ポンド/ドルの買い向かいは正しいか
先高観の形成は本当か
「イーグルフライ」の当リポートで「ポンドは1.29ドル台で頭打ちか」と題し、「英国のインフレは高止まりしやすい一方、十分な経済対策が打ち出しにくい」との見通しのもと、ポンドの上値は限定的と予測した。
その後、ポンド(対ドル)はジリ高の展開ながら4月14日の1ポンド=1.2546ドルがせいぜいである。
そうした中、4月21日付の日経紙が「ポンド、4ヵ月ぶり高値」と題した、ショート・コメント記事を載せた。
結局、対円での4ヵ月ぶりの高値(167円台後半)のことにすぎないのだが、「高いインフレ率がなかなか収束せず、市場は5月のBOE政策委員会での0.25%の利上げを織り込んでいる」とのストラテジストの見方を紹介している。
初級クラスのFX取引筋なら、「ならばポンド/ドルを買い向かうか」と傾きそうだが、仮に米ドルが相当の下落をみせても、チャートを見る限り、やはり1.29~1.30ドルの抵抗ラインを突破するのは難しいのではないか。
大切なことは、英国のインフレの執拗性と賃金上昇率の強さという一国のマクロ経済データに巻き込まれないことであり、あくまでもドルをベースに見定めることにある。
予想外だったインフレ率と賃金データ
4月19日発表の3月の英国CPI上昇率とRPI(小売物価上昇率)は、前年同月比で予想を順に0.3%ポイント、0.2%ポイント上回った。コアCPI上昇率は前年同月比+6.2%と減速予想に反して2月と同率にとどまった。
分析的にはコア財と、より重要なサービス価格の上昇が牽引した。実際、コア財価格は前年同月比+5.7%で2月と同率だったが、サービス価格上昇率はやや上昇。
国内要因によるインフレ動向を最も注視するMPC(BOEの政策委員会)がこれを見逃すはずがない。しかもCPI上昇率が予想を上振れした理由は、それだけではなかった。
エネルギーと食料品の価格は概ね予想通りだっただけに、インフレ加速はコア項目が原因だったことは確かである。
一方、4月18日発表の労働市場統計で、2月(3ヵ月移動平均=傾向がわかりやすくなるデータ)の週平均所得の伸びは前年同月比+5.9%と1月と同率だったが、エコノミスト予想(+5.1%)を上回った。また、賞与を除いた週平均所得の伸びは同+6.6%と同じく予想(+6.2%)を上回った。
つまり、結果は予想を大幅に上回った。
注目されている週平均所得の尺度は、民間部門の賞与を除く賃金の伸びで、この尺度では、2月は前月比+0.9%と顕著な上昇(1月は+0.3%)がみられ、過去最大の上昇となった。
ただ、月次の伸びの変動が激しいので前年比の伸びを3~6ヵ月の移動平均で見てみた。2月は過去3ヵ月の平均で前年同月比+5.6%、過去6ヵ月の平均で同+6.8%と2月の急上昇が押し上げたことがわかる。前年比ではいずれの尺度でも前の月に比べ伸びが上昇した。
ただし、今回、すべての賃金尺度で伸びが上昇したわけではない。雇用社統計での3月の賃金中央値の上昇は前月比+0.2%にとどまり、直近4ヵ月(昨年12月~今年3月)も比較的落ち着いていた(平均同+0.1~+0.2%)。直近3ヵ月移動平均の前年比伸び率も+3.7%にとどまっている。
と言いつつ、BOEが週平均所得の大幅上振れを追加利上げへの重要項目にすることは間違いない。
雇用状況
雇用状況はどうか。家計調査ベースの就業者数の伸びが直近3ヵ月の前3ヶ月比で+17万人と、予想(+5万人)を大幅に上回った。その結果、週総労働時間は前期比+1.5%と21年半ば以来の大幅な伸びとなった。
しかし、この尺度で増加した就業者数は、完全にパートタイムに集中しており、雇用者よりも自営業者の方がはるかに多かった。
また、よりタイムリーな雇用指標である3月の雇用者数は前月比+3万人となり、前月分は同+9.8万人から同+4万人未満に修正された。
同尺度は最近、市場やエコノミストが注目しているが、大幅改訂となったことで、政府統計局が未だに「試験的」としている理由が理解できる。
現在の雇用者数の伸びは前年比+1.8%で、前年同期の約+4.5%を下回り、21年半ば以来の低水準になっている。
失業率は2月までの3ヵ月移動平均で3.8%と前月の3.7%からさらに上昇し、少し前の3.5%から底打ち傾向にある。
それでも、失業率は長期平均(2019年以前)の7%弱を大きく下回っており、BOEが最新(2月)の「金融政策報告」で示唆した折衝水準(4%弱)を下回っている。
労働参加率はコロナ禍前の水準を大きく下回っており、同時期の他国との比較でも大きく下回っている。
しかし、非労働力人口は最近の3ヵ月間を含め、ここ数四半期で減少しており、16~64歳の非労働力人口はその間に15万3千人(約1.7%)減少した。
ピークから現在までの総減少幅は約21万9千人だが、これは当初の増加幅(64万1千人)の3分の1に近い。
労働力人口の持続的な回復は、労働市場の逼迫緩和に役立つかもしれないが、それでも長期的な標準や他の主要国と比較すると労働参加率は低い。
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2023/04/27の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
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