日経平均株価 3万円回復!アップサイドヘッジはオプションから
香港上海銀行(HSBC)でチーフディーラーを務めた経験からの、相場をみるうえで重要なファンダメンタルズの知識を解説!
相場の世界でプロと一緒の土俵で取引をするには、やはり相場の知識が必要です。香港上海銀行( HSBC)で10年以上に渡りチーフディーラーを務め、プロも教育をしてきた筆者が、相場の知識をひとつひとつ解説していきます。
菅首相が辞任を表明して以降、日本株の買いが続いています。9月7日に、約5カ月ぶりに日経平均株価が3万円の大台を回復し、3万0048円23銭の高値をつけました。その後は利食い売りもでて押されている部分もありますが、下値では買いがしっかりしているようです。
外国人投資家というのは、政局の混乱を非常に嫌っています。ここにきて、新しい政策への期待から買われていますが、こうなってくると心配なのがアップサイドです。
今日はアップサイドをどのようにヘッジしていくか、「アップサイドヘッジはオプションから」をテーマとしたいと思います。
動画解説はこちらをご覧ください。(約13分)
オプションの位置づけ
株、為替、債券、金利、商品などの金融商品がありますが、オプション取引とは、デリバティブ取引(金融派生商品)の一角です。オプション取引の対局にあるのが、先物取引です。英語ではフューチャーと言います。
オプション取引には、以下のものがあります。
- 株価オプション取引
- 為替オプション取引
- 商品オプション取引
- 金利オプション取引
今日扱うのは株価オプション取引のなかの日経225のオプションです。
オプション取引とは、権利の売買です。買う権利のことをコール、売る権利のことをプットと言います。つまり、コールとプットは相対する概念です。今日のテーマは「アップサイドヘッジ」なので、コールを主体に説明していきます。
トレードのタイミング
では、オプションはどんな時にトレードするのかというと以下の時です。
- 相場の上昇を見込む時
- 相場の下落を見込む時
- 上下、どちらでも良いので大きな変動を見込む時
- レンジで動きそうもないと見込む時
通常、現物株やFXをやっていると、1や2は想像できると思います。一方で3や4は、FXなどでは通用しません。つまり、どんな相場環境にも対応可能ということです。
どんな相場環境にも対応可能という特性が、オプションが機関投資家のヘッジファンドのリスクヘッジにも広く使われている背景です。
今日は「1.相場の上昇を見込む時」を中心にお話していことうと思います。
日経平均の上昇を見込んだ売買
日経平均の上昇を見込んでアップサイドへのヘッジをする時には、買う権利であるコールを使います。
次に銘柄表示を見ていきましょう。オプションは毎月第二金曜日に満期を迎えます。
「21/10」というのは2021年10月限のオプションということです。
- 30,500円で
- オプションを買う権利(コール)を
- 1枚400円で買った時
の損益図が上の図です。
損益分岐点
基本認識を説明します。満期の損益分岐点が、権利行使価格30,500円に、買いコスト400円を足した30,900円です。満期前であれば市場があるので転売は可能です。
日数の経過で価値が減価
日数が経過すると価値が減価します。グラフを見ると損益線が沈んできます。これが原価価値が落ちてきている証です。
理想的には組成してなるべく早く上昇してほしい
満期になると綺麗に直線になります。黒色の線を期中の曲線といい、満期の直線と区別をしています。30日前の線(黒色の線)は綺麗に弧を描いて損益が伸びていき、日数が経過することによって沈んできますので、なるべく早く上昇してほしいということです。
取引単位
取引単位は先物ラージと同じ、1000倍です。
買い付け代金は、400×1000で40万円です。
損失限定でもそんなお金あるわけないじゃないか!という反応がありそうですが、オプションは買いだけではなくて売りもできるため、売りを使い、ファイナンス(資金調達)をすることができるのです。次に、具体例をあげます。
組成例1:ブル・コール・スプレッド
先ほどは、コールの30,500円で1枚400円で買いました(コールの買い)。
さらに外側のコールを売ってファイナンス(資金調達)をしていきます。
30,750円を1枚310円で売ります(コールの売り)。
- 30500円のコール買い@400円
- 30,750円のプット売り@310円
買い代金と売り代金の価格差(400-310=90)を1000倍します。
そうすると、組成コストは9万円になります。
ブル・コール・スプレッド
- 相場の強気(上昇を見込んでいる)ことをブル
- 素材はコール(買う権利)
- 権利行使価格2つ分の差(スプレッド)を使っている
この組成を「ブル・コール・スプレッド」といいます。
- 最大損失が400-310=90円分
- ストライク間の差30750-30500=250円分で250-90=160円分
が最大利益となります。組成してすぐの場合は、グラフの黒線(30日前)が先物を買ったような緩やかな曲線を描くということです。
組成例2:コール・レシオ
別の方法でファイナンス(資金調達)を考えてみましょう。先ほどは少し上のストライクを売りましたが、今度はストライクが非常に離れた所に2枚売ってみましょう。
750円外側の31,250円@200を2枚売るので200×2=400円です。
- 30500円のコール買い@400円
- 31,250円のプット売り2枚@200円=400円
差し引き、0(ニュートラル)で、組成できています。
- 素材はコール(買う権利)
- 買い1枚に対して、売り2枚なので比率は1:2
比率のことをレシオといいます。
この組成のことをコール・レシオといいます。この組成は、日数が経過することにより自然に損益線が浮いてきます。買った水準に達しなくても利益が出てくる珍しい組成です。
組成例3:シンセティック・先物買い
続いて、買い代金をプットの売りから調達していきます。
- 30500円のコール買い@400円
- 29,250円のプット売り@400円
買い付け代金400円を同じ価格で売ったので、ニュートラルで組んだということになります。30日前の線は、先物を買ったような曲線です。
- コールとプットを使っているので、合成です。このことをシンセティックいいます。
- できてきた損益は先物を買ったような図
シンセティック・先物買いといいます。また、合成先物の買いともいいます。
リスクの大きさの比較 どの組成がリスクが小さい?
1.シンセティック・先物買い
⇒下がった時にはリスクが大きいため、現実的ではない
2.コール・レシオ
⇒収益のピークを作れるが、それ以降は下がるためリスクは中程度
3.ブル・コール・スプレッド
⇒一番リスクが小さい
緩く先物を買ったような損益図で、トレンドの初期あるいは自分が上昇を見ている時に思惑と違って相場が下がってしまっても損失限定になっているため、トレンドの初期の振り落としに非常に強い組成です。
日本のオプション取引の現状
新規開設されるオプション口座の80%以上が、2年以内に退場しているという厳しい現実があります。これは証券会社も含め、業界の啓蒙不足といわれても仕方がありません。
オプション取引は、金融の中心地である米国、アジアの金融拠点である香港・シンガポールなどの金融センターでは、普通に個人投資家に浸透しています。隣国の韓国でも個人投資家の取引が非常に活発に行われています。
オプション取引の強み
金融取引は現物株、FXだけではありません。オプション取引は、動かない時でも収益に出来るのが最大の強みです。
オプションは、上昇相場、下落相場、レンジ相場、何でも収益化することができます。オプションは金融商品のヘッジとして機関投資家ヘッジファンドにも普通に使われています。商品性をしっかり理解して、正しく使っていくことをお勧めします。
オプション取引を基礎から学びたい方は、こちら。
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