ポンド高への深追いは避けるべし
マイナス成長続く可能性大
11月10日に公表された7-9月期英国実質GDPは市場予想(前期比マイナス0.1%)を上回って横這いとなり、事前に警戒されていたマイナス成長は回避された。
個人消費と設備投資が前期比減少したが、輸入の減少を受けた純輸出の増加が相殺した形となった。もっとも、7-9月期の前期比は小数点第2位までみればマイナス0.03%で、実質GDPは4四半期ぶりの減少に転じている。
また、純輸出を除いた内需は前期比マイナス0.5%の減少となり、内容はヘッドラインの数字以上に弱い。
BOE(中央銀行)は11月2日のMPC(金融政策会合)で利上げを見送り、2会合連続で政策金利の据え置きを決定した。
市場では早期の利下げ転換を期待する味方が浮上しているが、今回の投票結果は据え置き5名、利上げ3名と前回9月会合から変化なく、BOEは利下げを検討する時期ではないとの姿勢を崩していない。
また、声明文には「金融政策は長期にわたり景気抑制的な水準に維持する必要がある」との表現が、追加されている。
確かに11月23日発表の11月PMI(購買担当者指数)が、50.1(10月48.7)と、50ポイントを上回り4カ月ぶりの高水準となり、24日発表の11月消費者信頼感指数も、マイナス24(10月マイナス30)と大きく改善し、ポンドドルも、この2日間で1.24ドル台後半から1.26ドル台へと大きく上昇。
ポンド円も186円台から188円台へと上昇したが、米ドルの下落と英政府による203億ポンド(約3兆8千億円)の減税(個人向けには、
93億ポンドの国民健康保険料引き下げ)の情報が行き渡ったための効果と思われる。
しかし、英国が個人消費や設備投資の減少を主因に、来年1-3月期までマイナス成長のままに推移する可能性の方が大きいと見る。
11月17日発表の10月小売売上高が前月比マイナス0.3%と、市場予想(+0.4%)に反して減少(前年同月比でもマイナス2.7%と、予想マイナス1.6%を下回った)したことも、こうした見方を後押ししよう。
見通しやマインドの改善よりも足下のデータが重要。
また、小売売上高は7-9月期の実績が小幅に下方改定されているため、同時期のGDPが下方改定となる可能性が高い(12月22日に確定値発表)。
労働需給とCPIの実像
11月14日に公表された最新の雇用統計は、強弱混在する結果となったが、総じてみれば賃金面からのインフレ圧力の緩やかな低下が継続していることが示唆された。
足下の動きを把握するために9月単月の伸び率に着目すると、週平均賃金(除く賞与)は前年比+7.5%と3カ月連続で前月から減速した。
所得税データから作成した10月の賃金増加率も減速が継続しているほか、先行指標である転職市場の新規募集賃金の伸び率も縮小傾向にあることから、先行きも賃金増加率は振れを伴いつつ、減速していくことが予想される。
労働力調査関連の指標をみると、失業率(7-9月平均・季節調整値)が、4.2%と前期(4-6月平均)から横這いとなり、有給従業員数(前月比+3.3万人)が、市場予想(前月比マイナス1.7万人)に反して2カ月連続で増加した点は、事前予想対比やや強めの結果となった。
もっとも、求人数の減少を主因に失業/求人倍率はコロナ禍前の水準に近づいており、全体としては労働需給の緩和は継続していると言えよう。
11月15日発表の10月CPIでは、サービス業を含む幅広い品目でインフレ率の減速が、進んでいることが示された。
ヘッドライン(総合CPI)の前年比は+4.6%と前月(+6.7%)から大きく減速し、2021年10月以来の伸び率にまで縮小、市場予想(+4.7%)をも下回った。
前月からの前年比伸び率縮小の半分以上はエネルギー価格によるもので、昨年のベース効果(昨年のレベルが高かったことに起因する伸び率の鈍化)のほか、10月から英ガス電力市場監督局が家庭向けエネルギー価格の上限を引き下げたことが寄与した。
それに加え、サービス価格の前年比(+6.6%)も3カ月連続で前月から縮小しエネルギー以外の幅広い品目でもインフレ圧力の低下が示唆されている。
10月のインフレ率の急低下はBOEの11月時点の物価見通しでも予想されていた。
実績はBOEの予測値(前年比+4.8%)を小幅に下回ったとはいえ、金融政策の中心的な見通しに変更を迫るほどのものではないだろう。
しかし、 ・・・
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2023/11/27の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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