米国景気は再過熱の可能性
年前半の米経済は供給制約やエネルギー価格高騰、金利上昇で減速したが…
今年前半中の米国経済は実質GDPが2四半期連続のマイナス成長となり、一部で景気後退懸念も高まった。
もちろん、景気判断で重視される景気一致指数が上向きであるため、2四半期連続のマイナス成長が景気後退を意味するわけではない。
だが、年前半中の米国の景気拡大テンポがやや減速していたことは事実だろう。
背景には、下記の事象などがあったとみられる。
1.2021年初め頃から問題になっていた半導体不足などの供給制約問題に加え、
ロシアのウクライナ侵攻で国際的なサプライ網の混乱が広がった
2.コロナショック後の需要急増と金融緩和で上昇していたエネルギーなどの国際商品市況が
ロシアに対する経済制裁によって一段と急騰した
3.インフレ率の急上昇に伴って、FRBはそれまでの過剰な金融緩和姿勢を正常化しよう
という意向を示し、急速な利上げ観測によって長期金利が上昇し、
住宅投資などに悪影響を及ぼした
景気に負の影響に及ぼしていたこれらの問題については、今でも完全に払拭されたわけではないが、少なくとも悪影響の程度は小さくなっている。
バルチック海運指数、Harpexコンテナ指数、航空運賃指数など国際的な運輸コスト指数、各国のPMI(購買担当者指数)などを構成する製造業部門の入荷遅延指数などの数値を元に、ニューヨーク連銀が推計している「グローバルサプライチェーン圧力指数」(1997年以降の平均値=ゼロとする指数)は、2020年11月時点ではゼロ程度だったが、21年12月には4.3に上昇した(図1参照)。
しかし、22年に入ってから、同指数は低下基調を辿った。ロシアによるウクライナ侵攻を受けて3月から4月にかけて、同指数は一時的に上昇する場面もあったが、直近7月時点では、ピーク時の半分以下の1.8に低下している。
また、2と3の事象について言えば、原油価格や米長期金利は、6月前半まで上昇していたが、その後、反落した。
供給制約問題、エネルギー価格高騰や金利上昇など、景気を悪化させていた要因が幾分和らいでいることが、年後半の景気を再上昇させるだろう。
実際、7月の雇用統計では、雇用者数の前月比増加数が52.8万人と、5月38.6万人、6月39.8万人から増加ペースが加速した。
もともと高水準の求人件数に示されているように、米企業の求人意欲は極めて高水準だが、求人増が実際の雇用増加に結びついたのは、経済の先行きに対する企業の見方が楽観的なものになってきていることを表わしている。
また、8月のミシガン大消費者信頼感指数も急上昇した。同指数(先行き指数)は、昨年12月の68.3をピークに、今年に入ってからは低下傾向を辿り、7月には47.3に低下したが、8月は54.9と反発した。
消費者マインドの高まりは、言うまでもなく、ガソリン価格の下落によるものだ。
労働力不足問題=ヒトの面での供給制約問題は悪化している
年前半に足踏み状態だった米国経済は、年後半以降、再び盛り上がっていく可能性が高い。景気後退懸念も和らいでいくと考えられる。
そして、景気が再上昇していくことで、もともと過熱感の強い労働市場は、一段と過熱していくだろう。
7月の失業率は3.5%と6月の3.6%からわずかに低下したが、景気の再上昇で今後は一段と低下し、労働需給逼迫に伴って賃金上昇率は高まっていくと予想される。
グローバルサプライチェーン圧力指数などの数値にみる通り、モノの面での供給制約は幾分、緩和しつつあるとみられるが、ヒトの面での供給制約はさほど改善されていない。
図2は米国の労働力不足の動きをみたものだ。コロナショック後、米国では感染を恐れた早期退職者の増加により非労働力人口が増加、高止まりし、移民の減少などもあって、労働力人口が増えにくい局面が続いている。
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2022/08/16の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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