コモディティのスーパーサイクルで円安に!?
2021年6月10日に大橋ひろこさんに解説いただいた内容を記事にアップしました。動画でご覧になりたい方はこちら↓
コモディティのスーパーサイクルとは
スーパーサイクルとは、JPモルガンや外資系の金融機関が言い出した話ですが、過去100年で4回確認されていると言われています。4回目は1999年の安値から2008年の高値まで、CRBインデックスと呼ばれるコモディティのインデックスが、ものすごい勢いで11年間も上がりました。
この時に、WTI原油価格が147ドルまで上がりました。海外旅行に行く際には原油サーチャージが必要と言われ、非常に高い値段が取られた時代がありましたが、高値付けたぐらいの時がその時代です。その後ずっとコモディティは崩れており、去年のコロナショックの4月のところで非常に安値を付けて、これで1サイクル終わりました。
今また上がってきていますが、 これが5回目と言われており、大きく上がるのではないか?というレポートが出てきています。
WTI原油先物は上昇トレンドに
原油のチャートですが、先ほどのチャートと似ています。長い上値レジスタンスを超えて来ています。去年は、コロナショックでマイナス40ドルという凄まじい価格がありましたが、最近は猛烈に上がってきているという状況です。
WTI原油先物が上昇トレンドとなっている要因として、コロナのワクチンが先進国を中心にどんどん普及が進み、経済が正常化したことで、またエネルギーの需要が戻るのではないかと言われています。
そしてもう1つの要因については、次の図を見ながら解説していきます。
石油・ガスの上流投資はすでに減少
原油価格は、2015年に既に急落していました。まず最初は2008年のリーマンショックの後に急激に下がりましたが、その後はリバウンドしました。
図右下のチャートにてご確認ください。赤い四角の枠内は、80ドルから100ドルです。80ドルから100ドルあればまだ原油高いですが、リバウンドしていきました。そして、2015年に急激にまた下がりました。それが、黄色い矢印の部分です。
この時は、チャイナショックと言われ、原油がものすごく大きく下がった時です。その後原油価格は、一段階段が下がったみたいに安くなっていきました。
ここで、図左側の棒グラフを参照ください。石油、ガスの上流部門への投資のグラフです。開発や掘り続ける為、運用し続ける為に投資をし続けなければいけないものですが、その投資が2015年に25%減り、2016年に更にそこから24%下がりました。
少し投資が戻り、原油価格も少し回復してきたところでコロナです。今度は脱炭素で石油会社に投資するような環境には無くなってきています。そうすると、設備投資と言うのが全然戻って来ていない中で、新しいところまで再生化をやろうとしていることになります。元々の石油生産会社へお金が回って来なくなってしまいます。そうすると、これまでのような生産が期待できない時代がやって来る可能性があります。
確かに、OPECはたくさん石油を供給できますが、それではOPECの言いなりになってしまいます。つまり、OPECがまた価格を100ドルにしようと思えば出来てしまう状況になってきた次第です。
アメリカ大統領にバイデン氏が就任し、脱炭素のほうに舵を切ったため、シェール企業には資金が戻らなくなり、シェールの生産が戻っておりません。それは、投資が減っていることが原因です。
アメリカは産油国世界一になりましたが、一年天下だったわけです。石油会社が色々な環境団体から突き上げを食らっており、投資マネーが入って来ないことになってきているという実態があります。そうすると石油生産と言うものが、だんだん目詰まりを起こし、上がっていく可能性があります。脱炭素で石油はもう使わなくなる前に上がる可能性があります。そうすると何が起きるでしょうか。
原油高騰で日本の赤字は増える?
