米債務上限引き上げ問題が再燃か?
米債務上限引き上げの期限は今年夏場頃か?
1年半前の2023年6月1日、米連邦議会は、同月5日に米国債が債務不履行に陥るとされることを念頭に連邦債務の上限を停止する「財政責任法案」を可決した。
この結果、連邦政府の債務借入残高の上限(31.4兆ドル)の適用が2025年1月1日まで停止され、国防費以外の支出は、ほぼ現在の水準に据え置かれることになった。
そして、この1月2日、再び債務残高に基づいた債務限度額が設定され、新たに債務上限の引き上げ、もしくは停止などの措置が取られるまでの間、債務残高の増加を伴う国債発行が不可能となった。
この間、政府機関は新たに運営資金を得ることができないため、手持ちの現金や、財務省による「非常手段(Extraordinary easures)」と呼ばれる措置による資金調達に依存して運営していくこととなる。これらの資金も尽きた場合には、政府閉鎖に追い込まれる。
具体的に「非常手段」というのは、連邦職員年金のために運用されている基金への再投資や為替安定化基金への投資などを停止し、その資金を政府機関の運営に充てる措置を指す。
これにより、通常、数か月程度、政府機関の運営を継続することが可能となる。
2025年1月1日時点での米財務省の現金保有残高は約7,000億ドルで、また、連邦信託基金が保有する証券の償還が予定され、債務残高は1月2日に540億ドル減少する見込みだ。
こうしたことから、財務省には一時的な猶予が与えられている。
しかし、イエレン米財務長官によると、余裕分も1月14日から23日にかけて使い果たされる可能性が高い。その時点で財務省「非常手段」に頼らざるをえなくなる。
債務上限引き上げに関する最終的な期限は今年7~8月頃になると試算されている。
トリプルレッドながら、下院は両党の議席拮抗し、トランプ氏の意向は共和党議員すべてに及んでいないため、法案通過は必ずしも容易でない
もちろん、それまでに米議会が債務上限引き上げに同意すれば、問題はない。
昨年11月の選挙で、大統領、上院、下院をすべて共和党が制するトリプルレッドの状況になったことから、当初、議会は債務上限など簡単に引き上げられるだろうとの楽観的な見方が多かった。
しかし、現実はそう簡単ではなかった。特に、下院で民主、共和両党の議席が拮抗している点が問題になっている。連邦議会の下院勢力図をみると、共和党が219議席、民主党が215議席だ。
確かに、共和党が過半数を制するものの、過去100年近くで最も僅差となっている。
通常、行われているように、野党である民主党は、債務上限引き上げ問題を、税や歳出に関する広範な交渉に利用すべく、債務上限引き上げに反対するだろう。
現在の勢力図では、共和党議員の大多数が債務上限引き上げに賛成しても、民主党議員全員が反対し、共和党からわずか3人の造反者が出れば、債務上限引き上げ法案が否決されることになる。
実際、すでにこうした造反による問題が表面化している。昨年末には、25年度予算案が通過しないなかで、政府機関閉鎖を回避するため、3月中旬までの予算を確保する「つなぎ予算案」が否決された。
同「つなぎ予算案」には、連邦債務上限を2年間停止する(1月1日までとされていた上限の停止期間を2年間延長する)内容が含まれており、トランプ次期大統領が支持を表明していた。
同案が否決されたのは、ほぼ全員の民主党議員が反対票を投じ、38人の共和党議員が造反したためだ。
その後、ギリギリのタイミングで、債務上限停止などの内容が含まれず、単に、3月中旬までの予算を確保するだけのためのつなぎ予算が可決された。
結局、トランプ氏の意向が必ずしも共和党議員すべてに及ばないことが明らかになった。
また、年初には、米下院で現職のジョンソン議長再選でも壁にぶつかった。ジョンソン議長再選に当たって、ジョンソン議長は民主党に妥協的だとして、共和党保守強硬派3名が造反し、僅差ながら同氏の再選案は当初否決された。
トランプ氏の説得などにより、その後、辛うじてジョンソン議長再選が決まったが、今後も米議会は立法や財政問題で困難な状況に直面する可能性があることを窺わせる事件になった。
トリプルレッドの成立により、トランプ政権において、容易に減税や財政支出拡大などの景気刺激的な財政政策をとることができるとの見方があったが、実際にはそうではなさそうだ。
また、トリプルレッドだからと言って、必ずしも、債務上限問題が容易に解消されるわけでないことも明らかになった。
財務省の資金が尽きる時間との闘いの中で、債務上限引き上げを巡り、今後、与野党間で激しい攻防が繰り広げられる見通しだ。
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2025/1/6の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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