米ドルが節目に/豪ドルは続伸なのか
米6月インフレ率の見方
米国民の経済面での二大懸念材料はリセッション(景気後退)とインフレだ。この二つには関連性がある。
インフレが根強ければ根強いほど、それを引き下げるために景気後退が必要になる可能性が高まる。このことは先週の当リポートでも言及した。
https://real-int.jp/articles/2216/
最新の統計は、そうしたリスクが減退しつつあることを示唆している。総合インフレ率は、昨年6月の前年同月比9.1%から今年5月は4%、6月は3%まで低下した。6月の低下は、テクニカルなもので、昨年6月の物価の急上昇が12ヵ月分の集計対象でなくなったためだ。
こうした要因が再び起きることはないため、総合インフレ率は今後数カ月間は上昇する可能性の方が高いだろう。
だが、より明るい材料は、労働市場がまだそれほど軟化していないにもかかわらず、基調的なインフレ率がここ数ヵ月間で低下してきたことだ。
このことは米経済がソフトランディングする確率が高まっていることを示唆する。つまり、景気後退に陥ることなしにインフレ率がFRBの目標である2%付近に戻る可能性が、高くなってきたということだ。
2021年にインフレ率が急上昇して以降、二つの力が働いている。
一つは、新型コロナウィルスの流行と景気刺激策、ウクライナ戦争によってサプライチェーン・エネルギー・不動産・労働力にもたらされた一時的なショックだ。
もう一つは、供給と需要及びインフレ期待の基調的な力だ。
一時的な効果が薄まって初めて、われわれはこれらの基調的な力が、インフレにどれほどの影響をもたらしてきたのかを知ることができる。
予想より時間はかかったものの、一時的な力はおおむね消失したと解釈できるのではあるまいか。
ガソリン価格はロシアによるウクライナ侵攻前の水準にほぼ戻っているし、原油価格に至っては、当時の90ドル台(WTI)から一時は130ドル台まで急騰したが、現在は70ドルまで下げてきている(今後は60ドル割れも)。
航空運賃はコロナ禍が始まってから22年6月までの間に20%上昇したが、それ以降で19%下落し、先月は8%下がった。
中古車の価格はコロナ禍が始まってから22年1月までの間に65%も上昇したが、それ以降8%下落し、先月は0.5%下がった。
競売データによると、今後さらに下がる確率が高いという。
CPI(消費者物価指数)の構成要素の中で最大級の比率を占める住居費は、低い住宅ローン金利、コロナに伴う人口移動、建設資材不足などを背景にコロナ流行下で急上昇した。
しかし、民間機関の調査によれば、家賃の上昇は過去1年で劇的に鈍化した。このことも今後数ヵ月間で公式統計のインフレ率を徐々に低下させるはずだ。
では基調インフレ率は、どんな水準に向かうのだろうか。
それを見極めるためエコノミストらは、例外的なショックを最も受けやすい項目を排除した指標に注目する。
食品とエネルギーを除いた指標であるコアCPIの上昇率は6月に4.8%となった。9ヵ月前は6.6%に達していた。
財・エネルギー・住居費を除いたCPI上昇率は、過去12ヵ月間でわずか4%、過去3ヶ月間では年率1.4%という微々たる水準になっている。
ハーバード大のエコノミストは、3ヵ月、6ヵ月、12ヵ月の7種類の基調インフレ指数を調べ、FRBが2%目標の基準とするPCE(個人消費支出)デフレーター(物価指数)と似たような形に調整している。これらのすべての指数の中央値は4月の4%から6月には2.8%に低下した。
彼は6月のCPIをめぐるユーフォリア(陶酔状態)が気になると語るが、それでも基調インフレ指数の動向には「うれしい驚き」を感じたという。
失業率の上昇がない場合、年末のインフレ率は3.5%前後になると同氏はみている。数ヵ月前の予想は4%だった。
ただ、FRBにとっては、これでもまだ高過ぎると考えている。
「完全な軟着陸には、まだそれなりの幸運を要する」との見方だ。だが、以前ほどの幸運は不要かもしれない。
GS(ゴールドマン・サックス)のチーフエコノミストによると、これまで高インフレが供給と需要の不均衡をより大きく見せていたため、均衡を回復するための景気後退の必要性も過大に見えていたという。
「だが、均衡点からあまり懸け離れていないなら、成長率が潜在成長率を一定期間下回ることによって、現実的に状況を修正することができる、それはわれわれがこれまでにやってきたことだ」と。
失業率は3.6%と依然、低水準で推移しているが、官民の各種データによれば、求人件数や自発的離職者は着実に減少した。
これは、販売の鈍化と堅調な雇用を背景に、企業が深刻な人手不足を脱したことを表している。
もう一つの良い兆しは、消費者の向こう1年のインフレ期待が大幅に低下したことだ。
高いインフレ期待は自己実現してしまう可能性がある(高インフレを懸念し、必要以上の需要につながり、本当にインフレ率が上昇してしまうこと)。
とはいえ、インフレとの戦いに勝利したというわけではない。FRBは22年初めから政策金利を合計5ポイント引き上げているが、その効果は薄れてきているように見える。
株式市場は史上最高値付近まで戻し、住宅市場の活動も回復している。賃金は依然年率4~5%で上昇しており、2%のインフレに見合う上昇率よりも1ポイント高い。
前週号で記した通り、年末にかけての景気動向、とりわけ労働需給の動向次第で、再び利上げモードということもありうる。
豪ドルが対ドルで急上昇の訳
7月12日と13日、対ドルでの豪ドル上昇が目立った。
この動きを見て、豪州サイドの金融政策やRBA(中央銀行)に、何らかの変化があったのではないかとの憶測が流れている。
しかし、この動きのベースは・・・
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2023/07/19の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。