米国の利下げ時期を見通すトリセツ
利下げ先送り論の根拠
1月30日、31日にFOMCがある。当リポートは2月1日発行ゆえ既に結果が出ているわけだが、敢えて概要の予測をしておこう。
仮に次回3月の利下げ着手があるのであれば、公式見解である声明文ないしパウエル議長の会見で何らかの予告が入るとみられる。
もっとも、ブラックアウト期間(FOMC前の2週間はFOMCメンバーの発言禁止)入り直前に、FRBウォラー理事は、利下げ見当自体は否定しなかったものの、急がず慎重に対応するとの意向を示している。
また、25日に発表された10-12月期実質GDP成長率は市場予想を上回る強い伸びを記録した。
FRBが重視するインフレ指標であるPCE(個人消費支出)コアデフレータは、すでに前年比2%を下回るようなペースとなってきており、利下げが検討できるという姿勢は、変わらないだろうが、現時点で3月の利下げ着手が必要との判断には至るまい。
ただし、振り返ると、パウエル議長の会見で利下げ検討に言及があった直近12月の声明文では、「あと1回の利上げが必要」とのスタンスをとっていた頃から、大きな変化がなかったことからすれば、今回の声明文では相応のスタンスの変化が現れてきそうだ。
さらに、利上げとともに進められてきた買入資産圧縮の方針見直しにも踏み込む可能性がある点にも、注意しておきたいところだ。
ドル円相場に関しては、FRBの利下げ開始予測時期と、日銀の金利正常化への次の一手のタイミング予測との「重ね合わせ具合」という、難しいパズルとなってきたため予断を許さないが、少なくとも再び150円越え方向になっていくことだけは可能性が薄らいだと思われる。
それにしてもFRBは、金融政策の次の一手に関し、極めて難解な分析を強いられていることは明らかである。
確かにインフレ率は想定をはるかに上回るペースで低下している。
だが、そうだとすればインフレ率がFRBの目標値である2%に、持続的に戻っていることイコール、実質金利(インフレ調整後の名目金利)の上昇となり、経済活動を抑制しすぎる可能性を高めることを意味する。
つまり、FRBは利下げが必要ということになる。問題はその時期と程度だ。米経済が予想外に堅調な成長を続けているため、今回のFOMCでの利下げはないだろう。
コアインフレ率は月次ベースで過去7ヵ月のうち6ヵ月で2%以下となっているが、FRBはそれが持続性のあるものだと確認できるまでは利下げに踏み切らない構えだ。
その代わり、「金利は低下するよりも上昇する可能性が高い」と、声明内で示唆するのをやめるのではないか。こうした「引き締めスタンス」の撤回は、今後数ヵ月内に利下げが検討される可能性を認めるものとなる。
FRBは通常、経済活動が急減速している場合に利下げする。今回はそうではない。経済成長は昨年末まで驚くほど堅調だった。
FRBはむしろ、インフレ率が低下しているため、何もしなければ実質金利が無用に引き締め的な水準になるかどうかを思案している。
早期利下げ論にとって、債券利回りの低下と株価の上昇は不利に働く。経済活動や個人消費を促す可能性があるからだ。ゆえにFRBは利下げを5月以降まで先送りするしかないということになりやすい。
ただ、その一方で、「インフレ率が本当に安心できる水準になり、実体経済が若干減速しているようであれば、3月に利下げしても問題ない」と、FRBは考えるかもしれない。
FRBは最近のインフレ減速が続くのか、あるいは、やや高いインフレ率を維持する形で、経済が勢いづくのか確信が持てないため、利下げ開始は慎重に判断したいのかもしれない。
複数のFRB高官は、利下げ後に再び利上げを余儀なくされる事態だけは避けたいと述べている。
あるヘッジファンドのエコノミストは、今年の経済成長率と雇用者数が、FRBの予想を上回るとみて、利下げは6月以降になると読んでいる。
彼は「インフレ率の低下が実質金利を押し上げる」との懸念は見当違いだと指摘する。インフレ率が低下すれば購買力・消費者心理・支出も高まるためだという。
「インフレ率が下がれば経済成長は高まる、ここ数十年、インフレ率が下がった後に経済成長が弱まった例は思いつかない」と結語する。
彼はさらに、こう続ける。
米経済が以前より高い金利に耐えられる可能性もある。大半のFRB高官は昨年12月の時点で、中立金利(経済がフル稼働の状態の時に需給を均衡させる金利水準)が2.5%であると考えていた。
これは昨年7月から5.25~5.5%に据え置かれている実際の政策金利を大幅に下回る。
つまり、金利が非常に景気抑制的な水準であることになるが、実際の景気はそうなっていない。FRB高官らは中立金利の推計値に頼るのではなく、過度に引き締め的であることをデータから読み取ろうとする傾向がある
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続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2024/1/31の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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