ハマス・イスラエル戦争は第三次石油危機に発展するのか?
「イランの関与」が結論づけられれば、米国イスラエル対イランの戦争に発展か
今回のハマス・イスラエル戦争がどう発展するかを考えるためには、最近の中東情勢と関係各国の動向を整理しておく必要があると思われる。
中東の地政学リスクの中心にあるのがイランであり、イランを軸に考えた方が良いかもしれない。
イランは2015年の核合意で決まった量を超えて、濃縮ウランを保有するようになっている。
IAEA(国際原子力機関)によれば、最近時点のイランの濃縮度20%のウラン保有量は推定536Kg、濃縮度60%のウランは122㎏となっている。
これは1か月で6発分の核兵器を製造できる量とされる。米当局もイランが核兵器少なくとも2発分の製造に十分な量のウランを保有しているとみている。
仮に、ロシアと中国からの支援を受けてイランが核武装し、一方で米国が中東でのプレゼンスを縮小した場合、イランが中東における覇権を握ることになりかねない。
そのため、米国、イスラエルとサウジアラビアなど湾岸アラブ諸国は、イランを封じ込めるための連合を結成しようとしている。
実際、米国の仲介で2020年にイスラエルとUAE(アラブ首長国連邦)の関係が正常化し、今回の問題が起こるまでは、イスラエルとサウジの国交正常化も近いとされていた。
米国は、サウジアラビアによる原油増産と引き換えに、サウジアラビアに対して戦略的利益を提供することで、米国・サウジ間のパートナーシップを強化しようとしている。
ただ、基本的にはイランと対立関係にある米国も、バイデン米大統領が来年の大統領選で再選を目指しており、当面の対立激化は避けたい考えだ。
イラン側も、米国を刺激することを避けたいため、直近では、濃縮ウランの蓄積のペースを大幅に減速させている模様だ。
イランにとっては、バイデン政権がイランの石油輸出に対する制裁措置を縮小してくれている一方で、自国の核・ミサイル計画が進展し、また、ロシアや中国との関係も強化されるという現在の環境は比較的好ましいもので、「現状維持」の状態がある意味、最適だった。
ハマスはイランから支援を受けているが、今回の件について、イランの直接的な関与は確認されていない。
今回の問題は、イランにとっての最適な環境を大きく変えてしまうものであり、ハマスの攻撃の背後にイランの支援があった可能性はあるが、少なくとも、ハマスの攻撃がイランの指示によるとは考えにくい。
ただ、イランにとっての、シーア派過激派の筆頭代理人であるヒズボラが、ハマスの動きに連動して、レバノン側からイスラエルを本格的に攻撃するといった状況になれば、イスラエルとしては、イランを直接的に敵視さざるをえなくなる。
そうなれば、米国対イランの代理戦争としての、イスラエル対ハマス・ヒズボラ戦争の色彩が色濃くなる。
その場合、イスラエルが米国の支援を受けて、直接、イランの核施設などを攻撃する、それに対して、イランがホルムズ海峡を封鎖する、という事態に発展するおそれもあるだろう。
結局のところ、
(1)イランが今回のハマス・イスラエル戦争に関して、今後、どう関与するか、
(2)イランが今回のハマスによる攻撃を事前に知りながら
それを抑制しなかったことなどについて、
米国やイスラエルの諜報部門が「イランの関与あり」と結論付けるか、
といった点が、今後の展開を占ううえで、一つの焦点になる。
イスラエルの強硬姿勢にアラブ諸国が反発すれば石油危機も
もう一つの焦点は、イスラエルの報復がどの程度のものになるか、また、もしイスラエルの報復が苛烈なものになった場合、サウジアラビアなど湾岸アラブ諸国が反イスラエル的な動きを強めるかどうか、という点だ。
イスラエル軍は、人道的にも問題視される形で、ガザ地区を完全封鎖している。
一方、バイデン政権は、やはり、来年の大統領選を控えて、イスラエルを無条件でバックアップする姿勢を変えないとみられる。
今回のハマスによる攻撃で大きな被害が出たことで、イスラエルでは、対パレスチナ強硬派とされるネタニヤフ首相の責任を追及する声も高まっている。
ネタニヤフ首相としては、国民の信頼を取り戻すため、より徹底した報復を行うことが一つの選択肢になる可能性もある。
しかし、・・・
2023/10/12の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
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