FRBのスタンスはタカ派ポーズなり
12月FOMCと現実との齟齬
12月FOMC(12月13・14日)では23年末のFF金利に対するFOMCメンバーの予想中央値「ドット」は、5.125%と予想を上回ったが、筆者はFF金利の到達点の予想を4.875%に据え置く。
足元の経済指標次第ではあるが、パウエル議長は23年2月(2月1日)のFOMCで、利上げのペースを25bp(0.25%ポイント)へ、さらに引き下げることを示唆しており、これ自体は筆者の「25bpの利上げか、据え置き」予測に近い。
政策金利の到達点を5.125%とし、パウエル議長が23年中の利下げを予想していないことから、最新の「ドットチャート」は2月、3月、5月の計3回の25bp利上げを示唆している。
筆者はFOMCが2月・3月の25bp利上げ実施もあり得ると考えてはいるが、FOMCメンバーの経済見通しと比較してインフレが下振れし、その始まりを見込む景気後退(リセッション)入りにより、予想より早く利上げを休止すると読んでいる。
したがって、その延長上として23年9月FOMCからの利下げ開始予想も変えない。
パウエル議長は、利下げを検討する前に2%のインフレ回帰に向けた、持続的な進展を確認することの重要性を繰り返し強調した。
最近のインフレ統計が、市場コンセンサスを下回っていることから、「持続的な進展」(連続的相応のインフレ率低下)は23年後半までに明らかになるだろう。
さらに、経済の遅行データとされる失業率も23年10-12月期には、6%(FOMCメンバーの予想中央値は4.6%)に達すると思われ、インフレ再加速のリスクはないと筆者は見込んでいる。
インフレ見通しは過度に悲観的
CPI上昇率が10月と11月に連続で予想を下振れしたにもかかわらず、FOMCメンバーは中期インフレ見通しをさらに上方修正した。
FOMCメンバーは、22年初めにはインフレ圧力の強さと持続性を過小評価(筆者も含む)していたが、今度はインフレ高値について逆方向の予測ミスを犯すリスクがある。
21年と22年にインフレ率の予想上振れが続いたように、23年は遂にインフレ率がFRBの予想を下回るサプライズをもたらし得るのではあるまいか、(23年10-12月期のコアPCEデフレータ―=個人消費支出のインフレ率は前年同期比+2.0%まで減速すると筆者は予想している)。
パウエル議長が22年初に指摘したように、「インフレについて我々がいかに理解していないかが、よりよく理解できるようになった」という、そのロジックは逆の状況にも当てはまることになりそうな気がする。
22年後半には景気の勢いが急速に弱まっており、景気後退入りに沿う状況になる。
しかし11月FOMC議事録では、FRBスタッフが「経済がプラス成長を維持する基本シナリオとほぼ同程度に、今後1年間のどこかで景気後退に入る可能性がある」としていたにも拘らず、それが現実化しつつあるのに、まだ確信を持てないでいる。
FOMCメンバーは景気後退を明示的に想定することには消極的で、成長期待を下げながらも前向きな姿勢を保っている。
さらに、失業率のピーク予想を4.6%へと小幅に引き上げたものの、パウエル議長は労働市場が堅調を維持するなかでもインフレ率は低下する可能性があると示唆した。
この点と、FOMCメンバー見通しからみて、特に自然失業率(インフレを加速も減速もさせない失業率)が一時的に上昇しているとすれば、インフレ抑制のために労働市場を大幅に冷やす意図はほとんどないことが示唆される。
FRBの成長率と失業率の基本シナリオに基づくと、コアPCEデフレータ―は23年10-12月期に前年同期比+3.5%までしか低下しない。
だが、この予測は依然として景気に楽観的すぎるためと考えざるを得まい。
筆者は23年10-12月期実質GDPを前年同期比▼1.1%、失業率を6%前後と予想している。
23年のコアPCEデフレータ―の上方修正について質問を受けたパウエル議長は、22年のインフレ率上昇によるものだと示唆しようとしたが、不用意にも、一定期間にインフレが鈍化するペースには限界があると、FOMCが考えていることをうかがわせる発言になった。
これは明らかにFOMCがリセッションの可能性を低く見定めているわけで、ミスリードにつながりかねない。
もしくは、市場の「ソフト・リセッション予想と利上げペースの鈍化シナリオによる株先高期待」なる楽観視を打ち消すための意図的リードなのかもしれない。
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(この記事は 2023年1月8日に書かれたものです)
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