ユーロはドルとのパリティに接近も
ウクライナ戦争下のユーロの行くえ
言うまでもないことだが、現在、世界経済が「戦時下」にあることは明らかであり、一寸先の戦況によっては大きく環境が変わりうるし、戦争の先行きも全く見えていない。とりわけ、戦場が明らかに欧州であることからユーロ圏経済に対するインパクトは、計り知れない。
したがって、現状の同地域の景況分析を記したとしても、今後の予測につながるベースとはなるまいし、ましてや、そうした景況分析でユーロ通貨の先行き予測をすること自体、愚の骨頂と言える。
現にユーロドルは5月13日、2017年1月以来の1ユーロ1.0349ドルのユーロ安を付けた。この水準を予測しうるユーロ圏の景況環境やECBの政策スタンスは、明白に「存在しない」と言っていいし、外為専門家の中で論理的に推測した向きもいない。
したがって、この戦争の動向次第でドル高の流れが一変し、ユーロドルが一気に1ユーロ1.2~1.3ドル方向に向かうかもしれないし、逆にドルとのパリティ(1ユーロ=1ドル)割れへと記録的水準への下落に向かうかもしれない。
ただ、現段階でのロシアと米欧のスタンスそして、ウクライナの戦況などを総合的に判断した場合、ユーロがドルとのパリティに接近する確率の方が余程高いと推測せざるを得ない。
戦争の長期化と他国への拡大、そして欧州を中心としたエネルギー供給リスクのさらなる高まりは極めて由々しき事態だ。
4月のユーロ相場は一本調子に軟化
4月のユーロドル相場は1.10ドル台後半と直近では高値圏で寄り付いたが月間としては、ほぼ一本調子に軟化し、月末近辺には2020年のコロナ危機以来の1.05ドル台前半まで下落した。
4月は各国の金融政策の正常化ペース(金融引き締め)に注目されるなか、FRB高官から積極的な利上げ示唆発言が相次いだことを受けてドル買いの流れが強まったこと(DXY=ドル実質実効指数は3月末の98ポイント台から4月末には103ポイント台へと急上昇)が、ユーロドルの下げにつながった。
もっとも、ECB高官からも金融政策の早期正常化を示唆する発言が続いたため、市場の利上げ期待の高まりがユーロの上昇を後押しする場面もみられた。4月14日のECB理事会では、大方の事前予想通り、金融政策の現状維持が決定された。
だが、事前の高官発言を受けて、一部ではECBがタカ派姿勢を強めるとの期待があったとみられ、理事会後には失望売りから1.07ドル台後半まで下落する場面もあった。下旬に入ると、ECB副総裁が7月の初回利上げの可能性に言及。
タカ派と目される高官以外からも早期の利上げ開始が示唆されたことでユーロは、一時1.09ドル台を回復した。
しかし膠着感が強まっていたウクライナ情勢に関して、事態のさらなる悪化と長期化への懸念が強まった。ロシアはかねてより、同国産の天然ガス輸入国に対し、支払いをルーブルで実施するよう要求してきたが、EUはこの要求を拒否。
こうしたなか、ロシアは4月26日までにルーブルで支払わない限り、27日より供給を停止すると通告。このロシアの強硬な対応がEU全体に波及する可能性が意識され、欧州天然ガス先物価格は一時約17%上昇。
さらに同日、ロシア外相の核戦争リスク発言も重なりユーロは再び下落。2017年4月以来の1.05ドル台前半まで軟化し5月へと突入していった。ユーロ円は、円の動きに左右される展開だった。
1ユーロ134円台後半から寄り付いたあと、米長期金利が2.9%台後半まで上昇するなか、日米金融政策の違いを手掛かりとした円売りに支えられて急伸。4月21日には一時2015年以来の1ユーロ140円まで続伸(3月7日の1ユーロ124円40銭が直近の底値だった)。
だが、市場のリスクオフ姿勢の強まりから月末にかけユーロ安が目立ち、1ユーロ135円台あっての136円台で5月を迎えた。
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(この記事は 2022年05月16日に書かれたものです)
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