国債買い入れ減額決定の真意は?
買い入れ減額決定の目的は長期金利の自由な価格形成促進のため?
日銀は6月13~14日の金融政策決定会合で、国債の買い入れを減額していく方針を決定した。目的は「金融市場における(長期金利の)自由な価格形成を促進していく」ためとされる。
減額の規模やペースについては、次回会合で決定する。次回会合までに、債券市場参加者会合を開き、銀行や証券会社などの実務担当者の意見を聞いたうえで、次回会合で、今後1~2年程度の具体的な減額計画を決定し、すみやかに減額を行うという予定になる。
減額規模について、植田総裁は「減額する以上、ほんのわずかしか減額しないことではない」とし、「相応の規模」の減額になると述べた。
植田総裁は「(日銀が)フローで買う量をどこまで減らしていけるか
というコミュニケーションをしていきたい」「(日銀による国債購入の)金融政策的な色彩はなしか、極めて最小化させたうえで運営していきたい」と述べた。
できる限り購入額を減らしていきたいという意図のようだ。
日銀の国債購入金額は現在6兆円程度だ。日銀保有国債の償還金額も月6兆円程度であるため、現在の6兆円購入はストックとしての日銀の国債保有金額(現在600兆円弱)をほぼ一定に保つものになる。
ストックとしてみれば、日銀の国債購入の限界的な緩和効果はなくなっているとみられる。
だが、フローの国債発行市場をみた場合、月間の国債発行額(財務省計画によれば6年度の新規国債発行額は35兆円、借換債発行額は136兆円で、計171兆円)は14兆円程度だ。
国債発行市場では、14兆円のうち6兆円を日銀が購入していることになり、国債発行市場での日銀の影響力はなお極めて大きい。日銀には、この影響力の大きさが自由な価格形成力を阻害しているという問題意識があるようだ。
つまり、国債発行市場における日銀の国債大量購入が、国債発行利回りをあるべき水準に比べて低い水準にしているという問題意識である。
ただ、日銀が国債購入を減額すれば、日銀の保有国債は減額分だけ減る。仮に、6兆円の購入額を5兆円にした場合、日銀の保有国債は月1兆円減少、年間で12兆円減少する計算になる。
したがって、今回の日銀の国債購入減額は、国債発行市場での日銀の大きすぎる存在感を少なくするためのものだが、ストックとしての日銀の国債保有額が減っていくという意味では事実上のQT(量的引き締め)になる。
国債購入減額に円安牽制効果を期待するのはそもそも無理だった
「より自由な価格形成のために国債購入額を減らす」という、今回の決定は理屈に合った政策といえるが、市場の反応は好意的なものとは言えなかった。
市場は円安を牽制するために、日銀が何らかの政策を打ち出してくれるのではないかと期待しており、日銀が国債購入減額に踏み切ることで円安に歯止めがかかることを期待していた。
しかし、減額の方針が決定されたものの、具体的な計画が先送りされたため、今回の決定は円安を牽制するものにならなかった。
債券市場参加者会合を開き、銀行や証券会社などの実務担当者の意見を聞いたうえで政策を決定するという、「異例の」「丁寧過ぎる」対応に、金融市場関係者はフラストレーションを感じたようだ。
植田総裁の記者会見でも、多くの記者の質問は「なぜ、具体的な計画決定は次回会合なのか」についてだった。
確かに、円安牽制のために日銀が国債購入を減額してくれると予想していた市場関係者からみると、今回の決定は全く不十分なものだった。
だが、そもそも円安牽制の役割を日銀に期待するのは難しい。
植田総裁は、前回4月会合時の記者会見でも、「金融政策は為替レートを直接コントロールするものではない」「為替レートの変動は経済・物価に影響を及ぼす重要な要因のひとつであり、(円安が)基調的な物価上昇率に無視しえない影響が発生するようであれば、金融政策上の考慮あるいは判断材料となる」と述べていた。
前回会合後の記者会見で、植田総裁は、「追加利上げを見送ったというのは円安の(基調的な物価上昇率への)影響が無視できる範囲とみているのか」と問われ、植田総裁は「はい」と答えた。これが、円安無視=円安容認と捉えられ、一部から非難を浴びた。
今回は、以下のように述べ、言葉のうえで、円安警戒の姿勢を示した。
「企業の賃金・価格設定行動が積極化するもので、過去に比べると為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている」
「最近の円安の動きは物価の上振れ要因であり、政策運営上、十分に注視している」
だが、具体的な計画を先送りしたことは、一部から、市場とのコミュニケーションに問題がある、あるいは、時間稼ぎなのではないか、との指摘を受けている。
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2024/6/17の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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