原油価格の再上昇トレンドはあるか
200万バレル減産のサプライズ
OPECプラス会合(閣僚級)は10月5日、11月以降、23年12月末まで原油生産ペースを日量200万バレル減らすことを決めた。
世界の1日の供給量の2%に相当する規模で、2020年以来の大規模減産となる。サプライズである。
明らかにロシアの戦費維持(増収)につながることをサウジが盟主のOPECが決定したわけで、米欧は決して座視はしまい。
とにかく、サウジのムハンマド首相(皇太子)が一体、何を考えているのかが現段階では理解できない。
米大統領の7月中東訪問、ムハンマドとの2者会談、そして直後のEUからのムハンマド招待という「石油外交」の面目を潰されたわけだから、少なくとも米国は必ず反撃に出るだろう。
WTI原油価格は9月26日の76ドル49セントから10月7日には93ドル26セントと実に22%も跳ね上がった。
「われわれは世界経済に安定をもたらす穏便な勢力であり続ける。」
サウジのエネルギー相は会合後の記者会見でこう述べ、持続可能な原油市場を形成していくことが減産の目的だと強調した。
決定によると、11月以降の生産ペースは現行計画の日量4380万バレルから4185万バレルに減らす。
日量200万バレルの減産幅は、コロナ禍の需要減に対応するため20年4月会合で決定した
約1000万バレル(18年秋比)以来の規模。
国別では、最大の生産量が割り当てられているサウジとロシアが、それぞれ日量約53万バレル減少させる。
もっとも、このところOPECメンバー国は人員の確保がうまくいかず、目標生産量に届いておらず、実質の減産は日量1000万バレル程度とされる。
ただ、OECD(経済協力開発機構=主要経済国)全体の商業用原油在庫が5年平均を10%近く下回っていて市場が逼迫していることを熟知しながら減産を実施したことは、これまでなかった。
米政府・議会による報復措置を用意
米議会では、OPEC主導の石油カルテル解体やWTO(世界貿易機関)への提訴に加え、加盟国の米国資産凍結も視野に入れた法律制定を目指す機運が高まっている。
OPECプラスが日量200万バレル減産を決めるやいなやホワイトハウスは議会とともに、エネルギー価格に対する石油カルテルの影響力を弱める報復措置に乗り出すことをにおわせた。
米国の輸出も落ち込むことをも覚悟の上だ。と同時に、OPECと米国の間でここ数年、かろうじて保っていた緊張緩和の流れが完全に途絶えるリスクも高い。
バイデン大統領は6日、記者団に対してOPECプラスの減産決定に失望を表明。
政権として対応を検討していると明らかにした上で、「多くの選択肢が考えられるが、まだ決めていない」と述べた。
世界最大の石油消費国である米国では、ここ10年に生産量が伸び、主要輸出国に浮上した。
そのため、米国とOPEC双方にとって国際原油市場の安定の重要度が増しており、相互の力関係にも変化が出ている。
オバマ政権終盤からトランプ政権初期にかけて、水面下では米当局者とOPEC指導部の交渉が始まった。
その後、新型コロナウィルス禍で原油相場が急落すると、相場安定に向けた直接取引へと発展していった。
ところが、こうしたバラ色の関係はここ1年で一気に冷え込んだ。
ガソリンなどエネルギー価格が過去最高に跳ね上がったほか、OPECプラスに参加するロシアがウクライナ侵攻に踏み切ったためだ。
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(この記事は 2022年10月11日に書かれたものです)
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