AIが経済に及ぼす影響は?
4~6月TSMC決算はAIブームのなかでも世界の半導体需要の低迷が続いていることを示した
6月26日付の本レポート「半導体市場の動向」で「生成AI向け半導体需要増加で恩恵を受けるのはGPU市場を独占するエヌビデイアだけ」「日本の半導体市場はなお調整局面が続いている」と述べた。
https://real-int.jp/articles/2184/
実際、半導体の受託生産で世界最大手の台湾のTSMCは、7月20日に、4~6月の決算で、半導体需要の低迷により4年ぶりの減収減益となったことを発表した。
この決算内容は、AIブームのなかでも世界の半導体需要の低迷が続いていることを示した。「AIの導入により半導体需要が増加し、その需要増大が世界経済を押し上げる」というシナリオは楽観的すぎたことが確認された。
では、AIは生産性を押し上げ、供給力拡大によって経済が高成長を遂げるという見方は正しいのか。
以下では、AIが雇用に及ぼす影響、生産性に及ぼす影響、経済全体に及ぼす影響について考えてみよう。
AIはヒトの仕事を奪うのか?
通常、技術革新は企業の生産性を押し上げ、長期的に成長が加速して雇用も増加させると考えられる。
確かに、過去の蒸気機関、電気等の発明は経済を発展させた。蒸気機関の発明により人の筋力(肉体労働)は機械で代替されるようになった。
その結果、一時的に生産現場の職工などの雇用が奪われたが、経済成長によって、製造業以外の分野でより多くの雇用が生まれた。
だが、ITやAIなど今回の技術革新は雇用を増やすより、雇用を奪う側面が強くなっている可能性がある。
それは、第1に技術革新が指数関数的な倍々ゲームで進展し、予想以上のテンポで人の能力を凌駕し始めていること、第2に今回の技術革新は、人の肉体労働を代替した過去の技術革新と違って知的労働を代替し多くのホワイトカラーが影響を受けること、による。
肉体労働を代替する過去の産業革命とは異なり、ITやAIは事務、管理、企画などホワイトカラーの職を奪うおそれがある。
2013年のオックスフォード大学のフレイ氏、オズボーン氏の研究では、IT化の影響で今後10~ 20年で米国の702の職業のうち約半分がなくなる可能性があると述べていた。
日本でも、2015年に同両氏と野村総合研究所による共同研究で、10~20年後に日本の601種類の職業、労働人口の49%がAIやロボットで代替される可能性を指摘した。
これに対して、2016年に、OECDは、人間が担う仕事の大半は代替される可能性が低いとする報告書を発表した。
ヒトの仕事がITやAIによって代替されるかどうかという点に関して、オックスフォード大とOECDの研究で正反対の結論が示されたのは、職種としての仕事が全体として代替されるのか、一人のヒトのそれぞれの仕事(タスク)が代替されるのか、という点で違いがあるためだ。
オックスフォード大の研究は職業をひとかたまりとしているのに対して、OECDは一人ひとりの仕事をタスクの束としている。そして、OECDはタスクの70%が置き換えられたときにのみ、タスクの束としての職業が代替されるとした。どういうことか。
例えば、管理職のホワイトカラーを考えてみると、そのタスクには判断、意思決定、チームビルディングなどのタスクがあり、さらに細かく分解すると、電話をかけ、電話を受け、資料を作成し、資料を読み、部門内会議を開催し、他部門との連携をとるといった仕事がある。
そこには、人間同士の会話や意思疎通というインフォーマルな時間も多く含まれるため、同管理職の70%以上のタスクをITやAIで置き換えることはできないとOECDは考えた。
このOECDの見方によれば、大半の職業はせいぜいタスクの50%程度しか代替されないという結論になった。
最近では、ゴールドマン・サックスが3月に、AIによって、米国と欧州の仕事の4分の1に当たる3億人分のフルタイムの仕事が取って代わられる可能性があるとの報告書を発表した。
同報告書によると、AIの雇用への影響はさまざまなセクターに及び、事務では46%が、法務では44%が自動化されるが、建設では6%、保守では4%にとどまるとしている。
また、同報告書は、新しい雇用が生まれる可能性についても言及し、現代の労働者の60%は1940年には存在しなかった職業に就いていると述べている。
確かに、そうした経験から言えば、今はまだ想像することもできないような職業が生まれてくることは十分考えられる。
コグニサント社のレポートである「21 Jobs of the Future」によれば、AIによって新たに生まれる仕事として、・・・
2023/07/24の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。