国内景気に赤信号が点灯
日本の景気後退確率は7割超
多くの市場関係者は欧米で加速するインフレとそれに対応したFRB、ECB、英中銀の急速な利上げが欧米景気を悪化させるとみている。
その点、日本はインフレ率が相対的に低く、日銀は強力な金融緩和を続けているため、景気悪化の心配はないとみているようだ。
そのため、株式市場では、日本株が割安だという見方も多い。だが、実際には、日本の景気は低インフレで金融緩和が続けられていても、かなり危うい状態にある。景気後退に最も近づいているのは、欧米ではなく、むしろ日本かもしれない。
日本経済研究センターが景気先行指数などを使って算出する日本の景気後退確率は5月68.8%、6月に71.1%となった。同センターが景気後退の目安としている「67%」を2か月連続で上回り、景気に赤信号が灯っている。
景気後退確率の高まりは、景気先行指数が5月、6月と2か月連続で低下したことが主因だ。続く7月についても、先行指数に含まれている消費者態度指数が7月に低下していることなどから、景気先行指数全体も一段と低下する可能性がある。
そうなれば景気後退確率はさらに高まることになるだろう。ちなみに、米国の景気循環はいわゆる成長循環であり、企業の売上や個人所得などが減少しない限り、なかなか景気後退という判断にはならない。
これに対して、日本の景気循環は在庫循環に近く、製造業部門の在庫調整が起こるだけで景気後退になってしまう。
このように、日本が米国に比べて景気後退と判断されやすいという点を割り引く必要があるが、現在の日本の経済状況は、日本の基準による景気後退に近づいていることは確かだ。
実質雇用者報酬の減少で消費マインドが落ち込む
現状では、確かに原油安による交易条件改善や経済再開に伴うサービス消費増加に期待する向きも多い。
だが、日本の問題は、食品などを中心に物価上昇が続き、実質購買力低下から家計の消費マインドが落ち込んでいる点だ。
米国と違い、賃金が低迷し、雇用の伸びも低水準であるため、物価上昇分を差し引いた実質雇用者報酬(1人当たり賃金報酬×雇用者数÷物価)は、1~3月の前年比0.3%増から4~6月には同1.2%減と落ち込み、所得環境は悪化している。
毎月勤労統計によれば、物価上昇分を差し引いた実質賃金の前年比は4月1.7%減、5月1.8%減、6月0.6%減と減少傾向が続いている。
6月に減少幅が幾分縮小したのは、昨年の企業利益が一昨年の大幅な落ち込みの反動で増加し、夏季ボーナスが比較的良かったためだ。ボーナスを除く、所定内・所定外給与だけでみると6月は1.4%減と1%超の減少幅が続いている。
一方、常用雇用は4月0.5%増、5月0.7%、6月1.1%増と、経済再開に伴い、伸びは緩やかに加速しているが、実質賃金の減少幅を補うことはできていない。
米国では、企業の雇用意欲(労働需要)が盛り上がっている。反面、感染拡大によって高齢者の早期退職が増加し、非労働力人口が増加し、労働力人口(労働供給)が伸び悩んでいるため、労働需給が逼迫し、賃金は上昇しやすい。
これに対して、日本では経済再開により宿泊・飲食などのサービス業で雇用が増加している。ただ、それと同時に、高齢者や女性の労働市場参入意欲が強いため、非労働力人口が減少し、労働力人口が増加しているため、労働需給は逼迫せず、賃金は上昇しにくい(図1参照)。
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2022/08/29の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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