ユーロドル 夏にも1.15ドル期待だが...
イーグルフライの1月26日号で1ユーロ=1.0927ドルと昨年4月以来のユーロ高を付けた段階で、「1.12ドルが次のターゲットとなり、数カ月後には1.15ドルへと上昇しうる」と予測していた。
4月14日、ユーロは1.1074ドルまで上昇したが、いよいよ次のターゲットたる1.12ドルが見えてきたのではないか。夏にかけ1.15ドルも範中にしても構わないかもしれない。
ただ一点、ATI債(劣後債)や商業不動産担保ローン債券の価格暴落というリスクがあることだけは留意しておかねばなるまい。
ECBはコアインフレ退治を第一に
米国・スイス発の金融不安により、世界の多くの中銀は「金融システムの安定」と、「インフレの抑制」の両立を迫られている。
ECBは金融不安が発生した直後に開かれた3月の理事会で、金融安定化のため「市場の緊張を注意深く監視し、必要に応じて流動性支援を提供する用意がある」と表明。同時にインフレ抑制に向け0.5%(50bp)の大幅利上げを決定した。
その後もラガルド総裁は「金融の安定と物価の安定は両立可能」とし、「この2つの異なる安定は別々の政策で対応される」と述べている。
すなわち、ECBは金融システムの安定は流動性供給などのマクロ・プルーテンス政策で手当てしつつ、インフレ抑制に主眼を置いて金融引き締めを続ける方針のようだ。
金融不安については、それが金融システム危機に発展するか、あるいは信用収縮を通じて深刻な景気後退を招くかどうかが注目される。
その点ではユーロ圏の信用スプレッド(社債利回り-国債利回り)には、現在のところ過度な高まりは見られず、今般の金融不安発で銀行の貸出態度が大幅に厳格化する可能性も高くないように見える。
また、一時はユーロ圏大手行のCDS(破綻リスクの大きさを表す保証料率)の急騰や、株価の急落がみられ、金融不安の域内への波及が警戒されたが、これも現段階では落ち着きを取り戻したように見える。
ただ、クレディ・スイス銀行の破綻は、いわゆる米欧の大手金融機関の破綻とは意味が違う。
世界の資産家マネー(アンダーグランドマネー含む)が集まっていた特殊な金融機関であっただけに、今後大きなマネーシフトにつながる可能性が高い。
しかも、今回の事態の裏側でモルガンスタンレーや、JPモルガンチェースといった米国の中枢金融機関が動いていた形跡がある。甘く読んで足下をすくわれないよう警戒しなければならない。とにかくECBにとって頭が痛いのはインフレの様だ。
消費者物価指数(HICP)は商品市況の下落とユーロ相場の持ち直しで、エネルギーのお仕上げ寄与が縮小し、ヘッドライン(総合指数)は減速している。
だが、労組主導の賃上げを背景にサービス物価の上昇は続き、コアインフレ率は加速している。賃金と物価が連鎖的に上昇するホームメード・インフレのリスクも燻る。ECBの物価予想を見ると、当面は食料・エネルギー物価の沈静化で、インフレ率の急落が見込まれている。
しかし、今年末にはインフレ率のヘッドラインはコアの岩盤に到達し、その後1年程度は2%の物価目標を大きく上回る水準で下げ渋る姿が予想されている。
ECBがインフレ退治を優先するのであれば5月、6月と各0.25%(25bp)の利上げを行い、政策金利を3.5%まで引き上げるというのがメインシナリオだろう。
もちろん、金融システム危機に発展しないとの条件付きだが。それにより政策金利はオーバーキル(景気悪化に至らしめるほどの水準)の分水嶺となる名目潜在成長率(3%強)を上回る。
景気は財政状況が悪く金利上昇に弱い南欧諸国を中心に悪化する公算が大きい。
また、ウクライナ危機以降の欧州株と天然ガス価格の連動性に見るように、欧州(特にドイツ)の景気・株価はエネルギー価格に翻弄されやすい脆弱性がある。ウクライナ戦争が続くなかで冬場にはエネルギー問題が再燃し、景気・株価を大きく揺さぶる可能性がある。
また、今年終盤には米国が景気後退局面に入る見込みだ。
欧州経済は、引き締め効果の発現、エネルギー問題の再燃、海外景気の悪化などにより、今年終盤から来秋にかけてリセッションに陥る公算が大きい。
そのためECBは来年には金融緩和に転じ、政策金利を中立(1~2%)のレンジ内まで戻していくと予想される。
ユーロをサポートするドル下落
3月8日のドル実効指数(DXY)は105.88と14週ぶりの高水準(ユーロドルは1.05ドル台半ば)だったが、現在(4月14日)は101.56(ユーロドルは1.0993ドル)と4.1%も下げている。
ユーロが堅調なのはベースがドル安になっていることにある。
3月に金融市場の動揺を誘ったシリコンバレー銀行やクレディ・スイスの問題は、今のところ、落ち着いている。
ただ、FRB議長は「信用収縮は事実上利上げと同じ効果を持つ」と、今後の金融引き締めをフォローする可能性を示唆した一方、ECB総裁は金融の安定と物価の安定はトレードオフではなく両立できるとの方針を示した。
前述したようにECBはコアインフレ率抑制を第一としたわけである。
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2023/04/18の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
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