伸び悩む米企業の利益
米国株下落の背景には企業利益の頭打ちがある
増加していた米国企業の利益が頭打ちになってきた。ブルームバーグによれば、米S&P500種株価指数の1株当たり利益は22年1~3月に50.0となり、前年1~3月比では13.4%増と2桁増だった。
しかし、これは前年1~3月がコロナショックの余波が残っていたため、利益水準が低かったことが主因だ。
図1でみる通り、この1年間の1株当たり利益は、ほぼ横ばいで推移している。21年1~3月の44.0から4~6月に48.7と増加した後、7~9月50.5、10~12月50.6とななり、22年1~3月には50.0と若干ながら減少に転じた。昨年4~6月からの1年間、50程度で推移している。
足元の株価下落は金利上昇やウクライナ危機が原因と言われるが、実際には、企業収益の頭打ちもその背景にあると考えなければいけないだろう。アナリストの予想を集計した22年4~6月以降の予想数字をみると、急に上向くことになっている。
22年4~6月に前年同期比15.7%増の56.3、7~9月に19.1%増の60.2と急増する予想で、伸び率も1~3月の13.4%増から7~9月にかけて徐々に加速するという予想だ。
ただ、この1年間横ばいで推移していた利益が、ウクライナ危機や米金利上昇などの要因によって経済環境が悪化するなかで、逆に再び急増するという楽観的な予想に現実味があるとは思えない。
人件費やエネルギーコストの増加が続くなかで
売上高の伸びが減速すれば、利益は下向きに転ずる可能性
では、この1年間、利益が伸び悩んだ原因は何か。利益の伸び悩みが昨年7~9月からのことであるとすれば、昨年末の金利上昇やオミクロン株の感染拡大などが原因ではなく、ましてや直近のウクライナショックが原因ではない。
図2でみる通り、1株当たり利益が頭打ちになるなかで、1株当たり売上高は順調に増加していた。「利益=売上高-コスト」、であることからすると、昨年からの人件費やエネルギー・原材料価格上昇などコスト増大が利益増加に歯止めをかけていた可能性がある。
また、特殊要因として、コロナ対応として20年から21年初めにかけて実施された経済対策による政府から企業に対する補助金が企業の最終利益を押し上げていたと考えられるが、そうした補助がなくなったことが利益減少要因になった可能性もある。
今後は、今まで順調に伸びてきた売上高の伸び鈍化が利益を圧迫する要因になるだろう。1株当たり売上高の予想をみると、一進一退の動きで、22年4~6月に前期比やや減少し、7~9月に再び増加するという予想になっている。
金利上昇やウクライナショックなどが影響して、1~3月まで順調に増加していた売上高も4~6月には頭打ちになるという予想だろう。
企業の売上高増加ペースの減速は、金利上昇やウクライナ危機などを受けて米国景気が全体として減速していくという見方と整合的だ。この売上高予想が正しいとすれば、利益予想だけが22年4~6月、7~9月と大きく上向いていくというのは不自然だ。
金利上昇やウクライナ危機などは消費、投資や輸出の伸び鈍化を通じて売上高を鈍化させる一方で、賃金上昇により人件費の増加傾向は変わらないだろう。
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2022/04/26の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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