上のチャートを参照ください。2011年3月11日の後、原発が止まり、日本がLNGを高い値段で輸入しなくてはならなくなった時、原油価格が上下反転しました。この下がったところは、原油価格が高騰したところです。
これを日本の貿易収支と重ねてみますと、原油価格が高騰すると黒字が途端に赤字になりました。そして原油が100ドルで安定していたこの赤い四角のところというのは、恒常的に日本の貿易収支赤字になっていました。
そして、この時何が起きていたかと言うと、原発が止まってしまったため、100ドルぐらいの価格の原油やLNGを買わなければいけなかった時代です。見事に赤字になりました。
原油価格は、2015年以降に100ドルから非常に下がったので、日本も貿易収支が黒字になっています。しかしまた、原油価格が上がって来たので、貿易収支黒字額が減ってきている状態です。
これがもし原油価格が80ドル、100ドルになり、それが続くのであれば、恐らく赤字になっていくと思います。これがドル円相場にどういう影響をもたらすのか考えていきましょう。
日本の貿易収支とドル円は相関性が高い
上が2000年からの日本の貿易収支、下が2000年からのドル円相場です。日本は、2000年から2011年3月11日くらいまでは恒常的に貿易収支黒字です。この時は円高です。そして、赤字になった2011年以降、急激に円安になっています。
この2011年以降は、安倍政権が誕生し、アベノミクスと黒田総裁の日銀のバズーカの影響を受け円安になったと言われています。しかしながら、このチャートとグラフを見る限り、貿易収支も影響しているのではないかと考えております。
貿易収支が赤字になったり黒字になったりと均衡しているところでは、ドル円相場はあまり方向が出なくなっています。これが赤字に傾いていくと、円安になるのではないでしょうか。
日本は、原油で貿易収支が決まっていきます。日本はエネルギー生産していないため、買うしかありません。原発を動かすことになると、話は変わりますが、今のところそういう議論はまだ再燃していません。そうすると、赤字は広がる可能性があります。ただ、原油価格がどういう風に為替に影響を及ぼすか、ドル円以外についても確認していきましょう。
NOK(ノルウェークローネ)とBrentOIL(ブレントオイル)
ノルウェーは、北海ブレントを持っている生産国なので、連動します。ノルウェークローネの取引している人はあまりいないかもしれませんが、原油が上がると黒字になるので通貨が上がるという相関は結構綺麗に出ていると思います。
カナダドルとWTI原油
一般的に原油といえば、カナダドルを思い浮かべると思います。相関する時としない時がありますが、足下は原油高でカナダドルとカナダドル円が綺麗に上がってきている印象がありますので、原油価格大注目です。
脱炭素社会の実現が原油価格に影響
原油が上がっているテーマの1つに「カーボンニュートラル」があります。現在、脱炭素を目指し世界がクリーンエネルギーをやらなければいけないムードになっています。
脱炭素社会の実現に必要な鉱物資源
日本の環境大臣も、非常に前のめりで46%削減と言っていますが、こういう再生可能のエネルギーを実現しようと思ったら、風力発電に太陽光、地熱、蓄電池の技術、鉱物やレアメタルが必要になっていきます。
銅などは、この風潮から買われていると言う話もあります。リチウムやニッケルとかを使う、要するにそのようなコモディティが重要になってくるということです。新しいコモディティを使う政策になっていきます。
電気自動車(xEV)に必要な主な鉱物資源
EVになると、銅、レアアース、リチウム、ニッケル、コバルトなど、これだけ使うと言う一つの参考資料です。
リチウムイオン電池向けの鉱物資源(リチウム、ニッケル)
リチウムイオン電池向けの鉱物資源(リチウム、ニッケル)の供給量と需要量のグラフです。銅は、将来的に供給量を需要が上回る時が来そうなことが分かります。ニッケルは、相当供給が廃れてくるが、需要は伸びていくことが分かります。
どこの国がそれを持っているのかを図の下にある円グラフで確認できます。オーストラリアは銅、リチウム、ニッケルを持っており、資源が豊富です。超長期的にはオーストラリアは買われると思います。
今すぐ豪ドル買いという言う話ではありませんが、長期的にみると、豪ドルを持っているところが強いとお考えください。
日本の鉱物自給率
日本はどうでしょうか。2018年の日本の鉱物自給率のグラフです。自給率はほとんど100%に満たないです。青い棒が海外権益を表しています。海外権益とは、商社や日本の企業が海外に行って開発の協力をすることにより、掘ったものをある程度自分のものにできると言うものです。頑張って海外でかなり開発しているものもありますが、100%供給できているものはニオブを除き、ありません。
そうすると、再生可能エネルギーやEV化を本気で日本もやるとなったら、買わなければなりません。世界中でレアメタルが奪い合いになります。しかし、価格が高いのに買わなくれはならいというのは、日本には厳しいかと思います。
日本にも国立公園などに資源があるところもあるようですが、掘ると環境破壊などと言われ、掘れないのかもしれません。
原発がなかなか稼働できない環境の中で、火山国だから地熱を動かしたら良いのではないかという話もありますが、地熱の発電に使えるような場所は、ほとんど国立公園になっているために、地熱発電はできないという話もあります。
それらの資源を温存しておいて、最後の切り札となるまで守っていくという一つの戦略かもしれませんが、いずれにせよ値上がりする前に輸入して確保した方が良いかなと思うような状況です。
資源国とされる国の「輸出品目」
資源国と言われ、主要為替で良く皆さんが取引される国々(カナダ、オーストラリア、南ア、ブラジル、ニュージーランド、メキシコ)の輸出品目を調べてみたところ、今、急激に価格が上昇している原油・鉄鉱石・貴金属などでした。
カナダは、原油やベースメタルを非常に持っています。オーストラリアも鉄鉱石・金・原油を持っています。南アもプラチナやパラジウムを持っていて、鉱物性燃料(原油的なもの)も持っています。ブラジルも原油・鉄鉱石を持っています。それに加え大豆があります。(今、農産物も非常に上がっています。)
