トランプ再選なら世界はどうなるか?
「どちらも大統領にしたくない」低調な大統領選で、岩盤支持層の厚いトランプ氏が有利に
アイオワ州党員集会、ニューハンプシャー州予備選挙で、トランプ氏が勝利を収めた。このまま行けば、十数州の予備選挙が集中する3月5日のスーパーチューズデーまでには、共和党大統領候補としてのトランプ氏の指名が確実になるだろう。
そうなれば、11月の本選挙ではバイデンVSトランプという、2020年時の対決が再現することになる。
訴訟などの問題を抱えながらも岩盤支持層が厚いトランプ氏に対し、バイデン大統領は高齢のハンデに加え、ハマス・イスラエル紛争でイスラエルを全面支持したことで民主党左派や若年層などの支持を失った。
本来なら、支持率低下の大きな要因になっていた物価が落ち着きつつあり、また景気が予想以上に好調で雇用も増加していることは、現職バイデン大統領の支持率をもっと高めていてもおかしくない。
だが、実際にはそうなっておらず、バイデン氏の人気のなさを窺わせる。
バイデンVSトランプとなれば、今回の大統領選は、多くの米国民が「どちらも大統領にしたくない」と考える、低調な選挙となるだろう。
投票率は低くなり、その結果として、岩盤支持層の厚いトランプ氏が有利になるとの見方が多い。
トランプ氏が再選される可能性は高まっている。
トランプ氏の考えは米国第一主義
トランプ大統領が再び誕生するとすれば、米国や世界経済にどのような影響を及ぼすのか。トランプ氏の考えは基本的に米国第一主義だ。その考えは、まず、外交面に影響する。
現実問題として、米国は世界の警察官としての地位を失いつつあるが、そうしたなかでも、バイデン大統領は、米国が中国やロシアなど専制国家に対抗して民主主義陣営でリーダーシップを果たすべきとの考えだった。
巨額のウクライナ支援が継続されていることは、その一環だ。これに対して、トランプ氏の考えは、米国第一主義で、他国に干渉しない一国主義だ。トランプ大統領誕生なら、国際社会での米国の地位はさらに低下するだろう。
欧州はウクライナ問題などでの米国の役割に期待するが、米国がウクライナに干渉しなくなれば、米国と欧州の関係にはひびが入ることは確実だ。
中国に対する米国の強硬姿勢も強まるだろう。バイデン大統領は、中国との関係では「デカップリング」でなく、「デリスキング」を志向している。
「デスキリング」というのは、
(1)先端技術分野で中国の能力を制限する、
(2)混乱に備え中国とのサプライチェーン(供給網)を複線化する、
(3)必要不可欠な原材料での中国支配を弱める、
など、現実的な路線であり、友好国と協力して自国のサプライチェーンへの投資を続け、
輸出管理は軍事バランスを傾ける可能性のある技術に限定する姿勢だ。
バイデン政権は、中国と多くの面で競っているが、対立や衝突は望まず、責任をもって中国との競争を管理し、気候やマクロ経済の安定、健康や食料の安全保障といった分野で協力を求めるが、両国間のオープンなコミュニケーションが必要との考えだ。
経済面での米国と中国の相互依存度が極めて高い状況から、米国議会で広がる強硬姿勢が行き過ぎないよう、歯止めをかけようとしているようにもみえる。
だが、トランプ再選となれば、そうした歯止めはなくなるおそれがある。トランプ再選なら、デカップリングの動きが強まるだろう。
対日関係については、前トランプ政権下では、安倍元首相との個人的な良好な関係によって保たれてきたが、今後どうなるかは不透明だ。
普通に考えれば、前政権下のような関係は考えにくく、日本への風当たりも強まるだろう。
高関税政策は短期的に景気を刺激するが、長期的には物価を押し上げ、成長力を低下させる
トランプ大統領なら、その通商・貿易政策は保護主義的なものになるだろう。
もはや、次の大統領選を気にする必要もないため、トランプ氏はかなり危うい政策も実施されても不思議ではない。
前トランプ政権下では、議会の承認が必要のない通商・貿易政策として、関税率の引き上げによって、米国内の企業を安い輸入品の流入から守り、保護する政策が実施された。
同様な関税引き上げ政策が実施されるだろう。基本的に、輸入品に関税をかける保護主義政策は、確かに短期的には米国内企業を助けるが、より長い目で見ると、米国向け輸出を減少させ、米国以外の国の景気を悪化させたため、その悪影響は米国経済に返ってくる。
関税の引き上げは、輸入品の物価上昇を通じて、国内の物価も押し上げることになり、米国企業の競争力を回復させることもない。
高関税によって、中国からの対米輸出を制限する政策がとられた場合、経済はどうなるか。
総需要=輸入+国内生産(GDP)=輸出+国内需要、であり、中国からの輸入が制限された分、国内生産が輸入に代替して増加しなければ、米国の総需要、つまり輸出や国内需要は減少することになる。
現在の米国経済が完全雇用状態であることを考えると、中国からの輸入減少分を代替できるような生産余力は国内にはない。輸入抑制策は、結局、国内需要あるいは輸出を減少させる要因になるわけだ。
産業政策という面でも、輸入関税は間違った政策だ。一般的に輸入関税は比較優位を持つ輸出産業に悪影響を及ぼすことが知られている。
これは「ラーナーの対称性定理」と呼ばれる。
輸入品への課税強化は、輸入競合品の価格を不必要に押し上げるため、本来、淘汰されるべき弱い産業、例えば鉄鋼産業などを保護する。
関税によって鉄鋼の国内価格が上昇すれば、鉄鋼業の生産活動を必要以上に高め、一時的にしろ、ヒトも鉄鋼業に流れる。
その反面、もともと競争力の強い産業、例えば航空機や情報通信などの産業では労働力不足になり、そうした産業の経済活動を圧迫する。
それは長期的にみた米国の経済成長力を阻害することになる。
・・・
2024/1/29の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
関連記事
https://real-int.jp/articles/2394/
https://real-int.jp/articles/2443/