執拗なドル高とユーロ円高の行くえ
結局、大型財政支出が寄与
米国7-9月期のGDP(速報値)は前期比年率4.9%と、2021年10-12月期以来の高成長となった。
米議会調査局が推計する潜在成長率(1.5%~2%近辺)をもとに、経済全体の需給バランスを示すGDPギャップを算出すると、7-9月期は+1.7%となり、需要超過であったことがわかる。
GDPギャップは2021年10-12月期に+2.0%と2000年4-6月期以来の高水準に達した後、昨年前半のマイナス成長で一旦+0.3%まで下がった。
しかし、年+1.7%程度を推計される潜在成長率を、実質GDPが昨年7-9月期から四半期連続で上回る伸びとなったことで、GDPギャップは再上昇した。
今年7-9月期の水準は2021年10-12月期の水準をやや下回るものの、コロナ禍前やリーマンショック前のピークよりも高い。
また、4-6月期には前期比年率+1.7に減速したGDPデフレーターも、7-9月期には+3.5%に再加速した。
需要超過の状態が強いこととインフレ圧力が収まり切っていないことから見て、第3四半期まで米国経済の過熱は解消されていないことは確実となった。
さすがに10-12月期のGDP成長率は前期比年率で+1%あたりまで鈍化しそうだが、とにかく、ここまでの「想定外な高成長」を大まかに分析しておかねばならない。
22年3月から累計5%以上の利上げが行われ、量的引き締め(QT)も、続いているのにもかかわらず、景気過熱が解消されてこなかったのは、財政拡張策の影響の可能性が極めて高い。
コロナ禍に対する公的給付金の支給により、2020年4-6月期と21年1-3月期に個人可処分所得は一時急増した。
ただ、所得の増加分はすぐには個人消費支出に回らず、貯蓄としてストックされ、その後にジワジワと貯蓄の取り崩しで消費につながっていった。
さらに、2023年初からの個人所得の税率区分変更(今年1月1日~)告知がなされ、減税されることを知った中位所得そうが消費支出を増やしたことも大きい。
個人消費支出価格(PCEデフレーター=インフレ率)で調整し実質化すると、所得税控除前の個人所得は+10.8%と急増した。
実質個人消費支出は1-3月期の+3.8%から4-6月期に+0.8%に減速したが、7-9月期には+4.0%と堅調であった。
ただ、実質個人可処分所得は4-6月期の+3.5%から7-9月期には、マイナス1.0%へ鈍化しており、減税効果が薄れてきたようだ。
月次統計で見ると、個人貯蓄率は昨年9、10月の3.0%から今年5月には5.3%まで上昇したが、9月には3.4%と再びかなり低い水準まで低下した。
給付金や減税で終わりに近いと見る。コロナ禍前には個人貯蓄率は7%程度であった。貯蓄率が上昇に転じれば個人消費支出は大きく鈍化するだろう。
潜在成長率を大きく上回る実質金利
11月1日のFOMCでは前回9月のFOMCに続いて利上げが見送られた。
ただ、今後の追加利上げの有無にかかわらず、早期の利上げに転じる公算は小さいとの見方が金融市場で強まった。
だが、その後発表された米10月ISM非製造業指数や雇用統計が弱かったことで、長期実質金利の指標である残存10年超インフレ連動債(10年BEI)の利回りは、2.5%超(今年4月時は1.5%以下)から現在、2.3%台へ低下している。
それでも潜在成長率(1.7%位)を上回っているわけである。経済成長のトレンドを実質金利が上回るということは、金融引き締めが実体的に強くなったことを示している。
現在の10年BEI利回りの潜在成長率に対する超過幅は2001年と2008、9年の景気後退期の前後の水準に匹敵する。
実質金利上昇の景気への影響はこれから強くなるという解釈しかできまい。
足元の米景気は過熱状態にある一方、景気後退の接近も示唆される状況となれば、金融・財政政策はどうすればよいのか、明確な答えはない。
さらに国際的政治情勢が不安定な上、来年には大統領選を控えて政治的思惑が絡み、金融・財政政策とも動きが取りにくくなろう。
したがって・・・
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2023/11/13の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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