ドル円は24年、130円に向かう
景気悪化の可能性は高い
24年を迎えるにあたって、相変わらず外為市場は、米国の金融政策動向を軸に動くことになろうが、金利格差は「拡大」から「縮小」に転換することは間違いなかろう。
米国は利上げの終了から利下げに向かい、日本は金融政策正常化に踏み切る。
もちろん、金利差の観点では、22年初の「振り出し」に戻るとまではあり得ず、ドル円が当時の115円前後まで下落することは想定できない。
ただ、この数年の年間の変動値幅を踏まえると、それなりの幅をもってドル安円高方向に推移すると思われる。
米国の金融政策についてはまず、今回の利上げ局面は7月のFOMCが最後であり、FF金利の最高到達点は5.50%だったということになる可能性が極めて高そうだ。
9月のFOMCで示されたいわゆるドットチャートでは「今年、あと1回の引き上げ」が、示唆されているうえ、FRB高官もその可能性を完全には否定していない。
また、仮に年内はスキップとなっても、24年に入ってから「あと1回」が実現する可能性は残る。その点、為替市場でも、ようやく始まったドル安がまたも揺り戻しに直面する可能性はありうる。
ただ、ここに来て観測される米経済の現状は、さらなる金利引き上げを必要としていない。
今のところ景気の「悪化」までを見通す状況にはないが、労働需給の逼迫感は和らいでいるうえ、インフレ率も順調に減速している。
当面の間、金利水準を維持することはさておき、7月に利上げを停止してから4ヵ月以上経過した現状に置いて、さらに引き締め強化が必要との判断に足る材料が表れているとは言い難い。
一方、24年中に利下げに踏み切るということ自体は、いわゆるドットチャートで予告されている。
一年前も同じことが展望され、結局外れてしまったという事態を再度繰り返す可能性もあるが、その後の追加的な金融引き締めに加え、時間の経過による効果の浸透も手伝って、米景気を圧迫する力は着実に強まっていると考えられる。
FRBウォラー理事発言
そうした推定が飛び交う中、11月28日にはFRB最高幹部の一人でタカ派と、目されているウォラー理事が予想外のコメントに言及した。
「経済を減速させ、インフレ率を2%に戻す上で今の政策(政策金利5.25~5.5%)が、好位置にあるとの確信を私は強めている」、「ここ数週間に目にした状況を心強く感じている、それは経済のペースだ」と発言。
「あと数ヵ月、3ヵ月か4ヵ月か5ヵ月か分からないが、インフレ率が本当に低下傾向に向かっていると確信が持てれば、景気回復などとは無関係に、インフレ率が低下したという理由のみで政策金利を引き下げ始めることができる」と、利下げの条件にも言及した。
利下げに言及したことがサプライズとして大きく注目されたが、「ここ数週間目にした状況」と、発言している点にも注目だ。
GDP統計で見られた通り7-9月期は速報値で年率+4.8%、改定値で同+5.2%と高い成長となったが、前回10月31日~11月1日のFOMCでは、その9月までのデータ中心に議論されており、
雇用、個人消費とも減速は見えるものの、まだ警戒が必要と考えていたはずで、FOMC後のパウエル議長の発言も、これまでと同じような慎重な言い回しが多かったのも事実。
「ここ数週間、目にした状況」というのは11月に入り10月分の雇用統計、小売売上高、CPI(消費者物価指数)、ホリデーシーズン入りのブラックフライデー、サイバーマンデーの客数、売上高といったデータが出て、経済の減速が想定通り進みつつあることがはっきりしたことを指しているのであろう。
利下げに言及とされている発言も、ある意味では当たり前のことを言っているだけだが、FOMC内ではタカ派と認識されている理事の発言だけに市場では驚きをもって受け取られた。
さらに言えば、ブラックアウト(FOMC直前の10日間はFOMCメンバーの発言を禁止)入り直前で、市場の注目が集まっていることが分かっていながら“利下げ”に言及したことの意味は、十分に考えたほうがいいのかもしれない。
FRBから公表されている講演原稿でも全体的なトーンはハト派に傾いており、追加利上げが必要とのニュアンスは感じられない。
10月10日のIMF報告(世界GDP2位の中国経済の行くえを強く懸念)も当然、大きく影響している。
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2023/12/6の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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