財務省主導の経済政策なり
「骨太の方針2023」
読者諸兄は、多分「骨太の方針」と聞いただけで「政治・行政のどうでもいいこと」と解釈し、一気に関心の対象から外してしまうであろう、だが、この「骨太の方針」こそが、日本経済の行方を決定付ける政府の基本方針であり、現実に起きている様々な功罪の源流となっていることを知っておくべきだろう。
と同時に、ここでも財務省が執拗に主導権を握っているという、由々しき実態も頭に入れておくべきである。
いわゆる「骨太の方針」が閣議決定されたのを受けて世耕自民党参院幹事長(安倍派の重鎮)のもとを責任ある積極財政を推進する議員連盟(積極財政議連)幹部が挨拶に訪れるや、世耕氏は「もっと俺を使ってくればよかったのになぁ」と言って、その労をねぎらった。
かつては、安倍側近の一人だった世耕氏の一言は極めて多くの示唆に富んでいると言える。積極財政議連は、自民党の中にあって積極財政派に属する議員の砦ともいうべき存在だ。アベノミクスの推進を旗印にしていることから「安倍別働隊」と目されてきた存在だ。
それ掲げる政策が、真向から財務省の方向性と対立することもあってか、一貫して財務省に対して付度し続けることを止めない新聞やテレビといった、既存メディアからはほとんど無視された格好となってはいるが、会員数(国会議員数)102名を数えるなど、自民党内では間違いなく、一大勢力を築いているのが実情だ。
とはいうものの、「骨太の方針2023」を巡る党内議論においては、積極財政議連の主張は全く反映されることがなく、同議連にとっては完敗に等しい結果になってしまったという。
ここで改めて指摘するまでもなく、「骨太の方針」は次年度予算補正作業を進めるにあたって、その大前提となる枠組みのことだ。概算要求基準の策定からスタートする予算編成作業は、この方針に沿う形で行われることになる。
そして、「骨太の方針」は首相を議長とする経済財政諮問会議でタタキ台が作られ、与党、与党内での調整、了承が行われた後、閣議決定を経て正式決定にいたる。
何故、予算編成作業を進めるにあたってこうした煩雑手続きがとられるのかというと、「財政民主主義の観点に立って、政治主導で予算編成を進めるため」(首相経験者)なのだという。
しかし実際には、経済財政諮問会議の事務局に陣取る財務官僚が、全面的に主導する形で「骨太の方針」は策定されているのが実情なのである。
何のことはない、「財政民主主義」と言ってみたところで、それはあくまでも建前に過ぎないのである。安倍元首相の側近議員の次の一言は、その実態を見事に言い表している。
しかし、それでも安倍、菅両政権下において首相自身は、財務官僚が政権の意に背いて骨太の方針を作ってしまわないよう、目を光らせていたのです。
ところが財務官僚もしたたかで、あらゆる策を弄して、財務省の省是とも言える緊縮財政路線を方針にビルトインさせようと、いろいろと画策していたのです。
生々しい政調全体会議
実は、安倍氏が存命中だった一作年そうした財務官僚の「陰謀」が明るみ出て、
自民党内が騒然となったことがあった。その舞台となったのは、22年6月3日の自民党政調全体会議の場だった。
この日の政調全体会議の議題は、「骨太の方針2022」(原案)を議論することにあった。
積極財政議連の共同代表を務める谷川議員が、方針の説明にあたった政府サイドにこう質問を投げかけた。
骨太の方針の原案では、「本方針及び骨太の方針2021に基づき」とあるが、これはこれまでの歳出改革を継続するということなのか、つまり、「予算キャップ制」を継続させるということなのか、政府に回答を求める。
この質問に対して、黄川田内閣府副大臣がこう説明したのである。
「ご指摘の通りです、骨太の方針2021に基づくとは、2025年度のプライマリーバランス黒字化目標を維持することであり、これを受けて歳出改革の目安の設定、つまり社会保障関係費、非社会保障関係費の歳出にキャップ(上限)を設けるという意味になります」。
この黄川田副大臣の説明がなされるやいやな、会議場では数十人の議員が一斉に怒号ともいえる、以下のような怒りの声が飛び交う事態となった。
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2023/08/21の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。