日銀の利上げ序曲が始まった
12月20日のタイミングは絶妙だった。
日銀が本気で(すなわち市場機能への影響を無視しても)0.25%を死守する気であれば、日銀は0.25%を守ることは可能だった。
実際、黒田総裁は9月26日の記者会見で
「0.25%の許容上限を引き上げることは、金利引き上げあるいは金融引き締めになるか」
との記者からの質問に対し、
「それはなると思います」
「±0.25%の幅をより広くし、その上の方に行けば明らかに金融緩和の効果を阻害します」
と述べ、0.25%の金利上限を堅持する旨、明確に伝えた。
こうした状況下、市場の「変動幅拡大観測の強さ」を示す指標の一つである「指値オペの出来高」も、10月決定会合から12月決定会合までの期間で2.5兆円と、10月決定会合前(4.7兆円)、9月決定会合前(3.5兆円)に比べるとかなりの減少を示し、すでに投機圧力の低下を示唆していた(6月会合前7.6兆円)。
この観点からみると、今回の金融緩和政策修正のタイミングはベストな選択だった。
従来からの日銀の「0.25%堅持姿勢」が市場からある程度、信認を得ていたところにクリスマス前ということもあって海外の市場が薄くなっていた局面で、政策修正を予測する市場関係者は少なくなっていた。
このほか、円安ドル高が一服していたことを今回の政策修正の背景と指摘する向きもあるが、為替の動きがどこまで影響していたのか、想像の域を超えることはできない。
今次政策修正は政策委員会での満場一致で決められた。
重要なのは、日銀がいつ、どのような形で金融緩和政策修正への意思を固めたか、という点についてである。
今後、「主な意見」「議事要旨」が発表されるが、これらの中で日銀の思考過程が明らかにされることを期待したい。
利上げであることが明らかなゆえ…
国内外金融市場へ大きく影響!
日銀による長期金利の変動幅拡大を受け、10年金利は一時0.487%と、上限の0.5%に接近した(12月21日)あと、足下では日銀の国債買い入れオペが奏功して0.4%台半ばで、頭打ちとなっている。
もっとも、イールドカーブ(利回り曲線)の形状をみると、12月決定会合前にみられた「歪み」は完全には解消したとはいえない。
イールドカーブは、12月決定会合前までは8年・9年が10年金利を上回るという逆イールド状態が出現していたが、変動幅拡大に伴い、10年金利が大きく上昇したことで逆イールドは解消された。
しかし、10年金利だけが不自然に低い状況は続いている。
現状の超長期金利の状況を前提とすると、仮に日銀が10年金利コントロールを全面停止した場合には、10年金利は0.6~0.7%へ上昇する可能性が高い。
今後市場でマイナス金利(政策金利)解除の思惑が強まると、ターム物金利に上昇圧力が強まる結果、10年金利が上限(0.5%)に張り付く状況が生まれ、イールドカーブの歪みが再び拡大する恐れもある。
「12・20黒田ショック」は海外の金利市場にも影響を与えている。
米国10年国債金利が12月19日の3.585%から20日の3.683%(9.8bp=0.098%ポイント)へ、独10年国債も2.203%から2.304%(10.1bp)へそれぞれ上昇した。
この間、両国とも短期金利への影響はほとんど見られなかったので、イールドカーブのスティープ化(利回り曲線の勾配上昇)に寄与したことになる。
つまり、日本の明白な長期金利の上昇が主要国の長期金利に裁定効果として波及したことになる。
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(この記事は 2022年12月28日に書かれたものです)
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