高額保証金で家賃低減?
一見、ラッキー
賃貸の家、お店や事務所を借りる立場だと、家賃は安い方がよいです。
賃貸物件を借りる時に保証金を多く積むことで、その分、家賃を割引するスキームがあります。
100万円を保証金として預けると、毎月5000円分家賃を割引いてくれたら年間金利は約6%になります。
これは入居者としては年間6%の預金と同じであり、銀行預金(10年定期 0.002%程度) より遥かに金利が高いので、なるべく保証金を多くして支払い家賃を下げたくなります。
このスキームは入居者にとって良い面がありますが、長年不動産取引を見てきた立場では危ないスキームに見えます。
大家がお金を借りている状態
「高額保証金を積むと賃料が安くなるスキーム」は大家が借主からお金を借りている状態です。
ここでは、大家にとっては
保証金は借入金
家賃の割引分は金利
に相当します。
そして、この保証金には元本保証がありません。
現在、ゼロ金利時代で銀行借入利率が低いので、一般的には大家は借主からお金を借りる必要がありません。
そもそも不動産価格が上昇している今日では、6%の利益を得ることが難しい状態になっているので、なるべく家賃を高くしたいものです。
大家はお金持ち?
一般的には借主はお金がない人、大家はお金持ちという見方をしますが、1990年からのバブル崩壊時に、この立ち位置が大きく崩れたことがあります。
借主が退去する時に大家が保証金を返せないという事例が多発したのです。
それまでは借主には厳しい審査があり、オフィスや店舗の保証金が高額化していました。
法の精神は弱者を守ることであり、借主は弱者と見なしていることから弱者保護のために借地借家法では借主が破綻した時に簡単に借主を追い出せないことから保証金が高額化したともいえます。
しかし、バブル崩壊時には家賃下落と空室増加でローン返済が滞り、大家が破綻してしまったケースが多発したのです。
当時は固定資産税も高く、駅前の土地価格が高いビルでは10フロアのうちの3フロアの家賃分が固定資産税で消えるような物件もあったので、立地が良い物件で空室があると致命的になることも多かったです。しかも固定資産税は、不動産価格が暴落しても何年も遅れて下落する傾向があります。
大家のローン返済額が大きいと家賃を実勢価まで下げることができないこともあります。家賃を安くすると毎月のローン返済額を払うことができなくなるからです。
また、弁護士事務所などが入居していると、家賃を下げていることがわかるとすぐに家賃交渉されるケースもあるので、安い家賃を広告することも難しくなります。
このようにして大家が資金に困り、借主が退去する時に保証金を払うことができないケースが多発したので借主は入居する時に貸主の財務状況に対して疑心暗鬼となったのです。
不動産登記簿に記載されている抵当権の内容から借入金額の推測などは可能ですが、健全であるかは、なかなかわからないため入居者は高額な保証金額を嫌い保証金が低減することになりました。
退去者への保証金の返還も、次の入居者の保証金では足りないケースや空室も多かったことで回らなくなりました。
不動産資産100億円でも資産ゼロ?
不動産物件を多数保有していても、借入額が大きいことが多いものです。
たとえば不動産資産100億円を持っていたといっても借入額が100億円あれば資産はゼロです。
現在、不動産物件購入する時にフルローン(全額ローン)や、それに近いローンで買っていた人も多いです。
今回の「高額保証金を積むと毎月の家賃が割引になるスキーム」については、大家が金に困っていてやっているとしたら保証金がきちんと返還されるか心配になります。元本保証がないからです。
最初のうちは保証金の返済がきちんとできて、だんだん自転車操業的なポンジスキームになってしまうと突然、保証金の返済ができなくなります。
ポンジスキームに注意
最初は、全く悪意なく始めたはずが、だんだん自転車操業(ポンジスキーム)となり気が付いたら詐欺と呼ばれてしまうことが多々あります。
こちらの記事も併せてお読みいただくとポンジスキームについて理解が進みます。シェアハウスで有名だった株式会社スマートデイズの「かぼちゃの馬車」もポンジスキームでした。
投資詐欺の手口を知ることが最大の防衛 ポンジスキーム
https://real-int.jp/articles/577/