遅れたインフレ 日本の景気は大きく悪化する恐れ
世界経済は欧州先頭にリセッション入りへ
世界経済はリセッションに向かいつつある。
10月のIMF世界経済見通しによれば、世界の経済成長率は2021年6.0%から22年3.2%、23年2.7%と減速する。プラス成長だが、世界の成長率3%割れは、過去の経験からみて、ほぼリセッションに相当する。
リセッションに最も近い位置にあるのは欧州だ。
IMFの見通しによれば、23年のユーロ圏の成長率は0.5%に鈍化する見通しだが、ロシアの天然ガスに依存するドイツは、エネルギー不足による生産縮小と高インフレに見舞われ、マイナス0.3%とマイナス成長が予想されている。
ユーロ圏の二桁近いインフレの主因はエネルギー価格上昇であるため一時的とも言えなくない。
だが、ECBは現在の高インフレが期待インフレ率を上方シフトさせ、インフレを長期化させることをおそれ、FRBに追随して利上げを急いでいる。
コロナショックとウクライナショックで欧州経済は脆弱化していた。そうしたなかでの高インフレと金融引き締めは、景気を大きく悪化させるだろう。
中国経済も相当悪い状態になっている。中国の22年7~9月の成長率は前年比3.9%と
上海市の都市封鎖などで落ち込んだ4~6月(同0.4%)から回復した。
だが、以下の事項などから需要は落ち込んでいる。
(1)不動産開発投資の減少が続いていること
(2)ゼロコロナ政策による消費停滞に加え
(3)8月の台湾を取り囲む大規模軍事演習の実施を機に
中国からの輸入を控える動きがあること
10月の生産者物価が前年比1.3%下落したことは、需要不足でデフレギャップが拡大していることを示す。プラス成長ではあるが、中国経済は景気後退に近い状態になっていると考えられる。
リーマンショック前までのようなグローバル経済下では、先進国がインフレで、その半面、中国が供給過剰によるデフレであれば、中国の先進国向け輸出が増え、先進国のインフレ、中国のデフレの問題が和らぐ効果が期待できた。
しかし、グローバル化の潮流が逆流し、分断化が進んだ今の世界ではそうした中和効果は働かない。
昨年来、習近平政権はIT業界などに対する規制強化や民営デベロッパーをターゲットにした総量規制の導入などを行ってきた。
こうした統制経済化に拍車がかかれば、企業の活力は失われかねず、海外からの対中投資も落ち込む。
さらに、習近平政権は腹心の部下だけで周りを固められ、政策が誤っていても軌道修正がされにくい状態になっている。中国経済の停滞は長期化する可能性がある。
一方、米国経済はコロナ下でも比較的、堅調に拡大し続けてきたが、急速な利上げとドル高で、さすがに足元では陰りもみえてきた。
ドル高の影響で製造業景気が頭打ちとなっているほか、個別企業のなかには大量解雇に踏み切る向きもみられ、雇用増加のペースも鈍化してきた。
最大の関心事は米国の金融政策動向だが、FRBがどこまで利上げし、その高金利をいつまで維持すればインフレが目標の2%に鈍化するか、は不透明だ。
マーケットでは、FF金利のターミナルレート(最終着地点)が5%強とまことしやかに語られているが、根拠はあいまいだ。また、金利を大きく上げてほしくないためか、インフレは自然に落ち着くという見方が多い。
しかし、インフレ率が5~7%の時に、金利を5%まで引き上げても実質金利はプラスにならない。
引き締め効果が期待できない利上げで、インフレが落ち着くとみるのは無理がある。1970年代の高インフレ時の経験によれば、FF金利は実際のインフレ率を大きく上回る水準まで引き上げられていた。
また、引き締めによって米国経済がリセッション入りしてからインフレ率が2%台に低下するまでには少なくとも2年以上かかっていた。
インフレを2%に戻そうとするなら強力な金融引き締めが長期間続けられる必要があり、それによって米国経済も大きな痛手を被るとみるのが自然だ。
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2022/11/21の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
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