12月のFOMCに動揺する必要はない
市場はFRBを信じない
FRBが信頼性の問題を抱えている。
FRBは「利上げの継続」、「5%超までの利上げ」、「少なくとも来年末まではその水準で維持」という3つのことを市場に信じさせようとしているが、市場参加者(投資家)は3つ目を完全に拒絶してきた。
ただ、12月14日~16日の市場(米国株価・債券・外為)ではやや動揺が出ている。結局、これから先の米国のインフレ率・景況次第であろうが、軍配は市場側に上がるのではないか。
市場は12月FOMC前までは、利下げについて開始時期は政策当局の見解よりも早く、スピードはそれよりもずっと速くなると考えてきた。
市場の見方が正しければ、政策金利は2023年夏のピークから24年末までに、約200bp(2%幅)低下することになる。
FRBは12月14日、政策金利のピーク水準の見通しを引き上げ、ピーク後の引き下げ幅をより緩やかにすることを示唆した。これを受けて米株価は下落し、米国債利回りは一時的に上昇した。
だが、それでもまだ市場が政策当局に同意しているとは言い難い。市場がFRBに逆らうことが正当となり得る展開が2つある。
インフレが自然に収束する展開
良良い展開はインフレが自然に収束することだ。そうした期待は11月のインフレ統計によって高まった。
パウエルFRB議長が14日に述べたように、FRBは警戒を解く前にインフレが低下していることを示すさらに多くの証拠を確認する必要があるだろう。
ただ、インフレ率が下がったままであれば、FRBは来年の半ばまでに、もはやこれほどの高金利は不要だと認めるに違いない。
このシナリオは、利回りが低下する債券にとっても株式にとっても、そして円安の一段の是正にとっても好都合だ。
FRBが利下げを余儀なくされる展開
悪い展開は、金利が上昇し、さらに今年の急激な利上げの効果が遅れて出てくることで、経済が深刻なリセッションに陥り、超低インフレの兆しが浮上して、FRBが利下げを余儀なくされることだ。
債券には追い風だが、株価は打撃を受け、円も急上昇となるだろう。
市場の投資家は今のところ、あくまでもインフレが自然に収束し、深刻なリセッションは避けられると考えている。
それは、この2ヵ月間の株価の大幅反発と、ジャンク債(投資不適格級債券)のスプレッド(利回り)縮小に現れている。予想されている利下げの規模は大きい。
政策金利がピークを付けるとみられる来年度以降の18ヵ月間について、先物市場が織り込む利下げ幅は200bp(2%)程度となっている。
これは通常、景気後退期にしか見られない規模だ。景気後追期以外では、これほどの短期間により大きな利下げがあったのは、1973年以降では1回しかなく、1984~86年のソフトランディング時のみとなっている。
このことは、債券市場では大幅な逆イールドとして現れている。
10年債は現在、2年債との利回り差が1981年以来の大幅なマイナスとなっており、3年債と2年債の利回り差でさえもマイナス圏にあって、長く大幅な利下げサイクルが予想されている(なぜか、この事態をFOMCメンバーは言及しない)。
FRBが信頼されない理由
FRBが信頼されないのはなぜだろうか。その一因はファンダメンタルズにある。
実際、11月の季節調整前のCPI(消費者物価指数)は前月比で0.1%低下し、米経済がロックダウン下にあった2020年4月以来の大幅な落ち込みとなった。
住居費を除くと、CPIは季節調整後でも低下した(家賃を無視することには一定の意味がある。家賃上昇率の計算方法が、下落基調にある家賃の最新の動向ではなく、主に過去の上昇分を徐々に転嫁する形になっているからだ)。
とはいえ、FRBの信頼性にも問題はある。
FRBは市場に引き締め政策の実行(債券利回りの上昇、すなわち長期借入金利の上昇)を求める一方、政策金利の引き上げペースを緩め、現在の水準をわずか0.5~0.75ポイント上回る水準で打ち止めにすると話している。
目先に関するFRBの発言を信じることは理にかなっている。だが長期的には、FRBは市場に仕事をさせたいと考えている。
そうすれば、インフレに関してFRBの間違いが判明した場合、政策担当者は平然と考えを改めることもできるからだ。
全く先を読めない状況の中、FRBは政策金利をより高く長く維持するためにフォワードガイダンス(金融政策の先行きの手掛かり)を示しているだけであって、確約とは違う。
今後のインフレ動向は不透明だ。
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(この記事は 2022年12月18日に書かれたものです)
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