FEDの追加利下げは早くて来年後半以降か
FOMCは来年の利下げ回数を2回に削減
12月17~18日のFOMCはFF金利の誘導目標を4.5~4.75%から4.25~4.5%へと、0.25%ポイント引き下げることを決めた。9月会合(5.25~5.5%→4.75~5.0%)、11月会合(4.75~5.0%→4.5~4.75%)に続く3会合連続の利下げとなった。
だが、利下げにもかかわらず、10年国債利回りなど長期金利は大きく上昇し、つれて株価も急落した。
前々回9月FOMC時点でのFF金利の見通しは24年末4.375%で25年末3.375%だった。0.25%刻みの利下げであれば、25年中に4回の利下げが実施されることになっていた。
しかし、今回12月FOMCではFF金利は予想通り4.375%に引き下げられたが、25年末の予想は3.875%となった。つまり、25年中の利下げはわずか2回にとどまる見通しとなった。これが長期金利を押し上げ、株価を急落させる直接の原因になった。
だが、こうした混乱が起きたのは、もとはと言えば、今年後半以降、FEDが何が何でも利下げという方向を貫き、その意向を市場が信じていたのに、その信頼が裏切られることになったためだ。
景気悪化懸念のなか、9月FOMCで中立金利に向けて利下げしていくという方向性が示されていたが…
昨年末からのFOMCの経済・物価・金利見通しを時系列で振り返ってみよう(表1参照)。
昨年12月FOMCの見通しは、GDP成長率が24年1.4%、25年1.8%と23年実績の3.2%から減速し、それによってインフレ(コアPCEデフレータ―)も24年2.4%、25年2.2%と目標の2%に近づくという、いわば「ソフトランディング・シナリオ」だった。
昨年12月時点ではFF金利は5.375%に引き上げられていたが、景気減速、インフレ沈静化により、24年末4.625%、25年末3.625%と順調に引き下げていくことが可能になるという予想だった。
しかし、今年3月から6月にかけての経済・物価見通しでは、成長率、インフレ率が上方修正され、FF金利の引き下げも遠のいた。
GDP成長率見通しは、24、25年にかけて2.0~2.1%程度の成長が続く見通しとなり、FOMCが長期の成長率見通し(≒潜在成長率)と考えている1.8%を上回る予想になった。そうなれば、当然、物価沈静化は見込めなくなる。
実際、コアPCEデフレータの見通しは6月FOMC時点にかけて徐々に上方修正され、6月時点では24年末が2.8%と目標の2%をかなり上回ることになった。25年末になって2.3%とようやく目標に近づくという見通しになった。つれて、金利見通しも変わった。
6月FOMC時点でのFF金利は5.375%だったが、6月FOMCでは、24年末にかけて0.25%ポイントだけ引き下げられ、5.125%になり、25年中に1%ポイント引き下げられて、4.125%になるという見通しになった。
だが、今年後半以降、今回12月にかけてのFOMC見通しをみると、それ以前までの経済・物価見通しとFF金利見通しが整合的でなくなっていった。確かに、9月FOMCでは、失業率の上昇予想にみられるように、一時的に、雇用の悪化が懸念される状況になった。
そうした雇用状況の悪化に対応した緊急利下げ(5.375→4.875%)が9月FOMCで決まった。そして、この9月FOMCでは、24年末にかけてFF金利を0.5%ポイント(4.875→4.375%)、25年末にかけてさらに1%ポイント(4.375→3.375%)と引き下げていくという姿勢が提示された。
9月FOMCでは長期のFF金利見通しとして2.9%という数字が示されていた。FOMCメンバーが示す長期のFF金利見通しは「中立金利」とされる。中立金利というのは、インフレにもデフレにもならない金利水準のことだ。FEDはこの中立金利に向けて、高く引き上げられていたFF金利を引き下げていくはずだと、市場も予想した。
ところが、2%を上回る成長が続くなかで、雇用状況は改善し、失業率は思ったほど上昇しなかった。
今回12月の見通しをみると、GDPは2.5%と潜在成長率をはるかに上回るものとなり、24年末時点の失業率予想も9月の4.4%から今回は4.2%と下方修正された。コアPCEデフレータ―の予想は24年末2.8%、25年末2.5%となり、25年末でも目標達成とは言いにくい見通しとなった。
こうした状況では、今回の利下げは本来、実施すべきではなかったのではないだろうか。
しかし、FEDとしては、9月時点で決定した「中立金利に比べ高水準にあるFF金利を中立金利に向けて引き下げていく」という姿勢を簡単に覆すことはできない。
また、利下げがほぼ織り込まれていた市場の期待を裏切ることもできなかった。そうした不自然な利下げが、長期金利上昇などの混乱を生んだと考えられる。
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2024/12/23の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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