「日本のインフレ率が低い」というのは幻想
コア消費者物価前年比は来年初めには4%台に加速する
9月のコア消費者物価(生鮮食品を除く総合)は前年比3.0%上昇した。3%台上昇となったのは、消費税率引き上げが影響した時期を除けば、1991年8月以来のことだ。
だが、3%というのは、あくまでも前年同月比でみた上昇率であり、ここ数か月の物価上昇の動きはより急速だ。
コア消費者物価(季節調整値)の前月比上昇率は7月0.5%、8月0.4%、9月0.4%と上昇している。3か月前比年率上昇率は5.2%と高い。
【図1】
図1をみても、この3か月間のコア消費者物価指数の上昇角度が急になっていることがわかる。
仮に、やや控えめにみて、10月以降、前月比0.4%の上昇が続くと仮定した場合、コア消費者物価の前年比は12月に3.9%、来年3月に4.4%と加速していく計算だ。
現在の3.0%という前年比上昇率は、昨年9月から今年9月までの物価上昇率が3.0%であるということだ。
昨年9月から今年1月頃までの物価上昇率は非常に緩やかで、物価上昇が急になったのは2月以降のことだ。
つまり、「3.0%」には、今年1月以前の、物価上昇が緩やかだった頃の動向が含まれているために、低めの数字になっているわけだ。
繰り返すが、直近3か月のインフレ率は5%超と決して低い数字ではない。図1でみる通り、消費者物価全体の3分の2を占める「食料及びエネルギーを除く総合」は、今年1月まで下落基調だった。
それが上昇に転じたのは2月以降のことだ。半導体不足や国際的な物流の混乱などの影響で、給湯器やエアコンなどの家電製品などが上昇し、それが「食料及びエネルギーを除く総合」を押し上げたともされた。
ところが、半導体不足が緩和し、物流の混乱が一段落しているにもかかわらず、足元でも「食料及びエネルギーを除く総合」の緩やかな上昇は続いている。
「食料及びエネルギーを除く総合」の上昇は、新型コロナの感染拡大による物流の混乱などに伴う一時的な上昇ではないことを示す。
「食料及びエネルギーを除く総合」の上昇は、より構造的な要因、つまり、脱グローバル化や米中経済摩擦による生産性の低下やコスト増などが影響している可能性が高い。
一方、原油価格が反落していることから前年比の伸びは再び2%台に鈍化していくという見方があるが、間違いだろう。
図1でみるように、確かに、エネルギーの価格の上昇テンポは鈍化している。
ロシアによるウクライナ侵攻直後の今年3月時点のエネルギーの価格の3か月前比年率上昇率は26.7%だった。
同上昇率は6月に6.3%に鈍化し、その後、幾分上向いたが、9月は13.7%と3月頃に比べると緩やかだ。
だが、エネルギーの上昇鈍化にもかかわらず、全体的な物価上昇テンポは加速している。
ここへきてのコア消費者物価を押し上げているのは、消費者物価全体の7%を占めるエネルギーではなく、全体の22%を占める「生鮮食品を除く食料」だ。
図1からもわかるように、9月の「生鮮食品を除く食料」の3か月前比年率上昇率は7.2%と、このところ急加速している。
さらに、10月には多くの食品の値上げが実施された。日本食糧新聞調べによれば、10月の食品値上げは8,500品を超え、単月での価格改定数は年内最多規模に達した。
「生鮮食品を除く食料」の上昇テンポはさらに加速するだろう。エネルギーの上昇テンポが鈍化するなかでも、10月以降も「生鮮食品を除く食料」が物価全体を押し上げる可能性が高い。
いずれにしても、日本の今のインフレ率は5%強に高まっているとみていい。
エネルギー価格の政治的な抑制がなければ、日本でもインフレ率は8%になる
ところで、日本のインフレ率は欧米に比べて低く、それは、日本人のデフレ心理の強さが原因だと言われることが多い。
しかし、統計をみる限りでは、日本のインフレ率の低さは、デフレ心理などといった不確かなものが原因ではなく、エネルギー価格が政治的に抑制されていることが主因だ。
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2022/10/24の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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