ケビン・ウォーシュ氏が率いる米金融政策はどうなるか?

リーマンショック時のインフレ重視発言や量的金融緩和批判により、ウォーシュ氏は「タカ派」とみられている
トランプ大統領は1月30日、2026年5月に任期を迎えるFRBパウエル議長の後任として、ケビン・ウォーシュ氏を指名した。
トランプ大統領は「彼は『セントラル・キャスティング(適役)』であり、決して期待に背かない」と述べ、ウォーシュ氏率いるFRBによる大幅利下げへの期待を表明した。
米上院での過半数による承認後、早ければ3月の会合から理事としてFOMCに参加し、その後パウエル議長の任期満了後に新議長に就任して、6月FOMCに参加することになる。
米上院での承認を巡っては、トランプ政権がパウエル議長の弾劾に動く構えをみせ、FRBの独立性に問題が生じたことに対し、共和党議員からも反発が強まっている。
だが、トランプ政権がFRBへの介入姿勢を和らげる、例えば、最高裁がリサ・クック理事の解任を認めず、司法省がパウエル氏に対する刑事捜査を取り下げる、などがあれば、FRBの独立性が侵されるとの懸念が解消され、承認は問題なく進むだろう。
では、ウォーシュ氏は、どういう人物なのか?
ウォーシュ氏は、スタンフォード大学で経済学と統計学に重点を置いた公共政策を学び、1992年に優等学位を取得して卒業した。その後ハーバード・ロースクールに進み、法律、経済学、規制政策を研究し、1995年に法学位を取得した。
1995年から2002年まで、モルガン・スタンレーに在籍し、当初、合併・買収部門で働き、様々な業界の企業に財務アドバイザーとして従事、のちに、資本市場取引の構築や債券・株式資金調達の促進にも貢献した。
2002年にジョージ・W・ブッシュ大統領の政権に加わり、経済政策担当の大統領特別補佐官および国家経済会議の事務局長を務めた。ブッシュ大統領により、2006年にFRB理事に指名され、2011年までFRB理事を務めた。
ウォール街での経験は、リーマンショックに対応したFRBでの在任中に活かされた。危機の最中にウォール街と銀行業界の間の連絡役を務め、JPモルガン・チェースによるベアー・スターンズ買収や、保険大手AIGへの政府救済などを進めた功績も評価されている。
ウォーシュ氏がタカ派とみられているのは、
- 2008年のリーマン・ブラザーズ破綻時、
FRBが危機の封じ込めに奔走するなか、
ウォーシュ氏は「インフレ面での懸念を手放す準備はまだできていない」と述べ、
翌09年には米国の経済成長が鈍く、失業率が急上昇し、
物価上昇率が1%まで低下していたにもかかわらず、
利上げ再開を主張していたこと、 - 2010年の量的金融緩和第2弾(QE2)の決定について、
ウォーシュ氏は当時のバーナンキ議長への敬意から賛成票を投じたものの、
その後は批判を強め、2011年に理事を辞任したこと、
などによる。
FRB理事辞任後、パウエル議長率いるFRBへの批判を強めた。
特に、2018年の「二重の引き締め、コロナショック後のインフレ対応の遅れを酷評
ウォーシュ氏はトランプ政権1期目でもFRB議長候補とされたが、最終的にトランプ大統領は、よりハト派とみられていたパウエル氏を議長に指名した。
トランプ政権との関係について言えば、まず、ウォーシュ氏が、化粧品大手エスティ・ローダーの創業家一族と結婚し、ウォーシュ氏の義父となったロナルド・ローダー氏は米化粧品大手エスティ・ローダーの創業家で、1960年代にトランプ氏の同級生だった。
同氏は、2016年の米大統領選でトランプ氏に大口の献金を行ったほか、最近も多額の政治献金を行っている。
また、ベッセント財務長官との関係については、2011年FRB理事の辞任後、ウォーシュ氏は著名投資家のスタンリー・ドラッケンミラー氏が自身の個人資産を管理するために立ち上げた投資会社デュケーヌ・ファミリーオフィスのパートナーを務めた。
一方、ベッセントも財務長官は、ソロス・ファンド・マネジメント在籍時にドラッケンミラー氏の下で働いた経歴がある。
ウォーシュ氏とベッセント財務長官の考え方は、
- FRBは財政領域などに踏み込み過ぎず、任務を本来の範囲にとどめるべきである、
- FRBのバランスシートが巨額化した結果、資本配分がゆがみ、インフレが上昇して経済の二極化が進んだ、
- FRBの独立性が重要である、
といった見解で一致している。
ただ、「FRBの独立性は重要」とはいえ、現状のように、国債の大量買い入れなどの形で財政領域に踏み込んだ状態でのFRBの独立性は認めらず、独立性はより焦点を絞った任務に認められるというのが両者の考えだ。
ウォーシュ氏は、FRBがより広範な社会的・政治的問題に偏り、過剰なコミュニケーションがFRBの信頼性に影響を及ぼすリスクがあると批判している点は、トランプ大統領の考えに近い。
トランプ大統領が今回、あえてウォーシュ氏を指名したことからわかるように、現在のウォーシュ氏は市場が認識したほどタカ派ではない。
トランプ大統領からみると、ウォーシュ氏は、思うように利下げをしてくれないパウエルFRB議長に対して批判的な人物であり、まさに、パウエル議長とは違って、利下げをしてくれそうな人物であるということになる。
ウォーシュ氏は、2011年のFRB理事辞任後、パウエル議長が率いるFRBへの批判を強めた。
2018年末にはドラッケンミラー氏との共著で、ウォール・ストリート・ジャーナルに寄稿し、当時進んでいた利上げとQT(量的引き締め)という「二重の引き締め」を速やかに停止すべきだと主張した。
ウォーシュ氏は、コロナショック後のFRBおよびパウエルFRB議長によるインフレ対策の成績を酷評し、さらに多様性や気候変動など本来の役割を超える対応を批判し始めた。
トランプ大統領は公の場でパウエル議長が利下げしないことを批判し、パウエル議長解任の脅しをかけていた。トランプ大統領がFRBに対して批判的なウォーシュ氏への期待からFRB議長として指名したことは確かだろう。
これに対して、ウォーシュ氏の方も、トランプ大統領の利下げ要望を知ってか、これまでのタカ派姿勢を幾分改め、量的緩和縮小と同時の利下げであれば、政権の意向も反映できるし、インフレも抑えられると考えたのかもしれない。
また、ウォーシュ氏は、AIの普及による生産性の向上を背景に、インフレ率は低下すると楽観的に考えている。
ウォーシュ氏は、昨年11月16日付、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に”Federal Reserve‛s Broken Leadership”と題して寄稿し、「インフレはパウエル議長の下でのFRBの賢明でない選択によるもので、FRBはインフレを招いた大きな過ちを再検討すべきだ」「インフレは政府が支出し印刷しすぎるときに起こる。経済が成長し労働者が高賃金を得すぎたときにインフレが起こるという教義を捨てるべきだ」と述べている。
関税の影響がなお物価を押し上げるおそれがあると考えられ、FOMC内でもなおインフレへの懸念は払しょくされていない。
もし、景気が堅調ななかでインフレ率が予想以上に鈍化し、供給サイド(生産性上昇)の要因での物価低下が起きていると判断されるようなら、ウォーシュ氏の見解が裏付けられるだろう。
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続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2026/2/16の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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