独メルケル政界引退表明で新首相選出キックオフ
2021年4月20日に松崎美子さんに解説いただいた内容を記事にアップしました。動画でご覧になりたい方はこちら↓
独与党CDU、新党首にラシェット氏 ドイツ総選挙にむけて
ここでは、9月26日に向けて、どんな政治的な動きがあるのかを見てみます。
この図には書いていませんが、まず、今年の1月16日、「CDU」の党首の選挙があり、新しくラシェット氏が党首になりました。この統一首相候補というのは、伝統的に「CDU」と「CSU」との姉妹党であり、2つで1つになっています。それぞれの党首はいますが、伝統的に戦後CDUの党首がそのまま国政の首相候補になっても、一切問題無かったのが、今年は話が違ってきています。
また、今年の3月14日にドイツの2つの州で州の議会選挙が行われました。メルケルさんは「CDU」というキリスト教民主党同盟というところに所属していますが、メルケルさんが所属するCDUが、州議会選挙で戦後最悪の結果を迎えてしまいました。9月26日に国政選挙があるので、一体どうなるのか。国民は大変不安視しています。
主なスケジュールはこちら
5月9日、ドイツの二大政党の1つのSPD党の党大会
5月14日、自民党の党大会。
6月6日、ザクセン・アンハルトの州議会選挙
6月11日、緑の党の党大会
9月26日、ドイツの連邦議会選挙
どんな動きが独CDU党とCSU党にあったのか
- 3月14日
2つの州の議会選挙でCDUが戦後最悪の大敗を遂げてしまって、このラシェット党首という新しい党首の実力に疑問符が生じていて、もしこのままラシェット党首が統一首相として国政選挙に乗り込んだ場合、もしかしたらCDU、CSUが野党に落ちてしまうかもというリスクが出てきたのです。
- 4月11日
CSU、CDUで全体会議を開いて、本来であればラシェット党首が決定になるように見えたのが、CSUが待ったをかけたのです。最終決定する前に自分たちで個別で会議をしました。
- 4月12日
CSUのゼーダー党首が、僕たちCSUですがCDUの統一首相の候補には合意できないので戦わせてくださいと名乗りをあげてたのです。
- 4月18日
CDUのラシェットさんとCSUのゼーダーさんが一応二人で友好的な会談をしたということで、この日を決定の最終期限にしたのですが、どちらの候補も上げた拳を下ろさずに、未だに決定されていません。
CDUとCSUそれぞれの党首
画像上の方は、キリスト教民主同盟のラシェット党首。ノルトライン=ヴェストファーレン州の首相で、非常にロシア寄りの方です。画像下は、ゼーダー党首。この方はキリスト教社会同盟CSUでバイエルンの州の首相です。
対米で考えると、トランプ元大統領×メルケル首相で一度崩れているので、今度は立て直さなければいけないところですが、万が一、ラシェットさんが首相になってしまうと、アメリカとの関係がぎくしゃくしてしまうのではないか。と懸念しています。
ゼーダー党首は、国民からの信頼が厚く、政治家の人気投票で、メルケル首相を抜いて1位です。支持率でみると、ゼーダー党首が大体35~40%、メルケルさんも大体30~35%、ラシェット党首が12%、もっと低い8%という所もあります。
ゼーダー党首は、国民の支持を得られない限り、総選挙で首相になれない(与党になれない)ので、単に自分が出たいとは言わず、「国民の支持を仰ぐべきだ」と言っています。
しかし、ラシェット党首は、「国民の支持は後から付いてくる。今までの伝統的にCDUから出すのが当たり前の動きだ」言って、お互い絶対に譲りません。
ドイツはEUの牽引役。ドイツはこの先どこへ向う?
ここからは数字で見てみましょう。CDUのラシェットさんが首相として国政選挙をやった場合、逆にCSUのゼーダーさんが首相として国政選挙を実施した場合です。ゼーダー党首が首相としてなった場合には、アンケートに答えた10人中4人が投票します。と答えています。逆に、ラシェット党首になった場合は、3割以下です。
CDU、CSUが野党に落ち、SPDから首相が出たことは、過去に何度もありますが、今回はSPDが、単独政権をとれません。そうすると、CDU、CSU以外で今一番人気があるのが緑の党。緑の党が第一党、第二党でSPD、そこに数合わせとして自民党。既にその3つの連立が州議会選挙できちんと機能しているので、それだったら国政でも大丈夫じゃないかって言う意見が多数あります。
緑の党、SPD、自民党の政権、州でやるのならば、国政も大丈夫じゃないか?と思いますが、緑の党は、今まで一度も国政で、第一党になったことがありません。全く右も左も分からない人がいきなり、ポスト・メルケルになってしまう。グリーン政策は、素晴らしいものが出てくると思いますが、それ以外の外交政策、対ロ・対中・対米政策、そして、コロナによる国内のパンデミックから、国内の経済を軌道に乗せるための政策など、不透明感が一挙に増していて、ポスト・メルケルが、緑の党というのは、不安です。
ヨーロッパでは、連立で入っている国はありますが、緑の党の首相はいないはずなので、ヨーロッパ全体でも、驚いてしまうと考えています。
債務問題について
今は金利が低いから、安い金利で調達できると言っても、どこかの時点で必ず債務問題が、イタリアで火が付くと考えています。
その時に緑の党が、ドイツでそれを引っ張っていく、債務に対してどんな考えを持ってるのかは誰も分かりません。それに今、中国も台湾のことでちょっと危なっかしい。そして、アメリカは、アフガニスタンから撤退するということで、どうなるか分からない。ロシアも待ってると思います。中東も、何がどうなるのかわかりません。トルコ、キプロスは、ずっとくすぶっています。このように、沢山の地政学を抱えています。
そして、ヨーロッパが一番無視できないのが、ウクライナです。これも、国内で、ナワリヌイさんの問題があります。ナワリヌイさんが「ハンガーストライキ」で、いつ亡くなってもおかしくないという発表があり、そこでバイデン大統領が、もし彼が亡くなったらただじゃ済まないと言ったら、そこでプーチン首相が慌てたと言われています。
今までナワリヌイさんが、刑務所にお医者さんを送ってほしいって言っていたのを、ずっと無視してたプーチン首相でしたが、要求を受け入れ、お医者さんと会えたそうです。ただしこれは面会だけであって入院では無いので、この人が万が一亡くなったら、多分バイデン大統領が出てくると思っています。
ですから、この問題から目をそらせたいが為に、一生懸命今ウクライナに戦車を送ったり、潜水艦を送ったりしているようです。ウクライナの大統領もメルケル首相や、マクロン首相と会談はしていても、次の一歩に進んでいないというのが、現状のようです。
中国、台湾の問題は、第一報のニュースで出くる程、こちらでは大きく取り上げられています。後々は、為替にも大きな影響を与えてくると思います。