ドイツ経済は正念場なり!
深刻なエネルギー危機に突入
ドイツは夏場以降、深刻なエネルギー問題に巻き込まれている。
8月には猛暑と雨不足によるライン川の水位低下で、石炭などの輸送に支障が生じた。
また、ロシアからのノルド・ストリーム経由での天然ガス供給は、8月末から定期点検に入った後、設備不良などを理由に結局、全面停止状況のまま。
ライン川の水位については、ようやく回復に向かっていて、石炭輸送への影響は一定程度緩和している。
ただ、エネルギー輸入企業の収益悪化懸念が高まっていることは間違いなく、ロシア産天然ガスの主要な買い手だったエネルギー大手のユニパーは、ガス供給の減少によって経営難に陥り、ドイツ政府は約80億ユーロの公的資金を投入して国有化することを決めた。
ドイツは2011年にノルド・ストリームを開通させ、他国を迂回することなく、ロシアから直接、天然ガスを輸入することが可能となった。
その結果、天然ガスのロシア依存度は次第に高まり、2021年には天然ガス輸入全体の約55%を占めた。
政府は、こうした背景からロシアのウクライナ侵攻直後よりエネルギー供給への危機感を強め、様々な対策を講じてきた。
3月には、ガス供給の不足度合いや、貯蔵率の低下による影響など、危機レベルに応じた政府の行動指針を定めた「ガスに関する緊急計画」に基づいて、3段階あるレベルのうちの第1段階である「早期警告」を発令した。
6月には、ロシアが欧州向けの天然ガス供給を輸送能力の40%まで削減したことなどから、政府がエネルギー企業に価格調整を指示することが可能になる第2段階の「警報」レベルに移行している。
ガス供給の混乱が長期にわたって発生することが予想されるほか、公的部門などのガス需要がカバーできないリスクなどが浮上した際に発令される最終段階の「緊急」レベルにはまだ踏み込んでいないものの、最悪の場合には天然ガスを配給制にすることも視野に入れ、市場介入も厭わない姿勢を示している。
また、冬の天然ガス枯渇のリスクに備えて貯蔵率を10月までに85%、11月までに95%とする目標を掲げた。
貯蔵率は、10月当初時点で既に91.8%まで達しており、目標を上回るペースで積み上がっている。
もっとも、仮に貯蔵率を95%まで引き上げたとしても、ロシアからの供給が停止したままだと
需要の2ヵ月半程度しか賄うことができないと指摘されている。
そのため、政府はノルウェーやオランダなどから輸入を増やすほか、9月25日には、UAE(アラブ首長国連邦)とLNG(液化天然ガス)の供給で合意するなど、代替先の確保に奔走している。
また、浮体式のLNGターミナルの稼働を急ぐなど、受け入れ体制の増強も進めている。
天然ガス以外の発電燃料による電力供給も拡大させる見込みである。
ドイツは従来からEU加盟国のなかでも脱炭素化をリードする立場だったが、7月にはCO2排出量の多い石炭発電の拡大を認める法案を可決した。
また、2022年末までに全て稼働停止予定だった原子力発電所も、翌4月まで使用できる状態を維持することを決めた。
2022年前半の電力供給のうち、石炭が占める割合は31.4%と前年同期(27.1%)から上昇した。
今冬にかけては、天然ガス供給のさらなる低下により、石炭による発電量はさらに増加することが予想される。
こうした対応もあって、今冬に天然ガスが枯渇する事態は避けられそうだとの見方もあるが、ロシアが天然ガス供給を再開するとは考えにくいし、厳寒の天候予想もあり見通しは定かでない。
OECD(経済協力開発機構)が9月末に発表した予測によると、ドイツの今年のGDP成長率は1.2%にとどまり、来年はマイナス0.7%に転じるという。
主要先進諸国の中で群を抜いて低迷する見通しだ。
ドイツ銀行のエコノミストは、個人消費や投資、純輸出の縮小により、来年のGDP成長率をマイナス3.5%と極めて厳しい予測をしている。
ドイツの4大シンクタンクも、エネルギー危機を理由に同国のGDP予測を下方修正した。
今春の時点では来年のGDP予測は3.1%だったが、現在の予測はマイナス0.4%と様変わりだ。
ガス不足はいずれ幾分解消されるだろうが、価格は危機前をはるかに上回る水準で推移する
可能性があると警告していて、「これはドイツにとって繁栄の永続的な喪失を意味する」とまで言及している。
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(この記事は 2022年10月18日に書かれたものです)
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