野党不在の日本の政治体制に
水面下で続いた自・国協議
3月22日、2022年度の当初予算が参院本会議で成立した。採決では自民、公明両党に加え、国民民主党が賛成票を投じた。現行憲法下では3番目というスピード成立となった。
参院本会議では国民民主の礒崎政調会長代理が賛成討議を行い、同党議員が白票(賛成票)を投じるたびに与党席から大きな拍手が議場に響き渡った。
災害対策などが含まれる補正予算に野党が賛成するケースはある。だが一年間の政権運営の基本方針となる当初予算に賛成するのは極めて異例だ。国民民主党が予算案に賛成する方針を決めたのはその1カ月前、衆院採決の時点だった。
立民党以下の各野党は強烈な批判を浴びせたが、玉木代表は、「与党も野党も既存の考え方を乗り越えて政策を実現していくべきだ。そうでなければ国民不在になってしまう」と反論した。
国民民主の動きは予算審議の中で急浮上したかのように見える。しかし、実際には水面下での自民党との長い調整があった。予算への賛成はそれが初めて表舞台に現れたものだ。
そしてその動きは「野党の存在意義は何か」という議論を巻き戻すことになる。なぜ国民民主は当初予算に賛成したのか。そして自民党の狙いは何なのか…
自民党幹部によると、国民民主との接触は自民党から持ちかけたものだ。それは安倍政権時代に始まり、20年9月の菅政権発足後に本格化したという。
「これから衆院選と参院選がある。何が起きても大丈夫なように準備をしておくべきだ」。
動いたのは菅首相側近の佐藤勉総務会長らだ。佐藤氏は党の国対委員長や衆院議員運営委員長を長く務め、野党に太いパイプを持つ。玉木氏や古川元久国対委員長ら国民民主の主要幹部と接触を重ね、連携の基盤を築いていった。
菅内閣の支持率が低迷し衆院選で自民党の単独過半数割れの可能性が予測される情勢になると、某自民党幹部は連合関係者にも「何とか国民民主をこちら側に持ってこれないか」と、
働き掛けていた。
ところが菅首相は突然退陣し、岸田首相の下で行われた衆院選で自民、公明両党は絶対安定多数の議席を維持し、国民民主と連携する必要性は消えた。
佐藤氏も総務会長を外れ、無役の一議員となってしまった。自・国連携の動きは一旦途切れたかのように見えた。
しかし、衆院選で「対決より解決」と、政策実現を掲げて議員数を増やした国民民主側には連携指向が残っていた。
衆院選後の特別国会での首相指名選挙では岸田氏に投票する案まで浮上したという。自民党側の司令塔は麻生太郎副総裁に代わり、麻生-古川、茂木幹事長-玉木のラインで協議は続けられた。自民党は同時進行で国民民主の支援組織・連合へのアプローチも強めていった。
衆院選の直前に就任した連合初の女性会長=芳野友子氏は「連合の考え方は共産党の考えと相容れません」と明言し、共産党を含む野党共闘に異を唱えた。
自民党で団体・組織対策を担う小渕愛子組織運動本部長は、その芳野氏と昨年末から会食を重ねた。そして年明けの1月5日、連合の新年交歓会に岸田首相が出席した。
首相の出席は2013年の安倍首相以来9年ぶり。岸田首相は「経済の再生、外交・安全保障といったさまざまな課題に立ち向かっていくには、何よりも政治の安定が重要です。
参院選でもぜひ政治の安定という観点からわれわれ与党にも貴重なご理解と協力を賜りたい」と、公然と連合に協力を呼び掛けた。連合側もこれに応えた。
2月17日に決定した参院選の基本方針は、「人物重視・候補者本位で臨む」として支援する政党を明示せず、立民や国民民主とは政策実現に向けて「連携を図る」と、盛り込むにとどめる異例の対応となった。
事実上、自民党候補の支援も容認することになる。同時に、共産党を念頭に「目的や基本政策が大きく異なる政党と連携・協力する候補者を推薦しない」と、野党共闘にクギを刺したのである。
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(この記事は 2022年05月29日に書かれたものです)
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