パウエル議長の「なにがなんでも利下げ」の姿勢は「謎」
パウエルFRB議長は「なにがなんでも利下げ」の姿勢
3月18~19日のFOMCでは、昨年12月以降にみられた、前のめりの利下げ姿勢が維持されていることが確認された。
1月の物価が前月比で大きく上昇したことは「季節調整の問題」だとし、2月も続けて高めの上昇になったことについては「インフレの道筋におけるバンプ」と指摘した。
「この2か月のデータに過剰反応するつもりはない」「インフレ抑制に向けた良好な進展は続いている」と述べ、昨年後半以降のディスインフレ傾向が続いているとの見方を示した。
パウエルFRB議長は、コロナ禍で2021年以降、物価の前月比上昇率が急速に加速し始めた頃、「物価高はベース効果(前年の下落の反動)によるもの」という、意味不明の主張を続け、インフレが加速するなかでゼロ金利政策を続けた。
インフレへの反発を強めた米国民の世論の高まりに呼応して、バイデン大統領が物価高への警戒を強め始めたことを受けて、FEDが金融引き締めを開始したのは22年に入ってからだった。
パウエル議長には、このように、変化し始めたデータの動きを無視し、インフレ対応で後手に回った前歴がある。
「なにがなんでも利下げ」というスタンスにもみえ、6月利下げが既定路線になっているようにもみえる。
今年は「インフレ鈍化一服する」というのがFOMCメンバーの予想
FOMCメンバーの予想(中央値)をみると、24年10~12月の実質GDP前年比は2.1%と前回昨年12月時予想の1.4%から上方修正され、また、24年末の失業率は4.0%と前回12月時予想の4.1%から下方修正された。
昨年12月時には米国経済の成長テンポが減速すると予想されていたが、今回は景気減速はなく、ほぼ巡航速度の成長が続き、失業率も直近2月実績である3.9%から、ほとんど上昇しないという予想に変わった。
そして、インフレ予想は上昇修正された。
24年末のPCEデフレータの前年比予想は2.4%で前回昨年12月時と同じだった。エネルギー、食品を除くコアPCEデフレータの前年比予想は2.6%と前回昨年12月時の2.4%から上方修正された。
1月のPCEデフレータの前年比は2.4%であり、年末までこの水準が変わらないことになる。
また、1月のコアPCEデフレータの前年比は2.8%で、今後、約1年かけて前年比上昇率は0.2%しか鈍化しないという見通しになった。
パウエルFRB議長は記者会見で「インフレ抑制に向けた良好な進展は続いている」とし、「利下げに踏み切る前にインフレが持続的に鈍化しているという確信を強める必要」「時間をかけインフレを2%に低下させることに強くコミットする」と述べた。
だが、PCEデフレータについては1月実績の2.4%から今年末も2.4%と変わらない。コアPCEデフレータについては1月実績の2.8%から今年末2.6%と0.2%ポイント低下するにすぎない。
この数値を素直に読めば、今年のインフレ動向は「ここまで順調に鈍化してきたインフレ鈍化が一服した」、あるいは、「ディスインフレが進まなくなった」という印象を与えることになるだろう。
だとすれば、パウエル議長が利下げの条件だと述べている「インフレが持続的に鈍化しているという確信」は得られないだろうし、目標の2%に向けてインフレが鈍化していることを示す動きにはならない。
にも関わらず、FOMCメンバーの24年末FF金利予想(中央値)は4.625%と前回12月時点の予想と同じで、年内に0.25%の利下げが3回の予想されていることになる。
その際、6月、9月、12月のFOMC会合での利下げ実施になるのではないかとされている。
予想分布をみると、メンバー19名のうち、現在の5.375%のままが2名、5.125%が2名、4.875%が5名、4.625%が最多数の9名4.375%が1名だった。
4.625%予想が9名と多かったのは、おそらくはパウエル議長を含むFRB理事7名が4.625%と予想したからではないかとみられる。
利下げ論の根拠となる中立金利の水準ははっきりしない
利下げが必要との理屈付けは、少なくとも二点ある。
一つは、現在のFF金利(5.375%)が「中立金利」とされる「長期(Longer Run)のFF金利予想(今回の予想は2.6%)」を2.8%ポイントと大幅に上回り、これが強力な引き締めを意味しているため、それを是正しなければいけないという点だ。
だが、この見方には技術的な問題がある。
・・・
続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2024/3/25の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
関連記事
https://real-int.jp/articles/2489/
https://real-int.jp/articles/2490/