米国経済はソフトランディングに失敗
成長率4.9%はソフトランディング失敗を意味する
米国経済は緩やかに減速しつつあるという見方が多いが、実際には過熱気味で、そのために、インフレ懸念が再燃する兆しもみられる。
米国の7~9月の実質GDP成長率は年率4.9%と高い伸びになった。
22年以降の年率成長率の動きをみると、ロシアのよるウクライナ侵攻の影響で、22年1~3月マイナス2.0%、4~6月マイナス0.6%と2四半期連続のマイナスとなったが、そのあと、22年後半から23年前半にかけては、22年7~9月2.7%、10~12月2.6%、23年1~3月2.2%、4~6月2.1%と2%台で推移し、成長率が徐々に鈍化していく姿がみられた。
もし、このまま0~1%の成長に鈍化していったのであれば、米経済のソフトランディング成功と言える状況だったが、7~9月の4.9%という数値は、着陸失敗を意味している。
需要項目別にみると、まず、個人消費の強さが際立っており、年率4.0%増加した。その個人消費はGDPを2.7%ポイント押し上げた。
コロナ禍からの経済再開で好調を維持しているサービス消費(年率3.6%増)に加え、コロナ特需の反動で一時、落ち込んでいた耐久財消費(同7.6%増)も大幅に増加した。
モノへの需要が上向きつつあることが、低迷していた製造業の景気にプラスの影響を与え始めている。加えて、隠れた存在ではあるが、政府支出の安定した増加も目立つ。
直近1年間の政府支出の動きをみると、22年10~12月年率5.3%増、23年1~3月4.8%増、4~6月3.3%増、7~9月4.6%増と、安定した高い伸びが続き、持続的な成長率押し上げに寄与している。
7~9月については政府支出はGDPを0.8%ポイント押し上げた。
バイデン政権の積極財政政策が、実は、経済のソフトランディングの妨げになっていることがわかる。
このほか、7~9月は在庫投資の急増もGDPを1.3%ポイント押し上げる要因となった。ただ、在庫投資を除く最終需要の伸びも年率3.6%増と高く、在庫増加は売れ残りによる在庫増ではなく、前向きの在庫積み増しとみるのが妥当だ。
大幅な利上げによって米国景気の鈍化、あるいは近いうちにリセッション入りするはずだと予想するウォール街の市場関係者の見方に対して、企業経営者は景気の先行きに対して強気で在庫を積み増している。
結局、個人消費、政府支出、在庫投資の寄与を合わせると4.8%ポイントとなる。この3つが7~9月の成長を押し上げたことになる。
インフレ懸念再燃の懸念も
インフレに関して言えば、原油価格反発により、食料、エネルギーを含む全体の物価が上昇しているが、そのあとを追う形で、食料、エネルギーを除くコア物価も上昇し始めた。
エネルギー価格上昇により、9月のPCEデフレータは2か月連続で前月比0.4%と高めの伸びとなった。
一方、コアPCEデフレータは6月以降、前月比で0.1~0.2%の低い伸びが続いていたが、9月は全体のインフレ率の上昇を追いかける形で、同0.3%と高めの伸びとなった。
全体の物価であるPCEデフレータが、コア物価(コアPCEデフレータ)の先行指標になっているようにみえる。
これは、以下の理由からだ。
- エネルギー価格が上昇したことで、
そのコストが他の製品やサービスの価格に転嫁されている - エネルギー価格を含めた全体の物価上昇率が再加速したことで、
期待インフレ率が上昇し、賃金上昇圧力を高めた。
インフレは、実質賃金を下落させ、労働需給を逼迫させ、それが名目賃金を押し上げる。
理論的には、図1でみる通り、物価上昇による実質賃金下落が、労働供給を減少、労働需要を増加させて、労働需給をひっ迫させ、賃金を上昇させる。
また、実際には、・・・
2023/10/30の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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