ニュージーランドは、お肉や酪農など、資源と違う項目の比重が重いです。メキシコは、原油が出るとか言われていますが、ほんの少しです。工業品や自動車を作るなど製造業の国です。
このように、カナダ、オーストラリア、南アフリカ、ブラジルが面白いのではないでしょうか。これらの国が持っている資源がどういうチャートになっているかを下記の図でご覧ください。
コモディティ生産国の資源とその価格
ブラジルと南アのチャートです。
鉄鉱石、大豆、パラジウム、プラチナが上がっていることがわかります。では、なぜ、EVに必要ないパラジウムやプラチナがなぜ上がるのでしょうか。
2030年までにはスウェーデン、ドイツ、オランダ、イギリス、アイルランド。2035年に中国、アメリカ、カナダ。2040年にフランス、スペイン。このように、完全EV化は、まだまだ先なのですが、環境規制だけはどんどんと厳しくなっています。
図の真ん中の四角い表にあるのは、EU、インド、チャイナ、アメリカの環境規制のレベルと、その導入時期です。とにかくヨーロッパが厳しいです。ヨーロッパの環境規制は「Euro6d」とありますが、これが将来7も始まります。そうすると排出するCO2の量がかなり厳しく制限されます。
中国も「国6」というものを導入していますが、とにかく排出するCO2のレベルを下げることが厳しく決められています。
その影響で触媒に使われるパラジウムやプラチナの量が激増しています。
右下のチャートのオレンジ色のラインが自動車の販売台数です。1990年からあまり変わっていません。一年間に売れる世界の自動車の台数というのは、あまり変わりません。
しかし、水色のラインは右肩上がりです。つまり、使う触媒の量は増えているということです。それは、環境規制が厳しくなったことで、排ガスを吸着するという能力を持っているパラジウムやプラチナの1台当たりの使用量が、4倍ぐらいに増えているということなのです。
まだ電気自動車の完全スイッチと言うのは先ですが、環境規制は厳しくなっています。この間は恐らく、プラチナとパラジウムは、ものすごく上がると思います。
自動車触媒PGM(プラチナ・パラジウム)需要
自動車触媒PGM(プラチナ・パラジウム)需要の図です。
既に供給不足であることがわかります。プラチナは、もう今年は4.9トンに供給不足になるでしょうと言われています。パラジウムに至っては、過去10年ずっと供給不足です。希少性の高い貴金属なので、元々そんなに無いので、足りていません。ロシアと南アフリカという風に、供給できる国が限定的となっています。
環境規制が世界でどんどん厳しくなる中で、EV化する前にプラチナ、パラジウムは上がっていくだろうと思われます。
プラチナには「水素社会」テーマも
プラチナは水素社会にもおいても重要性が高いです。プラチナはFCV(燃料電池車)に使用します。燃料電池の電極に使うということで、FCVだけではなく、水素エネルギーを作る時にも水電解の時にプラチナを使います。
燃料電池とプラチナ
FCVの方が完全なクリーンエネルギーだという風に言われています。それは、EVだと、その電気どうやって作ったのかが問われるからです。
FCV(燃料電池車)が数多く走るようになるとプラチナどのぐらい使うか
燃料電池車のプラチナ使用料
左が今現在、ディーゼルエンジンで使っているプラチナの量です。燃料電池車になると、非常にプラチナの使用量が増えることがわかります。この水素を作るというところでのプラチナと言うのは、新しいテーマです。
プラチナ生産国である南アフリカのチャート推移
南アフリカランドとドルのチャートです。上がっていく方がランド高です。去年のコロナショックの安値から南アフリカランドがずいぶん上がってきています。
ランド円の日足のチャートです。上がってきています。ここが面白いと思っています。本日、1‐3月期の経常収支が発表になました。2670憶の黒字で、南アフリカ3期連続黒字になりました。
それまでずっと経常収支が赤字だった南アフリカが、ここ3期黒字化しています。貿易収支も、2020年から急に黒字化しています。黒字になる国の通貨は上がると言われています。
ランド円の週足チャートです。レジスタンス底超えてきたのではないかと思います。ただ、一回押し目を待ち、押し目買いをしていくのがいするのがいいと思います。政策金利も3.5%ありますし、プラス4.4%でインフレ気味なので、強いのではないかと私は考えています。
ただし、マイナー通貨のため、フルベットせず、レバレッジをあまり高くしないで、長期的に持てるぐらいの量で押し目を待って買うのがいいと思います。少し上がりきってるので、このレジスタンスぐらいまでもう一回下がってもう一回リバウンドする辺りを狙ってください。
ブラジルのチャート推移
レアル/ドルのチャートです。
ブラジルは大豆を持っていて、原油も持っていると言うことで、ブラジルレアルのドルに注目していますが、全然まだ動いていません。やっと上がって来たと言う感じはありますが、まだ全然上がっていないです。
レアル/円のチャートです。
これも同じように全然上がっていないです。
レアル/円の月足のチャートです。
上がってないどころか、まだ下落トレンドではないかという感じがあります。政策金利も3.5あり、CPIも高めで、コモディティ持っているので、ちょっとだけなら持ってみても面白いのかなと思っています。
投資の最終判断は、皆さんご自身でお願いします。
金は今年、ハンガリーやタイが買い出しています。ロシアも、ナショナルウェルスファンドをドルを全部無くしてユーロと金に変えるって言っています。
本当にコモディティのスーパーサイクルが来るか分かりませんが、来るとインフレになり、通貨は下がります。やはり、コモディティとしての資産の代表格である金の時代なのではないかと思います。
そして、脱炭素社会の影響を受けるプラチナ、パラジウム、南アが面白いと思っています。イリジウムやロジウムも上がっていて気になりますが、買える市場はありません。