景気軟着陸はナローパスと捉えるFRB
5月5日からの米国市場の動揺
FOMC(5月3・4日)後から米国市場と国際金融・外為市場が大きく揺れ始めた。
一言で言うと一気に米国のリセッションもしくは、スタグフレーション懸念が広がったということである。そのことは9日に発表されたFRBの半期に一度の「金融安定報告」で如実に示唆されている。
一部の指標によれば、発行間もない現物の米国財務省証券と株価指数先物の市場では、流動性が2021年終盤以降に低下してきた。
最近の流動性の状況悪化は過去の一部の事例ほど極端ではないものの、突然の大幅な悪化のリスクは通常よりも高いと見受けられる。
また、それに加え、ロシアによるウクライナ侵攻以来、原油先物市場では時々、流動性に幾分、逼迫が見られる一方、その他の影響を受けた一部の商品市場は顕著な機能不全に陥っている。
米国での高インフレと金利上昇は国内経済活動や資産価格、信用の質、金融状況全般にマイナスの影響を及ぼす恐れがある。米住宅のバリエーションの高まりを踏まえれば、特にショックに敏感である可能性がある。
FRBブレイナード副議長(金融市場の管理・監督領域担当)は、この発表に合わせた声明で、ウクライナでの戦争が引き金となって商品市場では大幅な価格変動や証拠金請求の動きが生じるとともに、大手金融機関が波及効果にさらされるかもしれない潜在的な経路が浮き彫りとなった。
金融安定の観点から見ると、参加者の大部分は関連清算機関のメンバーである大手銀行もしくはブローカーディーラーを通じて商品先物市場にアクセスしているため、顧客が異例の高額証拠金請求に直面した場合、これらの清算機関メンバーもリスクにさらされる。
連邦準備制度(FRB)は国内および国際的な規制当局と協力して、商品市場参加者のエクスポージャーと中核的な金融システムとのリンクについて、理解を深めていると伝えた。
ようするにFRBはピッチの速い利上げとQT(バランスシート縮小)を実施するが、リセッションや過剰流動性の収縮への懸念を強める実態=市場からのリスクマネー撤退も、予想されるゆえ、しっかりと市場の安定性を図っていく、ということである。
言い方を代えると、FRBはリセッションや市場の一定の動揺をも覚悟の上で、インフレ抑制を第一とした金融引き締めに出動するとの「戦闘宣言」とも解釈できる。
FOMC以降、米国10年債利回りは9日に一時3.20%まで上昇。これを受けドル円も131円34銭までドル高が進行。
米国株式市場は5月4日からのわずか3営業日でダウ平均はマイナス5%強、S&P500指数マイナス7%強、ナスダック平均についてはマイナス10%強と暴落の様相。
商品市況(CRBインデックス)もマイナス5%弱、WTI原油先物もマイナス4%強。
景気の大幅鈍化もしくはリセッションの織り込みを始めたかの状況にある。
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(この記事は 2022年5月12日に書かれたものです)
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