露のウクライナ侵攻とエネルギー資源問題
日本では、3月10日は東京大空襲から77年目、3月11日は東日本大震災から11年目に当たる。過去を思い、命の尊さを改めて心に刻んできたこの時期に、ロシア軍のキエフへの総攻撃が迫っていると米国のメディアが報じている。
いくつかのメディアでも報じられているように、2015年、シリア内戦に介入したロシアは、部隊の突入前に市街地への砲撃、空爆を増やし、多くの市民の命が奪われた。
この事態がウクライナで再現されないためにも、国際社会が人道回廊を確保し、避難の安全を保つことに力を尽くすことを願う。
ロシアのウクライナ侵攻の現状
ロシアのウクライナ侵攻は、ここまで、ウクライナの人びとの強い抵抗と、前線のロシア兵の戦闘意識の低下などの問題からロシア側の作戦が計画通りに進んでいないと報じられてきた。
それでも、ロシア軍は着実に占領地を拡大し続けており、新たな作戦に向けて体制を整えている。この侵攻作戦で、軍事的にはプーチン大統領が勝者になるだろう。その結果、最低でも、ウクライナ東部のドネツク、ルガンスクを完全に支配下に置くと見られる。
また、前回執筆した際(3月2日付)に言及したドニエプル川東岸、およびマリウポリ、オデッサなどクリミア半島も含めた海岸地域の支配権を確立する蓋然性はかなり高くなっている。
ロシア史では、プーチン大統領は領土を拡大した歴史的人物として描かれるかもしれない。地理的環境からみれば、今後、ロシアは、モルドバからの分離独立をはかる沿ドニエスト・モルドバ共和国との関係を強め、併合も視野に入れた動きを見せる可能性もある。
侵攻の背景
プーチン大統領がこうしたウクライナ戦略を実施できた背景として、以下の5点が指摘できるだろう。
第1に、2021年に、米国がアフガニスタンからの撤退に失敗したことや、ドイツで総選挙後に政策思考が相反する政党による連立政権が誕生したこと。
第2に、2022年には米国の中間選挙、フランス大統領選挙などが予定されており、両国は対外軍事行動がとりにくい状況であること。
第3に、気候変動対策としてエネルギーシフトが提唱されるなか、天然ガス価格が上昇期にあること。
第4に、新型コロナウイルス感染拡大後の物価上昇期にあること。
第5に、米中対立が深まっていること。
このうち、エネルギー価格の上昇は、国際社会がロシアへの経済制裁の効果を上げる上で重要な要素となっている。それは、プーチン大統領が政治的に敗者になるか否かのカギを握る要素ともいえる。
そこで、以下では、エネルギーの動向とウクライナ問題について検討してみる。
ロシアのエネルギー資源への依存
ロシアの2020年の輸出額は3370億ドルであり、その4割に当たる1420億ドルが化石燃料の資源輸出である。
2021年から続く天然ガスと石油の価格上昇により、ロシアの輸出額に占める資源の割合は高まっており、2022年3月2日には、EUがロシアの天然ガス・原油を輸入するために支払った1日分の代金は、6億8900万ユーロ(約900億円)に達している。
ロシア産原油の購入を買い控える動きも出ているが、安値で販売されているロシア産原油を石油大手シェルが購入したとも報じられた。
このシェルの動きに対しては、ウクライナのクレバ外相が「ウクライナ人の血の匂いを感じないのか」とツイートしている。
しかし、ロシアへのエネルギー依存を短期的に削減することが難しいことは確かである。国際エネルギー機関(IEA)は、3月3日、ロシアの天然ガスへの依存削減策を発表した。
この政策では、具体的な10項を示し、1年以内にロシアからの輸入量をほぼ半分にすることが提案されている。ただし、それによってEUの安全保障や安定供給が実現できるのは2030年が目安とされている。
また、ロシア産原油の代替について、石油輸出国機構(OPEC)のバーキンド事務局長は、ロシアは毎月400万~500万バーレルの原油と200万~300万バーレルの石油製品を輸出しており、「この700万バーレルの輸出を代替できる能力は、いまのところ世界にはない」と述べている。
エネルギー価格の上昇、それに伴う原材料費、輸送コスト、光熱費などの値上げは当面継続し、日本はもとより国際社会では、物価上昇や食糧危機への不安が高まっている。
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メルマガ&掲示板「イーグルフライ」より一部抜粋しています。
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(この記事は 2022年3月12日に書かれたものです)
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