中露の連携強化と日本の安全保障
プーチンのプレゼンスを侮るべからず
7月22日に公表された「令和4年版防衛白書」に「中露両国は、日本周辺でも繰り返している艦艇や、軍用機の共同行動に関する協力強化で合意しており、一方による侵略行為を他方が容認するかのような関係をもたらしうる」との指摘が明記された。
2021年夏のアフガニスタン問題(アフガンからの米軍撤退及びタリバン勢力の捲土重来)、2022年1月のカザフスタン問題(トカエフ政権への反政府行動激化)など、中央ユーラシア地域の安定に関わる重大な事案が次々と浮上するなか、ロシアと中国の関係が明らかに変貌してきた。
2021年を通じて、露中善隣友好協力条約の更新が正式に発表され、2022年2月の北京オリンピック開幕式には、プーチン大統領が出席するなど、露中関係は友好一色に見える。
政治だけでなく、経済の面でも露中間の2021年の貿易額は、年末を待たずに前年実績を上回るペースとなった。
このように露中間の協力関係が政治、経済の両面で進展していることは一見して明らかだが、そのことはしばしば言われるように、ロシアが中国の格下のパートナーないし、「衛星国」に成り下がることを意味しているわけではない。
結論から言えば、両国の協力関係はますます深化すると同時に、ロシアのプレゼンスが高まっているように思われる。
だからこそ、米国がウクライナ戦争での第一義的達成目標として、「ロシアの国力喪失」を掲げているわけで、長期戦に持ち込むことで二正面戦略(対NATOとアジアでの覇権強化)でのロシアの力を分散させる狙いがある。
露中関係では、経済的には中国がはるかに巨大であるにもかかわらず、ロシアはあくまで独立した立場を維持し、中国の格下のパートナーに成り下がらないでいるという特徴がある。
一帯一路構想に関して言えば、中国の掲げる「シルクロード経済ベルト」と、ロシア率いる「ユーラシア経済同盟」(EAEU)が連携するという認識のもと、ロシアは中国と対等なパートナーとして振る舞ってきた。
また2020年に再燃した中印国境紛争においては、ロシアは両国の調停者の役回りを果たした。
2021年に入ってからも、5月に中国との原子力協力の面で、中国の原発にロシア製原子炉4基を設置する記念式典がオンラインで執り行われ、プーチンと習近平が立ち会った。
ロシアは米中間のデカップリングに対し、中国に援助の手を差し伸べることで、支援者としての一面を見せた。
北京オリンピックについても、プーチンは開幕式への出席を表明することで、西側の外交ボイコットを横目に中国のよき理解者としての姿勢を示してきた。
こうした両国の力関係における変化のなかで、日本は自国の安全保障をどう組み立てるべきなのであろうか。
露中の共同戦略とは
プーチンは今年2月24日、隣国ウクライナに対する全面的な侵略戦争を開始した。
安保理常任理事国でもあるロシアによる、この明らかな軍事侵攻は、主権と領土の一体性の尊重や、武力による現状変更への反対などを支柱とする既存の国際秩序に対するあからさまな挑戦であり、国際社会による強い非難を招いている。
国連総会では、ロシアによるウクライナ侵攻を非難する決議が、141ヵ国の賛成を得て採択された。
日本を含め多くの民主主義国はロシアに対する強力な制裁を行い、NATO諸国はウクライナに対する大規模な軍事支援を実行し、国際秩序を破壊するロシアによる行為に対抗している。
他方、ロシアと同じく安保理常任理事国である中国は、ロシアによる侵略行為を一切非難することなく、ロシアの立場を擁護する姿勢を貫いている。
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(この記事は 2022年7月24日に書かれたものです)
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