FF金利は5~7%への引上げが必要
米国景気は過熱状態で、需要の盛り上がりを輸入増などで賄っている状況
米国では一部で景気後退入りの懸念がささやかれているが、こうした判断は時期尚早だ。実際には、米国景気はなおスピードオーバーの状態で拡大しており、過熱している。確かに、景気拡大テンポは減速しているが、金融引き締めは始まったばかりで、その効果が出始めるのは早くて来年以降だ。
今はまだ景気がいつまで拡大し続けるかなどについては見通せる状況にない。景気の過熱状態がいつまで続くかわからないなかで、当然ながら、インフレがいつまで続くかもわからない。着陸(ソフトランディングorハードランディング)しようとするのであれば、まず、過熱している状況を冷ます必要がある。
1~3月の実質GDPは前期比年率1.4%のマイナス成長となり、10~12月のプラス6.9%から大きく落ち込んだ。マイナス成長になったのは純輸出と在庫投資の減少が主因だ。輸出の減少が0.7%ポイント、年率成長率にマイナスに寄与し、また、輸入の増加が2.5%ポイント、同マイナスに寄与した。
純輸出の減少は、合わせて成長率を3.2%ポイント押し下げた。また、在庫投資は昨年10~12月まで急ピッチで積み増されたが、積み増しにブレーキがかかった。
在庫投資は昨年7~9月に2.2%ポイント、10~12月に5.3%ポイント、成長率を押し上げる要因になっていたが、1~3月は増加ペースに歯止めがかかり、逆に、0.8%ポイント、成長率を押し下げた。
ウクライナ問題などの影響もあっただろうが、基本的には、消費や設備投資などの民間需要が盛り上がり過ぎ、そうした需要の増加を国内生産では賄い切れなくなったことが、純輸出や在庫投資減少の原因とみられる。
つまり、供給が需要増加に追いつかなくなって、国内で生産された財・サービスを輸出や在庫積み上げなどに回すことができず、一方で、国内生産の不足分を輸入で対応しなければならなかったと考えられる。
実際、実質GDPから純輸出と在庫投資を引いた国内最終需要は、1~3月も年率プラス2.6%増と堅調に推移し、国内需要は増加している。
インフレは国内での需給逼迫と賃金コスト増加が主因
インフレは原油など資源価格上昇によるものであり、最近の原油価格上昇一服により、インフレは近く落ち着くという見方があるが、これも偏った見方だろう。
5月11日発表予定の4月の消費者物価統計では、ガソリン高一服などから消費者物価前年比上昇率が8.1%程度と、3月の同8.5%から伸びが鈍化すると予想されている。
確かに、全体の消費者物価前年比上昇率が8.5%まで高まったのは、この1年間での原油(ガソリン)価格上昇の寄与が大きい。
そのため、ガソリン価格がこのまま横ばいで推移すれば、全体の消費者物価の前年比上昇率は3月でピークアウトし、この先沈静化に向かい、金利も低下に向かういう見方も多い。ただ、インフレについて、より問題視されているのは、原油などの上昇ではなく、賃金コスト上昇だ。
労働省・生産性統計をみると、1~3月の労働生産性(生産÷労働投入量)は前年同期比0.6%低下した。生産が同4.2%増加したが、労働投入量(雇用増×労働時間増加)が同4.8%増加し、労働投入量の伸びが生産の伸びを上回ったためだ。
最近は、もともと労働生産性が低いサービス業を中心に雇用の大幅増加が続いており、労働投入量が増加しても、生産はさほど増加しない。
一方、労働需給逼迫を反映して時間当たり給与は同6.5%増加した。労働生産性低下と賃金急上昇の結果、単位当たり労働コスト(時間当たり給与÷労働生産性)は同7.2%増加した。
単位当たり労働コストは、長期的な物価動向を左右するインフレ指標だ。景気が過熱し需給逼迫が続いていることは需給面からみた物価上昇要因であり、さらに、単位当たり労働コストの増加がコスト面からみた物価上昇要因となっている。
仮に原油高がストップしたとしても、単位当たり労働コストの増加がストップしなければ、インフレは収まらない。
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2022/05/10の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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