金利とは何か
金利とは何でしょうか。例えば国債の利回りなどは朝晩の経済ニュースで毎日のように取り上げられていますが、そもそも金利とかイールドカーブとは一体何で、どのように決まっているのでしょうか。
金利とは
金利の定義を一言で言うと、お金の貸借料の年率のことです。
もう少し詳しく言うと、貸借するお金の元本に対する、1年分の貸借料の比率のことを言います。ちなみに、この貸借料のことを利息と呼びます。
なぜ金利が存在するのか
お金を貸す側は、そのお金が一定期間手元から無くなることによって生じる不利益(機会損失)を想定して、これに見合う収入が欲しいと考えます。
一方で、お金を借りる側は、ある一定期間お金を使えるようになって得られる利益を想定して、その利益より低いコストなら支払っても良いと考えます。このようにお金の貸し手と借り手両方のニーズがあることから金利が存在しています。
皆さんの多くはここまでの内容は既にご存知のことかも知れません。では、次に、この金利というものが変動する要因について皆さんはどれくらいご存知でしょうか。以下に筆者なりの言葉を使って説明していこうと思います。
金利の決まり方
金利は主に以下の6つの要因によって決まっていきます。
- 通貨
- 需給
- 期間
- 信用力
- 利払い方法
- 流動性
それでは以下でこれらの要因について簡単に触れていきます。
1. 通貨
例えば、各国の中央銀行が設定している銀行向け政策金利(1日間)は通貨によって大きく違います。
以下は5月下旬時点の金利水準です。
- 日本円 -0.10%
- 米ドル 1.00%
- ユーロ 0.00%
- メキシコペソ 7.00%
上の例はオーバー・ナイトと言って、今日から明日までの1日間の政策金利です。
政策金利以外ではその通貨を発行している政府の調達金利、すなわち国債金利がその通貨建ての金利の基準になっていますが、1年以内の短期から10年を超える長期に至るまでこれら国債金利も全て1日の政策金利とその将来見込みからの影響を受けて成り立っています。
即ち、全ての金利はその通貨を発行している国の政策によって異なるので、例えば日本にいながら米ドルを借りようとすればアメリカ国債の利回りに一定の幅が上乗せされて金利が決まってきます。けっして円金利が基準になるわけではありません。
2. 需給
世の中の景気が良くて、手元の資金で、株の運用や、不動産運用、あるいは事業を立ち上げるとどんどん収益が上がるような経済環境下では、多くの人や企業が預金を取り崩して事業への投資や運用をしたり、あるいは銀行から借り入れしてでも投資をしたいと思うようになります。
このような時、社会全体(金融市場)の資金ニーズはかなり強く、需給関係はかなりタイトな状況で、金利は高く推移します。一方、お金があっても投資や運用してもそれほどの収益が見込めないような経済環境になると金利は低く推移します。
世の中の景気以外にもお金の需給関係に影響を与えるものもあります。例えば中央銀行による市場で流通している国債の買い入れなどはその一例です。
3. 期間
貸借期間のことです。例えば、短い方から1日、1か月、1年、5年、10年、20年、30年などがありますが通常は期間が長い方が金利は高くなり、これを順イールドの状態と呼びます。
お金を貸す期間が長くなるほど、お金を貸す方は、想定外のイベントの発生により機会損失のリスクが高まってくるという事が想定されますが、これがすべての理由ではありません。
また、多くの場合、期間ごとの金利水準はそれぞれの期間金利の需給のバランスで決まりますが、期間金利の間には実は数学的な関係が成り立っていて、これがイールドカーブが形成される要因になっています。この点は次の機会に触れたいと思います。
4. 信用力
これは借り手の信用力のことです。返済の確実性ですね。
同じ円資金であっても国が債券(国債)を発行してお金を調達する(借りる)ときの金利と一般企業が債券を発行してお金を調達(借りる)時の金利では大きく違いますし、一般企業の中でも信用力のある大きな上場企業とそうでもない非上場企業などでは資金を調達するときの金利が大きく違ってくることが一般的です。
例えば5年の債券でいうと国債の金利は0.1%、ある上場企業の債券は2%程度です。これは、貸し倒れのリスクが金利に織り込まれていることから起こるギャップです。
日本国政府が返済不能になることは想定していませんが、上場企業であっても返済期限までに倒産するリスクはゼロではないのでそのリスクの分だけ金利は高くなるのです。
5. 利払方法
金利の支払い方のことです。
これは少し細かい話ですが、表面上は同じに見える金利の借入でも金利の支払いのタイミングにより実質的に負担する金利や経済的な価値は違ってきます。
例えばあなたが6%の金利で1年間100万円を借りるとします。
- 100万円の借入時に先に6%の利子6万円を払う借り入れ
- 100万円の返済時に後で6%の利子6万円を払う借り入れ
どちらかを選ぶとしたら、あなたならどれを希望しますか?
2つの借り方では6万円の金利の支払いうタイミングが、1年間違います。今の6万円と1年後の6万円はどちらの方が価値があるか。と言うことと同じです。
多少なりともインフレが存在している普通の世の中では、1年後の6万円よりも今日の6万円の方が価値があることをお分かりいただけると思います。借りる側としては、より価値の小さい6万円を支払う方が経済的には有利なはずです。
よって1年後の100万円返済時であれば6万円利息を払っても良いけど、借りる時に払うのなら5万7千円以下でなければ損かも!と言うようなことになって金利に影響を与えます。
6. 流動性
これは、貸し借りの容易性に関することです。一見需給と似ているように思えますが異なるものです。
特に貸し手側が借り手側のニーズに応じて、いつでもどこでも資金を拠出できる状況であれば、流動性が高く金利を低く抑える効果があります。
一方で、貸し手側の手間が多いとか特定の貸し手しかいなくて、借り手側からのアクセスが容易でないような場合は、たとえ市場の余剰資金が十分にあったとしても、金利が上がる可能性があります。
今回は以上となりますが、本当の意味で金利を理解しようとする時に、以上の中でも特に「3.期間」に関連してイールドカーブや金利の期間構造を理解することが必要になりますので、次回はこの辺のお話をしてみようと思います。
【続きの記事はこちら】
https://real-int.jp/articles/1637/