矢継ぎ早の対策で中国経済の復活は可能か?
中国経済の低迷深刻化に対する習近平政権の焦りが一連の対策に
中国政府は景気テコ入れ策を矢継ぎ早に打ち出している。
7月25日には、すでに、家電や自動車の買い替えの際の補助金が拡充されていた。ここでは、家電買い替えの際の補助金が増額(従来の10%上限から15%上限へ引き上げ)された。
自動車については、ガソリン車の場合、7,000元から1万5,000元に、EV(電気自動車)の場合、1万元から2万元に補助金が増額された。
ここへきて、相次いて、さらなる景気テコ入れ策が発表されている。9月27日には、同月24日に事前予告していた通り、以下の通りの、新たな金融緩和措置が打ち出された。
ちなみに、人民銀行総裁が政策を事前に「予告」するのは異例のことだ。
- 主要短期金利である7日物リバースレポ金利を1.7%から1.5%へ引き下げ
- 預金準備率の0.5%ポイント引き下げ
(これにより銀行は1兆元相当の新規融資が可能となる計算) - 住宅市場テコ入れ策として、
1)融資済みの住宅ローン金利を新規住宅ローン金利と同程度に引き下げ
2)住宅ローンの頭金の割合を引き下げ
(従来の2軒目「25%以上」から1件目の割合と同じ「15%以上」に)
3)国有企業による住宅在庫買い入れ促進策拡充など - 株価対策として、証券会社、ファンド会社、保険会社が
人民銀行から借り入れた資金で株価を購入できるように、
中央銀行が関与する形で株価の支えるためのスワップファシリティを創設
また、ロイターによれば、中国財政省が、今年約2兆元相当の特別国債を発行する予定と報道されている。
うち1兆元は、家計への支援(消費財の買い替えに対する補助金の増額のほか2人目以降の子どもに対する1人当たり毎月800元支給)、残りの1兆元は地方政府の債務問題解決を支援するため使われると伝えられている。
さらに、ブルームバーグによれば、大手国有銀行に最大1兆元の資本注入も検討されている。
以上のように、ここへきて矢継ぎ早で景気対策が発表されているのは、中国経済悪化に対する習近平政権の焦りの表れと言ってもいいだろう。
先月の筆者の当レポート「原油安は世界景気後退を見越した動きか?」で述べたが、IEAによれば、中国の原油需要は今年4月から7月にかけ4か月連続で前年水準を割り込んで推移したとされる。
https://real-int.jp/articles/2652/
公式発表によれば、中国の実質GDP成長率は、4~6月前年比4.7%と1~3月の同5.3%から伸びがやや鈍化した。
だが、中国の原油需要が前年比減少していることは、経済活動がそれだけ落ち込んでいることを示す。ちなみに、2016年~19年の3年間で中国の実質GDPは年率6.5%増加し、同期間の中国の原油需要は年率4.5%増加していた。
そこから「原油需要の増加率に比べ経済成長率が約2%ポイント高い」という関係があることがわかるが、その関係を現在に当てはめると、原油需要の伸びがゼロだとすれば、実質GDPの伸びは2%程度になる。
公式発表に比べ、中国経済の実態は相当悪いとみていい。
中国人民銀行による株価下支え策で株価は上昇したが…
こうした状況に警戒感を深めた習近平政権が、今年の成長率目標である「5%前後」を実現するために、慌ててとった措置が今回の一連の景気テコ入れ策だったと考えられる。
確かに、中国の株式市場はこれらの対策を好感した。
上海株価指数は2021年9月のピーク水準から今年9月にかけ、27%下落していたが、9月13日を底に反発し、27日現在、約14%上昇した。
だが、株価の反発は、バリュエーションからみて株価が非常に割安の水準にまで売られていたこと、中央銀行による直接的な株価下支え策が新たに打ち出されてこと、が原因とみられる。
必ずしも、この株価の反発が実体経済の回復を予想したものではないと考えられ、だとすれば、株価の反発は一時的なものになる可能性がある。
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続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2024/9/30の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。