9月FOMC後から市場の流れが変わる?
8月雇用統計とFRBの姿勢
2日発表の米8月雇用統計は力強い内容だったが、9月FOMCでの75bp利上げ確率が決定的に高まったということにはならなかった。
一方で米国の金利先高の構図と日銀の全く変わらぬ金融緩和スタンスからドル円は遂に140円80銭(5日海外)と140円の大台を突破した。
非農業部門雇用者数は+31万5千人(7月+52万6千人)、直近6ヵ月平均は+38万1千人となった。8月の失業率は0.2ポイント上昇して3.7%となったが、これは求職者が増えたことが理由だ。
8月は賃金の伸びも鈍化し、賃金上昇率は6ヵ月ぶりの低水準となった。民間部門の平均時給は前月比+0.3%(年率換算で+3.8%)で、前年同月からの上昇率は5.2%(7月と同じ)だった。
労働参加率(労働力人口に対する就業者と求職者の割合)は8月に上昇しており、賃金上昇のペースが一段と緩やかになれば労働市場の過熱が物価を押し上げるというFRBの懸念は後退する可能性がある。
だが、大きな注目を集めた4-6月期の賃金上昇率をはじめ、これまでに発表された、労働市場の指標は引き続き賃金が急ピッチで上昇していることを示した。
このため、インフレ率をFRBの目標である2%に抑制するには、賃金上昇に急ブレーキをかける必要がある。
したがって、9月FOMCでの利上げ予想(50bpか75bp)自体に変化はないが、セントルイス連銀ブラード総裁は、この発表直後に「3会合連続となる75bpの利上げを支持する」と言明した。
ただ、9月13日には8月の消費者物価指数が控えているし、8月の消費と、経済活動に関するデータが、FOMCの利上げ幅を巡る議論に影響を及ぼす可能性がある。
FRB当事者は、利上げペースを緩める前にインフレ低下と経済成長の減速を示す証拠を確認したいと述べると同時に、今年に入って実施した利上げが米経済に、どのように作用しているのか注視する姿勢も示している。
今年に入り、FRBは合計4回の利上げを行った。これは1990年代初めにフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を主要な金融政策手段として導入して以来、最も速いペースだ。
FRBは7月のFOMCで75bpの利上げを決定し、FF金利の目標レンジを2.25~2.5%に引き上げた。
9月のFOMC(9月20日・21日)における利上げ幅の決定は、パウエル議長がどれほど早急に大幅利上げを実施して、経済活動にブレーキをかけたいと考えているのか左右される。
パウエル議長を支える政策担当補佐の1人であるNY連銀のウィリアムズ総裁は8月30日のインタビューで、インフレを鈍化させるには、来年までFF金利の誘導目標を3.5%超える水準に引き上げ、その水準を維持する必要があるとの考えを明らかにした。
ウィリアム氏は「われわれは常に次回会合で政策行動を調整することができる」とし、「だからこそ、会合での決定は最終的なものではなく、当局者は政策の方向性について熟考している」と述べた。
パウエル議長は8月26日に年次経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で講演し、たとえ労働市場の弱体化を招くとしてもインフレ退治に注目するというFRBの決意を強調した。
一方、今後の金利決定は「入手されるデータと見通しの推移に基づいて総合的に判断する」とも言明した。
ようするに原則論を主張しつつも、やはり状況の変化度合いを重視するという姿勢なのである。決して9月の利上げを75bp中心に想定しているわけではない。
金利先物市場では次回FOMCでの75bp利上げ確率が、シンポジウム前の約4分の3から約3分の2に低下したのは、その点を見定めたからであろう。
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(この記事は 2022年9月6日に書かれたものです)
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