米国経済はピークアウトを迎えた
インフレ沈静化が明白に
14日に米国10月CPI、15日に10月小売売上高と10月PPI(卸売物価指数)が発表された。17日のDXY(ドル指数)は103.8513日の105.64から大きく低下した。
ドル円こそ149円前半までとドルの下落は限定的だったが、ユーロドルは13日の1.067ドルあたりから1.0914ドルと大きく売られた。
もちろん、この間、他にも上下の材料はあったものの、「米国のインフレ動向と経済成長」というビッグなデータが、ドル下落への決定打となったことは間違いあるまい。
では、その10月のCPI・PPIと小売売上高の内容をどう解釈すべきなのかについて記していきたい。
総合CPIは前月比+0.0%(9月+0.4%)と低下し、市場予想中央値+0.1%も下回った。前月同月比では+3.2%(9月3.7%)と低下し、市場予想中央値+3.3%を下回った。前月比では食品が+0.3%(9月+0.2%)と加速した一方、ガソリンなどエネルギーがマイナス2.5%(9月+1.5%)と下落した。
前年同月比では食品が+3.3%(9月+3.7%)に低下、エネルギーはマイナス4.5%(9月マイナス0.5%)と大幅に下落した。コアCPIは前月比+0.2%(9月+0.3%)に低下し、市場予想中央値+0.3%も下回った。前年同月比でも+4.0%(9月+4.1%)に低下し、市場予想中央値の+4.1%も下回った。
コアCPIの前月比+0.2%は年率換算では+2.75%となり、3カ月前比年率では+3.4%、
その3カ月平均値は+3.0%で安定している。
コアCPIのトレンドを決める労働コスト(平均時給と捉えても可)が低下基調にあり、労働市場発のインフレ圧力が後退している現状を踏まえると、先行きも更なる減速が期待される。
コアCPIを「財」と「サービス」に分解すると、コア財は前月比マイナス0.1%、前年比+0.1%であった。
サプライチェーンが概ね修復し新車の供給が増加基調にある中、中古車価格が前月比マイナス0.8%と5カ月連続で低下し、関連指標のマンハイム中古車価格指数と概ね整合的な姿になった。
コアサービスは前月比+0.3%、前年比+5.5%となり、前年比上昇率は9月(+5.7%)から減速したものの高い伸びにとどまっている。
CPI全体のうち3割程度の比重を有す家賃は前月比+0.3%に減速、前年比では+6.9%に伸び率が縮小(5月には+8%台だった)。
CPI全体を押し上げる構図(品目別の寄与度は最大)が続いたものの、前年比伸び率は5月を頂点に明確な低下を遂げている。
リアルタイムの家賃を捕捉するケース・シラー住宅価格や、ジロー(Zillow)指数が明確にピークアウトする中、それらに対してCPIで計測される家賃が、1年程度の遅行性を有することを踏まえれば、当面のCPI家賃は上昇鈍化が限定路線。
この間、家賃を除いたコアCPIは前月比+0.1%、前年比+2.0%まで減速していることをみれば、インフレ沈静化のプロセスが最終段階に入ったと判断するのが妥当であろう。
ここで、労働コスト(賃金)増加を起点とするインフレが、どう終息していくのかを見極めるためにNFIB中小企業調査に注目すると、10月は雇用計画が低下基調を維持したものの、人件費計画は上昇に展示、設備投資計画も改善が一服している。
大きく見れば、労働コスト増加に歯止めをかけたい企業が省力化によって、収益を確保しようとする意図が伝わってくるが、人件費計画の反転はやや不気味な兆候として認識しておくべきだろう。
自発的離職率が低下するなど、労働者が待遇改善を要求する動きには、落ち着きがみられているものの、ストライキの多発(自動車、映画、飲食)など、生活苦を理由にした賃上げ要求はなお活発であり、賃金インフレ再燃の火種は残存している。
10月小売売上高は、まだ底堅い
10月の小売売上高は前月比マイナス0.11%(9月+0.88%)と、市場予想中央値の同マイナス0.3%を上回ったうえ、8・9月合計で、0.1%上方修正されたことを考慮すると、前月比横ばいへの鈍化にとどまった(7カ月ぶりの前月比減少という表面分析もあるが)。
変動の大きい自動車が前月の高い伸びの反動等で減少に転じ、全体を押し下げたにもかかわらず、自動車を除く小売、飲食サービス売上高は前月比+0.1%(9月+0.8%)と、市場予想中央値の同マイナス0.2%に反して増加した(8・9月合計+0.1%上方修正)。
しかし・・・
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2023/11/21の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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