオフィスなどの空室率が上昇したことも重なっている。
24年以降には、多くの商業用不動産ローンの借り換えが予定されている。商業用不動産の担保価値の低下に伴い与信枠が縮小、政策金利上昇に伴うローン金利負担増などが、結果として商業用不動産融資に注力してきた地銀経営への懸念につながっているも財務省は大した問題にはならないと伝えている。
市場は、こうした懸念を含め現状の景況に対し距離を置きつつ、「利下げでソフトランディングへ」とのシナリオをメインとしていて、FRBのスタンスとは溝が生じている。
パウエル議長は1月31日のFOMC後の記者会見で、3月利下げに否定的な見方を示した。声明文でも「物価上昇率が持続的に2%に向かって推移することに大いに確信を持てるまで、利下げが適切だと考えない」と明記された。
そうした状況の下、市場参加者も3月の早期利下げを後退させる一方で、「5月利下げ予想」として、あくまで利下げ必至論を繰り広げている。
利下げ幅を1回あたり25bpとすると24年末まで5回程度の利下げを織り込む市場に対して、FOMCメンバーの見通し(中央値)では、24年末までに3回の利下げが予定されていた。
パウエル議長は2月5日の米CBS番組の「60ミニッツ」で、「予測が劇的に変わるようなことは起きていない」と述べており、まだ年3回の利下げが有力な見通しとはなっている。
つまり、市場とFRBとの思惑は依然、擦れ違ったままだ。肝心の物価上昇率は縮小してきたものの、2%目標よりは高い。
需要の抑制を狙うも、雇用・所得環境も底堅く推移しているように見える。
雇用の最大化が満たされ続けるならばFRBの2大責務の一つである、物価の安定に注力できる一方で、物価の安定の達成になかなかたどり着けないことも意味する。
コロナ禍後の一過性の要因によって現在の米国経済が支えられているならば、いずれその要因が解消されるだろう。
しかし、何らかの変化(例えば、中立金利の大幅上昇)が生じているならば話は異なる。
財とサービスのインフレ格差
23年4Qの実質GDPは3Q(前期比年率+4.9%)よりは低い+3.3%だったものの、1%台後半とされる潜在成長率を上回る堅調な伸びを記録した。
一方、FRBがインフレ指標として重視するコアPCE(個人消費支出)デフレータは、7-9月期に続いて+2.0%)に留まった。
さらに、・・・
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2024/2/13の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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