米国の一人勝ちが続く世界経済
米国経済は予想外の高成長、ユーロ圏は予想外の停滞が続く
IMF”World Economic Outlook”(24年1月予想)によれば、世界のGDP成長率は2022年(暦年平均)の3.5%から23年に3.1%に減速したもようだ。
だが、24年は3.1%と23年と同水準の成長となり、翌25年には3.2%とわずかながら上向くと予想されている。
この数字の動きだけをみると、世界経済は緩やかながら安定した成長を続け、25年以降は尻上がりに上向いていく、という姿が描かれているようにみえる。
だが、このところの先進各国・地域の経済状況をみると、安定した成長を続けているところなど、どこにもない。
通常、上述した、ヘッドラインで発表される暦年平均の数字は、例えば、前年の後半に経済が上向いた場合に、当該年の成長率の数字が高く出るなど、いわゆる「ゲタ」の影響がでる。
そのため、暦年平均の数字は、当該年の経済動向を表わさない場合がある。各年10~12月の前年比成長率の動きの方が、当該年の経済動向を端的に表わすため、その数字をみた方が良い。
そこで、表1は、世界及び各地域の23年10~12月、24年10~12月の前年比成長率の動きをみたもので、IMFが付属表として発表している数字だ。
事前予想値を含めた予想・推計値を時系列で追っていくと、世界及び各地域の経済の動きについてやや違う姿が浮かび上がってくる。
2023年10~12月の世界の成長率については、23年4月、7月、10月時点のIMFの予想値は2.9%だったが、今回24年1月の予想は3.1%に上方修正された。
2023年の世界経済は3か月前に予想されていたより、良かったことになる。翌2024年10~12月の成長率については、昨年7月時点の予想が2.9%だったが、10月に3.1%と上方修正され、今回1月はそのまま3.1%に据え置かれた。
昨年10月から今年1月にかけての大きな変化は、23年の成長率が上方修正されたことだ。そして、地域別の動きにみると、上方修正の主因は、米国が1.9%から2.9%へと大幅に上方修正されたことだということがわかる。
中国も4.9%から5.4%に上方修正されたが、数値の信頼性は薄く、中国経済がこの3か月間で良くなっているとは思えない。
これに対して、ユーロ圏は昨年10月時点の0.7%から今年1月は0.2%に下方修正され、日本も2.1%から1.4%に下方修正された。
結局、この3か月間の世界経済の動きをみると、米国が予想外の急成長を遂げ、それが世界経済を予想以上に上向かせたことで、その半面、ユーロ圏や日本の経済は予想外に低迷した。
図1にみる通り、米国の成長率は上向き、それに対して、ユーロ圏の成長率はほとんどゼロで、なかでもドイツの成長率はマイナス基調が続いている。
日本経済は23年に入り、経済再開の効果で一時的に上向き、23年1~3月の実質GDP成長率は前年比2.5%に高まった。
だが、もともと人手不足による供給制約下で、日本経済の潜在成長率は1%未満にとどまっている。そのため、もともと2%を上回る成長は持続しにくい。
このような人手不足による供給制約下で、日本の成長率は23年1~3月の2.5%から4~6月2.2%、7~9月1.5%と鈍化した。
供給制約は日本の成長を鈍化させるとともに、インフレ率を押し上げており、それが日銀の金融政策正常化を可能にするだろう。
米国とユーロ圏の経済が正反対の動きになっている理由は?
このように、2023年の世界経済は、米国だけが一人勝ちの状態で上向き、これに対して、ユーロ圏の経済は悪化し続けた。
たまたま、世界経済の成長率は、3%程度という「緩やかな成長」になったわけだが、緩やかに成長している地域はどこにもない。
通常なら、米国経済が過熱気味になれば米国の輸入(米国への輸出)が増加し、それが米国以外の地域・国の経済を上向かせる。
ところが、最近の米国の経済成長はサービス業主導であるため、米国への輸出はさほど増加しない。
一方、ドイツなどユーロ圏の主な輸出相手先である中国の景気は停滞しており、中国の輸入も増えていない。それがユーロ圏経済停滞長期化の一因になっている。
では、欧米の同様な金融引き締めが、欧米の景気に対して非対称的な影響を及ぼしているのはなぜか。
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2024/2/5の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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