中国経済大幅鈍化リスクを織り込んでいるか!
共産党中央政治局会議
中国共産党の序列1位~25位までの指導部は7月28日、政治局会議を開催。予想外に「見送られた事項」が最大の注目を集めた。
成長押し上げに向けた新たな刺激策、投資と消費に破滅的な打撃を与えているコロナ封鎖の緩和、そして何より重要な不動産市場に対する締め付け解除について、何も決定されなかったことだ。それどころか、中国指導部は今年の成長目標について、事実上の撤回に動いた。
秋に異例の3期目続投を目指す習近平総書記にとって政治的に重大な年に、中国経済が直面する逆風を暗に認めたと言えそうだ。
2008年の世界的な金融危機時とは異なり、中国当局が強力な刺激策を打ち出すとみるエコノミストはほとんどいない。
指導部はここ数カ月にわたり、景気押し上げに向けた与信拡大対策を繰り返し見送り、むしろ財政、金融面で規律を維持する自国の方針を、折りに触れ西側の「放漫ぶり」と対比する材料にしてきた。
とはいえ、政治局会議で打ち出された措置は、すでに切り下がっていた予想にも届かない内容だった。地方政府を支える特別債券の新規発行枠の発表もなく、地方政府が将来の発行枠を前倒しで使うことも認めなかった。
中国がバズーカ砲級の大型景気対策に二の足を踏む背景には、複数の要因がありそうだ。
まず、習氏の政治的な立場が十分に安定している範中のため、景気刺激策というアメを与えることなく、構造改革というムチに耐えられると読んでいるフシがある。通常なら刺激策で経済を潤す党大会を控えたタイミングであってもだ。
西側のインフレ高進や成長減速が世界経済の先行きを脅かす中で、下振れリスクに備えて刺激策を温存したほうがいいと考えているのかもしれない。
また、習氏が厳格なコロナ封じ込め対策を堅持していることを踏まえると、3月に設定した約5.5%の成長目標はもはや現実的ではないと指導部が認識を変えた可能性も高い。
習氏はここに来てコロナ感染による死者を防ぐことが、成長押し上げよりも国民政策として重要だとの考えを強調しており、自身のアプローチは中国の統治モデルが他国よりも優れていることを映し出しているともいえよう。
米国経済がリセッション入りの瀬戸際に追い込まれる中、コロナで急減速したとはいえ、中国成長率は大型の刺激策を打ち出さずとも、なお米国を上回る可能性が高い。これは成長率で米国に抜かれないことを至上命題とする習氏の要求とも一致する。
さらに重要なことに、景気浮揚にまい進すれば、経済における行き過ぎの排除と、金融安定という、習氏の長期的な取り組みを損ないかねないとみられている。
そのため、政治的に重要な移行期間において指導部が好景気を求めるという従来の慣例は、今年については当てはまらないかもしれない。
苦しくなってきた台所事情
中国は過去20年間、景気減速の兆候が少しでもあれば大規模な政府支出が行われると、世界の企業や市場が期待するように仕向けてきた。
しかし現在、成長が著しく鈍化する中、中国政府は低迷する経済をテコ入れするために小規模な対策しか取っていない。
中国人民銀行は8月15日、2つの主要政策金利を引き下げた。新たな指標で7月に一連の経済活動が鈍化したことが示されたのを受けた措置だ。
米国と異なり、中国では金利の持つ効果は限定的であって、エコノミストらは今回の利下げが消費者や企業の借り入れを促進する効果はほとんどないと分析している。
世界No.2の規模を持つ中国経済は、秋(10月か)の共産党大会を前に逆風に直面していることは間違いないだけに、裏事情があるのではないか。
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(この記事は 2022年8月21日に書かれたものです)
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