今後の日米金融政策をどうみるか?
FOMC決定は予想通りの0.25%利上げだったが
「もはや景気後退は見込んでいない」が大きな波紋を起こす
FOMCは事前の予想通り、政策金利を0.25%引き上げた。
波風が立たない決定にみえたが、経済状況についての当局の受け止め方は、大きく変わってきている。
パウエルFRB議長は「FRBのスタッフの予測では、直近の経済の回復力を考えると、もはや景気後退は見込んでいない」と述べた。
昨年来の急速な利上げの影響を受けて、金利感応度の高い住宅市場は調整場面を続けてきたが、住宅市場はここへきて再び上向き始めている。
また、労働市場の先行指標として注目される失業保険申請件数は増加傾向を辿ってきたが、ここへきて再び減少し始めている。
利上げの影響は遅れて出てくるはずだとみる向きもあるが、金利に敏感な住宅市場の立ち直りをみる限り、利上げの影響がこれから出てくるとみるのは不自然だ。
「もはや景気後退は見込んでいない」との発言について、パウエル議長の経済ソフトランディングへの自信の表われとの見方も多い。
だが、経済の回復力が予想以上に強く景気後退の懸念が薄れているというのは、ソフトランディングの期待が高まっていることとは別物だ。
経済のソフトランディングのためには、景気の勢いが強すぎてはいけない。
ソフトランディングのためには、むしろ、軽い景気後退などによって労働需給が緩和し、賃金インフレが確実に落ち着き、早期利下げが可能になった方が良い。
景気の勢いが強すぎれば、賃金上昇率やインフレが逆に加速し、いつまでも利上げを続けていかなければならなくなる。
つまり、景気の勢いが強すぎることは、むしろハード・ランディング・シナリオの可能性を高めることにもなる。
これまでマーケットは景気後退懸念によって、居心地の良いゴルディロックスの状況にいることができた。景気後退懸念があったからこそ、利上げは最終局面との見方になった。
また、景気後退懸念が強いために、長短金利が逆転状態になった。政策金利が引き上げられて、短期金利が上昇しても、景気後退によって先行き金利が低下するとの予想から長短金利の逆転が起きたわけだ。
政策金利が引き上げられるなかでも長期金利は低位安定し、この長期金利低位安定が株価押し上げ要因になった。
しかし、本当に景気後退がないとなれば、状況は変わってしまう。景気が好調ならインフレ懸念は払拭できず、利上げはなお継続していく必要があるだろう。
そして、長短金利逆転は解消され、長期金利は政策金利を上回る水準にまで上昇する可能性がある。
インフレが再加速するとの観測に後押しされてか、需給逼迫から上向きつつある原油価格を中心に国際商品市況にも動意がみられる。
また、10年国債利回りは一時4%台乗せとなった。
米国経済がソフトランディングできるかどうかのカギを握るのは、むしろインフレの動向だ。
昨年以降のFRBの引き締めを受けて、米国のインフレが早期に抑制されると固く信じているようだが、金融引き締めにもかかわらず景気の勢いが強くなっているのに、インフレだけが金融引き締めによって抑制されるとみるのは楽観的だろう。
エネルギー、食品を含めた消費者物価の前年比上昇率は昨年6月の9.1%をピークに低下傾向となり、4月4.9%、5月4.0%、6月3.0%と月1ポイントのペースで急速に鈍化している。
だが、こうしたインフレ率の急速な鈍化はエネルギー価格下落の影響にほかならない。
エネルギー、食品を除くコア消費者物価前年比は6月も4.8%と高止まっている。
エネルギー価格は昨年6月をピークに下落したため、今年7月以降は、エネルギー価格の消費者物価に対する押し下げ寄与度は徐々に小さくなっていく。
結果として、この先、消費者物価の前年比は6月の3.0%をボトムに、コア消費者物価の前年比(4.8%)に近づく形で上昇していく可能性が高い。
日本の想定通り年後半以降インフレが鈍化しなければYCC政策は再修正が必要
日銀のYCC政策の修正(「柔軟化」)はサプライズだった。
そして、それをどう解釈すべきかという点では、金融正常化に向けた第一歩だという見方から、単なる技術的な修正だという見方まで、大きく見方が分かれている。
通常、中央銀行は短期金利を操作対象にして金融政策運営を行い、長期金利については市場動向に任せるのが普通だが、日銀は2016年9月から短期金利だけでなく長期金利も操作対象とすることにしている。
長期金利(10年国債利回り)の誘導目標は「ゼロ%程度」を中心に±0.5%のレンジだった。
確かに、日銀が短期金利だけでなく長期金利をも誘導する政策は、デフレ局面では意味もあった。
だが、現在のようなインフレ局面では、・・・
2023/07/31の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
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